海外文学

ブログを1週間連続で書くと決めて、今日が5日目。あと2日。今日はちょっと真面目に。

「どんな翻訳書が売れるのか、売りたいのか 2023」という朝日カルチャーの講座を配信で観た。翻訳家の越前敏弥さんと、京都のCAVA BOOKSの宮迫憲彦(フィルムアート社の営業さんでもある)の対談。

CAVA BOOKSのある出町商店街の入り口付近に昔住んでいたこともあるし、フィルムアート社からは4冊訳書を出しているしで、勝手に親近感を持っていて、この対談を楽しみにしていた。内容は勉強になったし、これまでに人から聞いていた話と一致していたので、やっぱりな……という気持ちもあった。

まだ1冊しか作れていないけれど、私もイラストレーターの友人と組んで同人誌を紙版と電子版で出してみて、考えていることはいろいろある。自己実現の欲求は満たせたものの、「販売」と「継続」は難しい。しかも私たちは海外にいながらの日本語の同人誌なので、商売と物流に関しては勉強しなければならない。それに時間を割きたいのかどうかが自分でもわからない。時々、「あ、こうすればいいんじゃ?」とアイデアがひらめいても、実行に移す時間がないから。

若い読者への期待ということで、私は親戚の10歳未満のちびっこたちに、海外児童書をせっせと送りつけている。10歳までは偏見がなく、吸収力がすごいらしい。どうやら、本は好きなようで、送ったものは読んでくれるので、どんどんと送っている。これが大人だと、カタカナ表記の外国人の名前が覚えられないだの、外国文化がわからないだの、文章が翻訳調だのと言われてしまうので、やっぱり頼みはちびっ子たちだなと心から思う。

本を読む人が減ると、自分が困るから、ブログに本の感想を書いたり、書評講座や読書会を開いたりと、一応本の紹介はしているつもり。SNSでさらっと情報を知りたい知人に「ブログだとさらにまた1クリックして読みに行くのがめんどうくさい」と言われたので、最近は自分のインスタとFBにも本の短い感想と写真を載せている。そう言われてから、どこに何を載せるのか、どれくらいの長さで書くのかは意識するようになった。

ポッドキャストでも、なるべく本にまつわる話をしようと思っている。本を読んで、友だちと感想を言い合うのって、けっこう楽しいしね。

今日のハイライト

映画『ザリガニが鳴くところ』を少し前に見て、沼つながりということで、リー・ダニエルズの『ペーパーボーイ』を観た。『ザリガニが鳴くところ』はこぎれいに仕上がっているので、「沼生活もあり」と思ってしまうけど、『ペーパーボーイ』は「いやぁ、沼地だけは勘弁して!」って感じ。ノースカロライナの湿地帯とルイジアナの湿地帯とでは生えている植物も違うから、ルイジアナのほうが鬱蒼としてて怖いってのもあるな。あと、話も複雑でグロすぎて、いまいちだった。

一度だけ、1994年の夏に、ルイジアナの沼地ツアーに参加したことがある。確かにきれいで幻想的で、沼地に代々住む人たちも見かけた。沼にはワニやヘビがいっぱいいるのに、平気でザブン!と飛び込む姿を見て、「文化が違いすぎる!!」とモンクの叫びのように驚愕したのを今もよく覚えている。あと、沼地に住む人の話す英語!全然わからなかった。

ぼくは川のように話す

原田勝さんの訳書『ぼくは川のように話す』を小学校2年生の姪っ子に送りました。姪っ子は今、ハリポタにどはまりしている読書家なのです。

身近に吃音の子がいるからと関心を持って夏休みに読んでくれたのですが、姪っ子は学校が大好きで、学校に行きたくない子の気持ちが、もひとつよくわからなかったようです。

著者ジョーダン・スコットは吃音障害を持ったカナダの詩人。『ぼくは川のように話す』の文章は短くて、とても詩的。それがちと難しかったのかしらと思ったら、「社会を知らなさすぎて、説明がいちいち必要だった」らしいです。そこで、親に説明してもらって、「学校に行きたくないほど、つらい気持ちになるとは?」を自分なりに考えたそうです。

この本の絵を描いたのはシドニー・スミス。この人もカナダのイラストレーターです。絵が好きな姪っ子は絵が気に入ったようです。やっぱり、小さい子に絵は大事ですね。

ちなみに私にとって学校はいつも苦痛な場所でした。行かなくてすむなら絶対に行きたくないところです。

姪っ子との共読をきっかけに、同じく原田さん翻訳で、吃音障害を持った少年が主人公の『ペーパーボーイ』と『コピーボーイ』を読みました。少年時代から大学進学までと話がつながっています。作者はヴィンス・ヴォーター。

『ペーパーボーイ』はメンフィスが舞台、時代設定は1959年。『コピーボーイ』は、それから数年経ったところから始まり、主人公はメンフィスからニューオリンズに車で旅をします。主人公を成長させてくれる「親切な大人」たちが何人も出てきて、人生の橋渡し役になってくれます。

年齢に応じた性愛も描かれています。少年時代はお母さん的な人を、青年になると同年代の女の子をそれぞれ好きになり、健全だなぁと思いました。夏休みに読むといいんじゃないでしょうか。

余談1:主人公がニューオリンズの街に入るとき、「ポンチャートレイン湖コーズウェイ」という橋を渡るのですが、私も1994年に同じ橋を渡ったことがあります。巨大な湖の上にかかる長い橋で、まるで水上を走っているような錯覚をおぼえます。風がびゅんびゅん吹くと、橋からおちるんじゃないか?!という不安を抱かせる怖い橋です。サンフランシスコ・ベイエリアのダンバートン・ブリッジや、シアトルのハイウェイ90のメモリアル・ブリッジも怖いですよね。

余談2:『コピーボーイ』では、メンフィスからハイウェイ51を南下してニューオリンズに行きます。それに並行してインターステートハイウェイ55もあるのですが、こちらはミシシッピ川に沿うように、ニューオリンズとシカゴを結んでます。この道をいつか車で走りたい。アメリカは西から東へ横断したことがあるのですが、南北はまだない。でも、なかなか実現しません。すぐに飛行機に乗ってしまう。

余談3:メンフィスとニューオリンズの間に、ジャクソンという町があります。『コピーボーイ』が書かれた頃から人口構成が変わり、今は財政難で水道を新しくすることができず、蛇口をひねっても飲めるような水質の水が出てこないところが多いとニュースになっていました。

余談4:どうして原田さんの訳書ばかりかというと、原田さんのもとで翻訳の勉強をしているからです。仕事でかたい内容のノンフィクションを訳しているので、やわらかな文章を作る練習をしたいのと、親戚の小さな子どもたちに年齢にあった本をお勧めしたくて児童書の翻訳の勉強会に入ってます。