危機と人類

この度、日本でも人気のジャレド・ダイアモンドの『危機と人類』(原題『Upheaval』)が刊行されました。下訳で協力させていただいたので、紹介したいと思います。

私が最初に手にしたダイアモンド氏の著作は2005年刊行の『文明崩壊』。当時アメリカにいたので英語で読みました。翌年にはアル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』も公開され、当時は地球温暖化って何? と気になる人が一気に増えた頃でした。当時のアメリカでは、ブッシュ政権が地球温暖化が起きているとは検証されていないという見解を取っていたのもあって政治化したので、『文明崩壊』が多くの人に読まれたのかもしれません。歴史上、文明が崩壊した原因として、過剰な環境破壊や地球温暖化といった大きな問題を俯瞰できるように語りかけるダイアモンド氏に、尊敬の念を抱いた人も多いのではないでしょうか。

今回の新刊のテーマは政治です。そして今回も「混沌とした現在」からまず離れ、7つの国の政治の歴史を比較しながら、各国がどのように政治的危機を乗り越えてきたのかを分析します。日本もその7カ国の中に含まれています。ただ、今回は個人の心理セラピーを国家に当てはめて分析しているので、そのアプローチに違和感を感じる人も多いかもしれません。日本近代史に詳しい人なら、こういうケーススタディには重箱の隅をつつきたくなるかもしれません。

本書はビル・ゲイツのお勧め本ですが、ニューヨーク・タイムズの書評は辛辣でした。「今は、一部の限られた白人男性だけが世の中を俯瞰する時代ではない。歴史は多面的で、さまざまな視点から見たストーリーを知ることができる時代なのだから」というような論調でした。この批評にも一理あると思いますが、著者は批判を覚悟の上で書かれたのでしょう。本書の心理セラピーのアプローチが功を奏するとしたら、自分の国を俯瞰できるようになる、ということではないでしょうか。まえがきに、ダイアモンド氏の目的は読者を俯瞰させることで、ここからさらに掘り下げて研究する人たちが現れることに期待していると書いてあります。

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