アマンダ・ゴーマンのオランダ語訳騒ぎ(その1)

世の中の多くの人は詩には興味ないかもしれない。ここ何年かで爆発的に売れた詩人といえば、カナダのルピカウルだけど、彼女とて、マルチタレントぶりを発揮してるので詩作が専業とは言い難い。今は、詩を書いている人はいても、詩集を買う人はすごく少ないのではないか。わりと詩を読むのが好きで、詩集をいろいろ持っている私でさえ、最近買っていない。そんな世の片隅に追いやられている詩がニュースになり、しかも翻訳がらみとあって、私はエキサイトした。が、いかんせん、「アマンダ・ゴーマン」の名前がリベラル、バイデン政権とつながっているため、私がエキサイトした理由とは無関係に政治化してしまった。面白くもなんともない。実につまらない。人々は自分の政治的信条にのっとり個人的意見を述べる。

私は政治の話などしたくない! アマンダ・ゴーマンについて語りたいのではない!  

事の経緯はこう。

1)オランダの出版社がアマンダ・ゴーマンの詩集を出版するにあたり、白人の若い女の子(マリエケ・ルーカス・ライネベルト)を訳者に選ぶ。ライネベルトは小説家。たとえれば、日本の出版社が川上未映子に翻訳を依頼するみたいなもの。

2)その訳者が活動家たちのバッシングに遭い、仕事を辞退する(黒人の訳者を選べ、という抗議があった)。

3)オランダの出版社は別の訳者を探すと言っている。

4)そうこうするうちに、マリエケ・ルーカス・ライネベルトが「反論の詩」を引っ提げて、世に公開する。

私はいろんなことが気になったが、いかんせんオランダのことなど普段考えもしないので、オランダに関する知識が少なすぎた。私の気になったことは、こんな感じ。

1)オランダって白人ばっかりのイメージがあるけど、活動家に訳者が引きずり降ろされるほどの黒人人口を抱えている?

2)私は白人著者(この間はインド系イギリス人)の翻訳ばっかりしているけど、何も言われない(肌の色が問題視されない領域で働いている)。

3)結局、この訳者が仕事を失うという結末はひどくない?!

4)何の訳書を出すのか、誰に翻訳してもらうのかは出版社が決めることなので、オランダの出版社はこの訳者を擁護する強い声明を出したのか?(オランダ国内ではそういう報道があったのかもしれないけど、私が読める英語や日本語では報道がなかった)

5)出版は文化事業だけど商売なので、「この子なら、訳書が売れる」と思って選んだ訳者だったんでしょう?

そこで、自分のFBに投稿した後に、「そーだ! 翻訳者コミュニティがあるじゃないか、あそこに投稿したらもっと何かインサイダー的な面白いこと聞けるかも?!」と思った。しかし、政治的に受け止められたくない。そこで、ちょこちょこと書き添えて投稿してみた。

結果的に反応は薄かった。質問の仕方が悪かったのかも。想定内ではあったけど、「そもそも詩人としてのアマンダ・ゴーマンを認めない。詩人としてより商売がうまい」的な発言もあった。商売上手のレベルでいえば、ルピカウルのほうが100万倍くらいすごいけど。私の心の中では、真っ赤なサイレンがグルグルと回った。そんなことを話したいんじゃない!!!

ま、これがインターネットの世界というものなのですが。

で、結局私が何を話したかったのか、何人かの人がヒントになるような答えをくれたので、それは後日書くことにする。自分と同じ温度で世の中のことを話せる人々というのは、家人を含め、ごくごく限られているのだと実感した次第…… こういう話をするのに、いいグループないですか? 知ってたら招待してください。

マリエケ・ルーカス・ライネベルトの「反論の詩」はこれ。

https://www.theguardian.com/books/2021/mar/06/everything-inhabitable-a-poem-by-marieke-lucas-rijneveld?fbclid=IwAR2HfpyB2DKe2Hqpd_YS6evmeQVhpNnPRXmYcuHjTTuG6qlHlCTrw-u5hPc

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