翻訳者のための書評講座(第4回目)のご案内

4回目も豊崎由美さんを講師にお迎えして開催します。

日時:6月17日(土)日本時間13:00開始

場所:Zoom(録画します)

所要時間:2時間(このあと懇親会が続きます)

受講費:1500円

人数:30名まで(うち先着12名の書評または訳者解説を講評&合評。残りの18名は採点と合評からの参加)

先着12名の枠は、いっぱいになりました。キャンセルが出るかもしれないので、書評を書くところからのフル参加ご希望の方は、お申し込み時にそう書き添えてください。

また、採点と合評から参加する約15名も募集しています(もちろん書評を書いていただいてもかまいませんが、当日講評と合評はされません。グループのnoteでの発表はできます!)

申し込み方法:knsbookclub@gmail.com またはツイッターの @kyonittaにDMをお送りください。

課題書:

インヴェンション・オブ・サウンド(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳、早川書房)

・自由選択(海外文学で邦訳が出ているものなら、文字通り何でも)

以上のうちどれを選んでいただいても結構です。2冊選んで書評を書いていただいてもかまいません。

「書評」を書く方は800〜1600字。「訳者解説」のつもりで書いた方は1600〜3200字。自分がどちらにしたか明記してください。また、「書評」を選択した人はどういう媒体に載せるつもりで書いたか、最後に(想定媒体=○○××)と付記してください。字数は厳守です(タイトルは数えない)。

流れ:作品を読んで書評提出 → 採点 → 講評 → 合評 → 懇親会

提出方法:ワードファイルで作成(縦横のレイアウト、フォントやサイズはお好きなように)。無記名でお願いします。

提出日:6月4日(日)(海外在住者は、ご自分のタイムゾーンの6月4日で)。knsbookclub@gmail.com宛に送ってください。
提出作品をこちらでまとめます。6月13日(火曜日)までに12点の書評の採点をお願いします。申し込みをしていただいたときに、この「採点」の説明をします。

また、いったんお支払いいただいた受講料は、受講者の都合でキャンセルした場合、お戻しすることができません。講座は録画しますので、その録画をご覧いただくことになります。

講座のあとで書き直しを発表する場を note に用意しています。こちらは自由参加です。

【余談:ロゴの由来】なぜ鍋なのか?

書評講座初期メンバーで note のグループ名を考えました。海外文学と一口にいっても、いろいろな国の文学作品があり、内容も実に多様。講師の豊崎さんに「書評を書くにあたり、いろんな視点があっていいんですよ」と教わったのもあって、書評鍋、海外文学鍋など、鍋系の名前がたくさん候補にあがりました。投票の結果、BOOKPOT (ブックポット)に決定。メンバーのおひとりに上のロゴを作ってもらいました。

というわけで、豊崎さんの講評のあと、互いのアプローチの違いを尊重しつつ、活発な合評が繰り広げられますので、みなさんお楽しみに!

さよなら2022年

あらら、もう年末。今年も盛りだくさんだったと思う。

久しぶりに外国へ休暇に出たし、日本へも一時帰国できた。遅い夏休みだったロンドンとスイスの旅は、あろうことか、エリザベス女王の国葬と重なり、とても貴重な体験ができた。あの場の空気を吸えてラッキー!みたいな程度ではあるが。バッキンガム宮殿周辺を埋め尽くす花束の山、宿泊のホテルの前を通っていたあの棺…… 何年か経って、「あのときどこで何をした?」と人と話すときのために、忘れないでおこう。

にぎやかなロンドンを離れ、スイスに着いたとき、「静けさが心地よい」と思ったのは、やっぱり年齢のせいかもしれない。18年前と何ら変わらないような景色……と思ったが、実は微妙に変わっている。レマン湖の壮大な景色を前に、私はジュネーブのパテック・フィリップ時計美術館で小さな時計をしげしげと見ていた。ミニチュア好きにはお勧めしたい。昔々は限られた人々しか時間を知ることができなかった。だから時計は豪華で美しかった。人が時計を携帯するようになり、でもまだ腕に付けていないときの時計は、小さくて、フルーツや虫の形をしていたり、ピルケースやお化粧のコンパクトの形をしていたり、心がときめく可愛さと美しさがあった。時計が一気に可愛くなくなったのは腕に付けるようになってから。そしてその頃から、人間は時間に追われるようになった……。

スイスでは仕事で家人が滞在していたローザンヌを拠点に、あちこちを回った。乗り継ぎでもたついたことがあって、全力疾走したつもりが、家人いわく「全然走ってなかった」らしい。それもそのはず、骨盤骨折以来、はじめての疾走だったのだ。

日本帰国時には、限られた時間内で友人や家族との時間もとれたし、おしゃれウィッグも手に入れたし、神戸三宮で久しぶりにゆったり時間を過ごせたのもよかった。三宮も家人が仕事で滞在していたのだが、街がコンパクトで結構気に入ったとのこと。

来年はもう少しいろんなところへ足を伸ばしたい。そういえば、2022年の初めにニューヨークにいくはずが行けなかったことを思い出した。残念過ぎた。リベンジしたい。

新しいことをはじめたという意味では、やはりポッドキャストに勝るものはない。編集など、それなりに面倒なこともあるが、編集が楽になるように話す意識をするところまではきた。収録はいつも楽しいし、ポッドキャストを通じて親しくなった人もいるし、遠くに住む友だちや家族を身近に感じられるのもよかった。

2022年も翻訳の仕事は忙しかった。ありがたい。4冊翻訳したのかな?年をまたぐプロジェクトもあるからよくわからない。もっとスピードあげて、もっと翻訳したい。企画する時間がもっとほしい。半導体の業界史のような本を見つけて、企画書書いて、私にしては超特急で動いたのに版権取られてた。英語版出てからオーディオでさらさら聞いたけど、結構いい内容。まだ翻訳者決まってないなら、翻訳したいので声をかけてください。どこの出版社が版権をとったのかまではわからないので。タイトルは『Chip War』

ファッション関係の本を2冊訳して、参考資料もいっぱい読んで、俄然ファッションに興味が出てきたので、ファッション史の講座を半年とることに。実はファッション史の中で、興味のある時代がある。ちょっとその辺、がんばりたい。

来年は1冊、今までとは違う形の仕事が入ってる。多くは語れないけど楽しみ。

文芸翻訳の勉強を続けているけど、なぜかこれがノンフィクションの翻訳にすごく役立っている。ここで説明するのは面倒くさいからやめとくけど。この文芸翻訳の勉強会から派生した読書会も、もう1年も続いてる。こちらも「深読み」の訓練になっている。

あとは書評講座!かれこれ3回開催したけど、最高やね、これは。学びの量が半端ない。他の人たちからいいアイデアを提案してもらって、「アフター書評講座」のスペースもやれたし。4回目もやる!

日本の人口が激減しているせいもあるけど、日本では本の売上が年々下がっている。カナダでも減っているのではないかと思うけど、カナダの書籍の売上の41%はヤングアダルト。つまり、若い世代が結構読んでる。本屋の売り場を見てもそうだろうなと思う。大人の本が少なく、SNS頼みの陳列(それはよいと思うけど)。ニューヨークタイムズで、デジタルにうんざりしてて、本を読むなら紙、文具も好き、スマホから離れないと頭を動かす時間が減ると考えるデジタルネイティブ世代の子たちについての記事を読んだ。うちの姪っ子も読書好きで、友だちと一緒に本読んでるって言ってたし。

来年はもうちょっとブログ書こうかな。前みたいに、日常的なことを。

長くなったけど、2022年はこんな感じだった。2023年もよろしく!!

第三回翻訳者のための書評講座、終了

12月3日、豊崎由美さんを講師にお迎えし、書評講座を開きました。講座と懇親会で、今回も濃密な5時間を過ごしました。毎回、ホントにすごいです。

課題書は次の2冊か、自由選択でした:

喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀、角川書店)

フランキスシュタイン(ジャネット・ウィンターソン著、木原善彦訳、河出書房新社)

・自由選択(海外文学で邦訳が出ているものなら、文字通り何でも)

「自由選択」という選択肢が増えたことにより、今回は文学だけでなく、詩集、ノンフィクション、シリーズ作品、ブックデザインに凝った本など、紹介する本の幅が広がりました。その分、豊崎さんから伝授されることも増え、メモをとる量が半端なかったです。

そして豊崎さんが書かれた書評にも受講者からするどい批評コメント! 講師と受講者の間の垣根がほとんどありません。

この書評講座に関心を持っている人も多いだろうということで、一夜明け、ツイッターのスペースで受講者4人で座談会を開きました。これでなんとなく、講座でどんなことをしているのか、雰囲気が掴めていただけたのではないかと思います。

この講座に関して、4人で話しているうちに新しいアイデアなども浮かび、これから先が楽しみです。書評でこんなに楽しめるなんて思いもしませんでした。

今回の書評王は五十嵐真希さん。『引き出しに夕方をしまっておいた』(ハン・ガン著、きむ・ふな、斎藤真理子訳、クオン社)という詩集の書評で、実にすばらしかったです。

前回同様、note に講評後に書き直した書評を徐々に載せていきます(強制ではないので、書きたい人だけですが)。

4回目もやるぞー!

翻訳者のための書評講座(第3回目)のご案内

3回目も豊崎由美さんを講師にお迎えして開催します。

日時:12月3日(土)日本時間13:00開始

場所:Zoom(録画します)

所要時間:2時間(このあと懇親会が続きます)

受講費:1500円

人数:30名まで(うち先着12名の書評または訳者解説を講評&合評。残りの18名は採点と合評からの参加)

先着12名の枠は、残りわずかとなりました。書評を書くところからのフル参加ご希望の方は、お早めにお申し込みください。また、採点と合評から参加する約15名も募集しています(もちろん個人的に書評を書いていただいてもかまいませんが、当日講評と合評はされません。グループのnoteでの発表はできます!)

申し込み方法:knsbookclub@kyokonitta またはツイッターの @kyonittaにDMをお送りください。

課題書:

喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀、角川書店)

フランキスシュタイン(ジャネット・ウィンターソン著、木原善彦訳、河出書房新社)

・自由選択(海外文学で邦訳が出ているものなら、文字通り何でも)

以上のうちどれを選んでいただいても結構です。2冊選んで書評を書いていただいてもかまいません。

「書評」を書く方は800〜1600字。「訳者解説」のつもりで書いた方は1600〜3200字。自分がどちらにしたか明記してください。また、「書評」を選択した人はどういう媒体に載せるつもりで書いたか、最後に(想定媒体=○○××)と付記してください。字数は厳守です(タイトルは数えない)。

流れ:作品を読んで書評提出 → 採点 → 講評 → 合評 → 懇親会

提出方法:ワードファイルで作成(縦横お好きなように、フォントやサイズは適当)。無記名でお願いします。

提出日:11月13日(日)(海外在住者は、ご自分のタイムゾーンの11月13日で)。knsbookclub@gmail.com宛に送ってください。
提出作品をこちらでまとめます。11月20日(日)までに12点の書評の採点をお願いします。申し込みをしていただいたときに、この「採点」の説明をします。

また、いったんお支払いいただいた受講料は、受講者の都合でキャンセルした場合、お戻しすることができません。講座は録画しますので、その録画をご覧いただくことになります。

講座のあとで書き直しを発表する場を note に用意しています。こちらは自由参加です。

【余談:ロゴの由来】なぜ鍋なのか?

書評講座初期メンバーで note のグループ名を考えました。海外文学と一口にいっても、いろいろな国の文学作品があり、内容も実に多様。講師の豊崎さんに「書評を書くにあたり、いろんな視点があっていいんですよ」と教わったのもあって、書評鍋、海外文学鍋など、鍋系の名前がたくさん候補にあがりました。投票の結果、BOOKPOT (ブックポット)に決定。メンバーのおひとりに上のロゴを作ってもらいました。

というわけで、豊崎さんの講評のあと、互いのアプローチの違いを尊重しつつ、活発な合評が繰り広げられますので、みなさんお楽しみに!

掃除婦のための手引き書(書評講座の書き直し)

2022年4月16日の「翻訳者のための書評講座」の課題を書き直しました。Before & After は note にも掲載しています。

洗剤や消毒の匂いが漂う『掃除婦のための手引き書』

 本書を手に取る人はきっと『掃除婦のための手引き書』という不思議な題に興味を惹かれるだろう。ところが、表紙の写真は掃除婦らしからぬ美しい女性。小粋に煙草を指に挟んだまま、微笑を浮かべて遠くを見つめる目は達観し、何事も見逃さないような印象を与える。この女性が著者のルシア・ベルリンだ。
 1977年に出版された初の作品集をきっかけに、一部で知られるようになったベルリンは、「知る人ぞ知る作家」のまま、2004年に亡くなった。再発見され、世間一般に知られるようになったのは2015年、彼女の全作品のうち43編が新たに編まれて出版されてからのことだ。ここに紹介する日本語版には、2015年版の『A Manual for Cleaning Women』の中の24編が収録されている。
 表題の短編「掃除婦のための手引き書」は、カリフォルニア州サンフランシスコの対岸にあるバークレーとオークランドでベルリンが掃除婦をしていた頃の話がもとになっている。主人公マギー・メイは、通勤に乗るバスの路線別に出来事を並べ、裕福で進歩的で、幸せそうに見える家庭の家を片付けるときの、物の盗み方、ペットとの接し方、他人の不幸のかけらの見つけ方を助言する。
 自己実現のために「掃除婦になりたい」と思う人など少ないだろうに、なぜ「手引き書」なのか。掃除婦マギー・メイには絶対悪や絶対善の感覚がない。善悪は相対化され、独特のバランス感覚を持っている。だから「奥様がくれるものは、何でももらってありがとうございますと言うこと。バスに置いてくるか、道端に捨てるかすればいい」と言いのける。死別したパートナーとの思い出も時々挿入され、行き場を失った愛情をどうしたらよいのかを、マギー・メイは掃除の仕事の行き帰りに考えている。
 どの短編も主人公の女性はベルリン自身がモデルだ。少女時代は引越が多かったせいか、学校でやることなすことぎこちなく、問題児扱いをされていた。大人になってからは重度のアルコール依存症に苦しんだ。同じくアルコール依存症だった母親との関係も難しく、幼い頃のおぞましい体験も後半に収録されている「沈黙」で明らかになる。コインランドリー、病院、歯科医院、養護施設と、洗剤や消毒の匂いが漂う場所が頻繁に登場するのは、自分に絡みつく酒の匂いや過去を払拭したかったから?
 この作品集は冒頭から順番に読めば、ルシア・ベルリンが自分の不幸とどう折り合いをつけていったのか、彼女にとって文章を書くことがいかに大切だったのかを知ることができる。『掃除婦の手引き書』なのだが、「苦しみの殿堂」で、彼女は末期がんの妹の家を片づけながら、「死には手引き書がない」と言っている。
 
(想定媒体:読売新聞)
(1072文字)

言い訳(と豊崎さんからの心に残ったコメント)

 第1回目の書評講座後、私は小泉今日子の書評に注目して研究しました。周囲の人に「あれは小泉今日子だから許されるのであって、アンタが書いても……」という耳の痛いことを言われましたが、私は小泉さんの「本との出会い」から本の内容へと進む書き方がいいなと感じていたのです。そこで今回は、表紙→あとがき→表題作の順番で書いてみました。これが私のこの本との出会い方だったので。いたって普通の出会い方ではありますが。
 修正前は、「人生の一回性」について書こうと思っていました。講師の豊崎さんには「それならば、人生は取り返しがつかない、と感じたところを本からピックアップして書けばいいのに、書いてない」と指摘されました。確かに、書いてません。
 今回は書きたいことを箇条書きにして、それをつないで膨らませただけでした。結果、「文章がぶつぶつ、ごつごつした感じになっている」と指摘を受け、「800字字数が与えられているなら、その2倍や3倍は書いて、削りに削る作業をしないといけない」とアドバイスも受けました。完全に見破られていました。本当にそのとおりだと思います。この書き直しも、別に大した改善はないですが、記録のためにここにさらしておきます。
 
「他の人にはない気づきがあって面白い」とおっしゃっていただきましたが、実は、豊崎さんの書評講座では毎回同じようなことを褒めていただき、私にはこれしか褒めるべきところがないようなのです(トホホ……)。

なーんと、第3回も企画中です。12月3日(土)に開催です。課題書はまだ決まっていませんが、興味のある方は是非!まだまだ時間があるので、講師豊崎さんの『ニッポンの書評』を読んで、ウォームアップすることをお勧めします。