ウソ日記2

山形でトミヤマユキコさんの講座がある。7日間ウソ日記を書くという課題らしい。本当は受講したかったけど、できないから、代わりにここに7日間ウソ日記を書く。全部がうそっぱちとは限らない。

5月23日火曜日

酔っぱらって真夜中過ぎに帰ってくると、マンションの受付の兄ちゃんが手招きするのでカウンターに立ち寄った。すると、「高層マンションには本当にたくさんの人が住んでいるから、変な人もいっぱいいるんだよ」とこっそり耳打ちしてくれたので、「たとえば?」と訊いてみた。

兄ちゃんは少し考えるふりをした。私に話しても差し支えない「事件」を選んでいるのかも。

「たとえばさ、真夜中のエレベーターで、時々、脱ぐ人がいるんだよ」

「脱ぐ? 全裸に?」

目的もなく、真夜中にエレベーターに一人乗り込んで、真っ裸になり、上に行ったり下に行ったりしてる住人がいる。監視カメラに写っているから、受付の人の間では「有名人」らしい。

「カメラに写ってるの知っててやってるのかな?」

「カメラに目は合わせないんだよ。でもわかってると思う」

「誰かが途中で乗ってきたら、どうするの?」

それがスリルなんじゃない?と兄ちゃんは推察する。私は今からエレベーターに乗るんだよう…… と身もだえする私に、「大丈夫、今んとこ乗ってない」とモニターをチェックする。

「他にも教えてよ。いっぱい知ってるんでしょ!」とねだってみたが駄目だった。「また今度。一度にいろいろは教えられないからね」と言って、手で私を追い払う仕草をした。

いやぁ、いい話を聞いた。

人間、暇を持て余したときに秘密をばらすもんなんだね。

今日もいい一日だった。