長考:Go to Travel

Go to Travelについてしばらく考えてみた。翻訳者の視点で。家人や友だちのコメントも含めて考えた。英語圏でもキャッチコピーは文法を無視することはよくある。キャッチーにするには、当たり前なのだと思う。友だちの旦那さん(アメリカ人)が「Jane the Bakery」という店の名前が文法的に間違っていると憤慨していると聞いた。文法的に正しいのは「Jane the Baker」だから。「Jane the Baker」だとなんとなく、「David the Sheppard」みたいに聖書の一節とか昔話が始まりそうな響きがあるような気がする。「Jane’s Bakery」にするって手もあるけど、それは既に誰かが使っていそうだし、「ステラおばさんのクッキー」みたいに、やや使い古されたイメージがある(私がそう感じるだけかも)。

「Go to Travel」にネイティブスピーカーが感じる不思議さは、言葉の「重複」にあると思う。Go+Travelの。おそらく日本人は気づいていないけれど、海外の英語のネイティブスピーカーは気づいている。今に始まったことではなくて、昔からだと思う。

たとえば、ひかり新幹線を英語では、Hikari Super Expressと呼ぶ。「Super か Express のどっちかだけでもよくない?」と思ってしまう。スーパークールビズも「クールだけで十分わかるけど……」、スーパーグローバル大学創設も「超グローバル???」と、その気合いは十分すぎるほど伝わってくるネーミングで、むしろほほえましい。『となりのサインフェルド』には、主人公ジェリーが日本のテレビ番組「Super Terrific Happy Hour」に出演するというエピソードがある。90年代の話なので、その頃から、少なくともアメリカ人は日本人的な英語の使い方に気づいていたのだと思う。つまり、日本的な英語用法が確立されている。

ちなみに、私の母親が生まれた地域では、標準的な日本語なら「とても大きい」と言うところを、「おっきいおっきい」と二度繰り返す。例文を挙げると「きょうなあ、おっきいおっきい西瓜もろてん。おっきいおっきいねんでぇ~!」。大人も男女を問わず使っていたので方言なのだと思うけど、すごくかわいらしい表現だなと幼心に思っていた。ついでに言っとくと、お姉さんが2人いる場合、年の大きいほうのお姉さんは「おっき姉ちゃん」になる。お姉さんが3人いる場合は…… まだ会ったことがないから、わからない。

てなわけで、「Go to Travel」は私的にはアリ! 英語のネイティブスピーカーに寄せた「完璧」な英語のキャッチコピーを考えはじめないほうがいいと思う。でも、やっぱり、日本人に呼び掛けるときは日本語でいいんじゃない? って思うので、私だったらどういうのにするか考えた。

「たび2で4」

小さいおうち

The Little House

トロントでこの映画を観たとき、中島京子が会場に来ていて、カナダ人のインタビュアーに「あれは山田洋二という有名な監督が撮ったものなので文句は言えません」と言っていた。そこで原作を読むことにした。

確かに、映画とは違う。原作はカズオ・イシグロの『日の名残り』に非常に近いノリで書かれている。主な違いは、『日の名残り』のほうは、執事の回想に「おいおい!」と突っ込むのが読者で、『小さいおうち』は、女中の回想に女中の甥の次男という若者が横やりを入れているので、それも合わせて読者は読むところ。

トロントでは緊急事態宣言がまだ解かれておらず、夜がヒマなので、『小さいおうち』の英訳と併せて並行読書することにした。翻訳には、誤訳はあっても「これが正解」というものはないので、他人の翻訳を読むのがいちばんいい勉強になる。私には、原書が日本語で、その英訳を見るというのが一番しっくりいく。英訳の苦労に触れられるし、斬新な解決策を軽やかに見せているところに感心するのが好きだから。逆に他人の和訳を見ると、自分の能力と他人の能力を比べてしまうから精神上よろしくない。

余談だけど、人間は自分の内面と他人の外面を比べてしまうから不幸になってしまうのだって。だからSNS疲れというのが起きてしまうのだわ、と妙に納得。

近頃、ポストコロナ本の出版ラッシュのようなものが起きているらしい。私にもその余波がほんのわずかながら届いている。

劇団ひとり

動画を作り出したのは、ユーチューバーになりたいなどと誓いを立てたからではない。仕事用のウェブサイトの維持に年間約100ドル払っているので、有効活用したいと思っていたのだ。そこへコロナ禍。外出しなくなったので時間ができたというわけ。

日本に一カ月いたときに、5歳の姪っ子と幼児向けのユーチューブ動画を散々見ていたおかげで、動画の作り方(編集ソフトの使い方とかじゃなくて、構成というのかな?)を門前の小僧的に学んでしまった。まあ、その頃からアイデアを練っていたのだけど。

そんなわけで、動画をひとりでせっせと作っている。脚本を書き、人間の言葉をオウム返しするぬいぐるみに演じさせ(私が演技している)、小道具を用意し(ミニチュアが役に立っている)、スマホで撮影し、パソコンで編集している。これを劇団「ひとり」と呼ぶことにする。

動画はせっかく作ったからあちこちで晒している(ウェブサイト、ユーチューブ、インスタ、ツイッター、フェイスブック、ノート)。実は、コンテンツマーケティングの本を最近翻訳し、必然的にアメリカのユーチューバー(子どもから大人まで)のチャンネルを翻訳中に見まくっていた。私も昨今の流行に乗っただけのことなのだ。動画のプロトタイプを作っている間に、友達に私のロゴを作ってもらった。ロゴのおかげですべての作業が一層楽しくなった。遊びは何でも派手にやらなきゃね。ロゴはいくつかパターンかある。わたしと言えば「おかっぱ」、そんな提案をしてくれるのも友達ならでは。

仕事用のウェブサイトでは、本当は英語書籍の紹介をするはずだった。でもそのようなことをやっている人は大勢いるので、その人々にお任せしたほうがよいと思う。もちろん私もときどきは紹介する。紹介はしたい。でも今は動画を作りたい。作った動画をエージェントさんに見せたら「面白い!」と言ってくれた。明らかに「本業にはまったく無関係だけど、新しい能力を身に着けるのはいいんじゃない?」的な意味でだったが。

で、私のユーチューブチャンネルはこちら↓↓↓ 

https://www.youtube.com/channel/UCBd4mjw_nis2I8ojIMhC3VA/