ブルースだってただの唄

タイトルがいいよね。内容は、アメリカのウィスコンシン州に住む黒人女性たちからの聞き書きで、時は1980年代。40年以上前の話。話が古いんじゃないのか……? と危惧しながら読んだけど、古い部分もあるけど、古びていない。「これから先、人種差別はどうなっていくと思う?」と尋ねる藤本さんに、黒人女性たちが答えた「未来の予測」が当たっていた。公民権運動でほんの少し地ならしはあったけど、分断の局面が増えて(黒人の中でも分断するし、黒人が「マイノリティ」として十把ひとからげにされてしまうから)、より悪い方へ向かっていく、と彼女たちは予測していた。

女たちは「肌の色の濃さ」に苦しんだ経験を語っている。日本で言うところの「ハーフ」の苦しみに似た苦しみを持っていると思った。

黒人とひとまとめにされてしまっているが、混血が進んでいる。両親のどちらかが白人や先住民やアジア系だと、子どもの肌の色は薄くなる。子どもが何人もいる家庭だと、それぞれの子どもに親の特徴が違って出てくる。たとえば、わりと色白で、髪もまっすぐな姉のあとに、色黒で髪も縮れた妹が続いたりする。すると、きょうだいの間に軋轢が生まれる。姉は、外に出れば白人の仲間のように扱われ、黒人に対する中傷を白人の友人からガチで聞かされ、色が黒い妹からはやっかまれたりする。それにいくら色白でも、自分は白人としては生きてはいけない。それは親を裏切ることになるから。肌の色とどうやって向き合ってきたか、横道にそれた経験も含め、女たちが語っている内容が具体的で興味深かった。目をそむけたくなるようなひどい話も出てくるけど。

ブラックライブズマターのときに、いろんなことが言われ、ふんわりとした同調論も批判あったけど、私には肌感覚でわからないことがいくつかあったので(いくら北米滞在歴が長くても、黒人作家の本読んでても)、読んでみた。正義が自分には適用されなかったという経験がないと本当にはわからないにしても、想像力を働かせれば十分理解できる具体性があったから。

あと、斎藤真理子の解説がすごくよかった。

これは1968年の曲なので、この本よりさらに10年以上さかのぼるけど、登場人物たちが「勇気づけられた」って言っていたから、リンク貼ってみた。