一人称単数

読んでる途中から、短編小説なのか、エッセイなのか混乱するほど語りが「村上春樹」だったけど、一応8作とも短編小説らしい。

8作品のうち、『謝肉祭』が興味深かった。「謝肉祭」はシューマンのピアノ曲のことです。「ブスな女と美男のカップル」の「ブスな女」が主要登場人物で、限りなく村上春樹っぽい男友達と「シューベルトの一部のピアノソナタいいよね」って言ってるから(1行しか書かれていないけど)。私はシューベルトのピアノソナタがほぼ全曲大好きで、そのソナタ集を一日中グルグルと聞いても飽きない。どこがいいって、なんかきれいだから。「謝肉祭」も好きですけどね。

アマゾンのコメント見たら、「つまらない」って酷評されていた。短編って基本、余白というか「書いてないこと」がたくさんあって、内容も日常的なものが多くて、響かなければ「なんじゃそりゃ?」って思ってしまうよね。私は村上春樹なら、エッセイと短編が好きです。

ラオスにいったい何があるというんですか?

コロナのせいでどこへも行けないので妄想の世界で旅をしました。村上春樹が旅をした10カ所のうち、7カ所に私も行っていました。ボストンやメイン州のポートランドなど、行ったことすら忘れていましたが、アイスランドとギリシャ(滞在した島は違うけど)の紀行文には特に共感を覚えました。この2つの紀行文はすごくいいです。アイスランドのブルーラグーンは、多分、村上春樹が行った頃とはすっかり変わっているとは思いますが(温泉が変わったわけではなく、商魂がたくましくなっているという意味で…… 私が行ったときは、アイスランドのここだけが異常なほど国際化していて、珍しくはあったけど、宿泊先のホテルにあった温泉のほうがよっぽど好きでした)。トロントからアイスランドは近いので、また行きたい。

一人旅か二人旅の多い私は、がっちり予定を組まずに気の赴くままに移動を楽しむほうなので、村上春樹の紀行文に漂うのんびり感に安堵を感じました。