ラオスにいったい何があるというんですか?

コロナのせいでどこへも行けないので妄想の世界で旅をしました。村上春樹が旅をした10カ所のうち、7カ所に私も行っていました。ボストンやメイン州のポートランドなど、行ったことすら忘れていましたが、アイスランドとギリシャ(滞在した島は違うけど)の紀行文には特に共感を覚えました。この2つの紀行文はすごくいいです。アイスランドのブルーラグーンは、多分、村上春樹が行った頃とはすっかり変わっているとは思いますが(温泉が変わったわけではなく、商魂がたくましくなっているという意味で…… 私が行ったときは、アイスランドのここだけが異常なほど国際化していて、珍しくはあったけど、宿泊先のホテルにあった温泉のほうがよっぽど好きでした)。トロントからアイスランドは近いので、また行きたい。

一人旅か二人旅の多い私は、がっちり予定を組まずに気の赴くままに移動を楽しむほうなので、村上春樹の紀行文に漂うのんびり感に安堵を感じました。

不毛地帯(全巻読破)

いやぁ、非常に情報量が多く、5巻までの道のりは長かった。昭和の話なので、情報戦が料亭とか銀座のクラブを基軸にしていたり、「財務省」や「金融庁」ではなく「大蔵省」だったりして隔世の感はある。基本、男たちが主役だけれど、女性のほうも芯が強いし、豪快なキャラクターもいる(弱い女性像は山崎豊子が書きたくなかったのかも?)。

誰かが、「リアルタイムでニュース記事を読んでいるとノイズが多いので、10年前くらいの新聞・雑誌の記事を読むと、物事の本質がよくわかる」と言っていた。この小説もそんなかんじじゃないかと。ま、小説だし、10年どころか、もっと古いですけどね。

なんたってシベリア帰りの元参謀本部の男が、大手総合商社に大きく水をあけられている「関西系の繊維商社」を成長させる話が軸になっているので、スケールが大きい。昭和の大物政治家(ついこの間まで首相だった人の親戚だとか、田中角栄など)、黒幕(児玉誉士夫らしき人や稲川会の会長らしき人など)も出てくる(本名で出てくるわけではないので、想像しなければならないけれど)。

1巻:シベリア抑留生活と東京裁判

2巻:航空自衛隊の次期戦闘機選定合戦

3巻:資本自由化でアメリカ資本が日本自動車業界進出を画策

4&5巻:イラン・サルベスタン鉱区での石油発掘

ドラマは新しいのも古いのも見ていない。なんとなく映像にすると、『半沢直樹』のような暑苦しそうなストーリーになる気がしなくもない。

巣ごもり生活中に、『デカメロン』、そしてこの『不毛地帯』と超長編を読んだ。2カ月ほど前に、仕事の資料として『三国志演義』と『戦争を平和』という超大作を買った。ちらちらと読んでいるうちに、最初から最後まで読んでみようかなという気がしてきた。今なら読めるかも。

不毛地帯

毎日、世界のあちこちにあった帝国について調べています。翻訳作業のために下調べしているのに、今日もリヴィウ(ウクライナにある)っていいところだな、コロナが落ち着いたら行ってみたいな、と長い間(ネット上で)すてきな建造物を見る旅をしてしまい、気が付けば仕事がはかどっていませんでした。

私の頭の中は、帝国や帝国主義のことでいっぱいで、仕事していない時間には山崎豊子の『不毛地帯』を読んでいます。戦前の軍事教育を受けた優秀な軍人って、戦後どういうところで何をしていたのだろう? と気になっていましたが、それに答えてくれる内容です。何度もドラマ化されているので、ここであらすじを話すまでもないですが。

毎年、夏の今くらいの時期になると、第二次世界大戦中の日本を描いた映画が見たくなります。市川崑の『野火』を見ようと決めてはいるのですが、内容が内容だけに、ホットドッグなど肉を食べながら見るのも憚られ(人肉を食べる話が出てくる)、まだ見ていません。その代わり、ドナルド・リッチーがこの映画について話しているインタビューを見ました。「実際に戦争を体験した世代が生々しくそれを覚えている時代にこういう映画は作られるけれど、今の日本ではこういう映画は絶対に作ることができない」と言っていました。時代が流れているってことですね。『不毛地帯』もそんな小説。

三島由紀夫の本と『むずかしい年ごろ』

巣ごもり中に、三島由紀夫の本をとりあえず4冊読みました。『潮騒』と戯曲を除き、ナルシストの三島由紀夫が書いたナルシストな小説は、巣ごもり中にはキツかったです。「そんなこと、どうでもええやろ!」とページを飛ばしてしまいたくなるのです。昔読んだときはそうは思わず、むしろ感化されていたので、「読みごろ」ではなかったのかも。『潮騒』にある三島由紀夫の海の描写がすばらしく、何回読んでも飽きない。あの海を知っているからかも。

面白かったのは、このロシアの小説。『むずかしい年ごろ』というタイトルがもうすばらしく(「むずかしい」が平仮名にしてあるところとか)、遠方の友人がこの本をブックインスタしていたのを見て、私も買ってしまったというわけです。

アンナ・スタロビネツはロシアでは有名なホラー作家らしいです。私はモスクワの空港にしか行ったことないくせに、「ロシアっぽい!」と感動してしまいました。「怖さ」は、そーですねー、乱暴にたとえるなら、ネットフリックスの『Black Mirror』っぽい怖さですかね。虫も出てくるし。虫が苦手な人は、一番最初の話は読まないほうがいいです。私は髪を掻きむしりながら読みましたから。

一番気に入ったのは、「家族」っていう話。頭が半分にスパッと切れているおじさんが出てきて(頭がお椀の形になっている)、頭の中から、「紫色のマスカット」や「ニンニク添えのチキン」を出すのです。こういう話大好き。

紙の本を買ったので、読みたい人には貸せますよ。

シン・ニホン

趣味の読書の合間に、ポストコロナであるとかウィズコロナであるとかの本を読んでばかりいました。仕事でそういう本を何冊か読み、興味の赴くまま、芋づる式に読んでいたのです。ネット討論もいろいろと見ていました(はっきり言ってもうお腹いっぱいです)。

別にこの本は新型コロナとは関係ないのですが、「これからの日本、どうする?」という問いにいろんな具体案が提案されています。先端の技術開発に国が投資しないと、他の先進国にどんどん引き離されて経済は回らないし、経済が回らないと東京一極集中が加速して地方は疲弊する一方だし、高齢者に税金を使うより、若い世代に投資しましょう、という内容です。よく耳にする話ですけど、煽るだけ煽って読者を不安にさせる内容ではなく、最終章では希望を感じさせてくれます。「若い世代に投資」というくらいなので、教育者とか親とか会社の管理職とか、若い人と接する人か、若者が読むべき本だと思います。 

新型コロナをきっかけに「変わる/変わらない」の議論を毎日のように耳にするけれど、ピンチに立たされた人や、家族がいつも同じ空間にいて息が詰まりそうだったという人は既に変わっている(行動には出ていなくても心が変わっているはず)。勤務先から在宅勤務を命じられ、遊びで外出する機会が減って貯金が増えた人などは、変わらないというか、変わる必要があまりない。私は、「そこだな」と思いました。確かにコロナによって起きた問題もありますが、コロナ以前から何らかの「解」を出して行動に移さなければならなかった問題はそれぞれにあって、今回のコロナ禍をきっかけに、それに着手した人は結構いるんじゃないかと思います。私も動画づくりは続けるつもり(笑)。

自粛期間中に考える時間がたっぷりあって、少しずつ街の経済が再開している今になってみると、「ああ、もうちょっと考える時間がほしい」などと思ったりします。散歩しながら、とりとめもなく思索にふける時間が、ポストコロナにもしっかり欲しいなと思う今日この頃です。

最近友達がすごくいいことを言っていました。

「毎日家の掃除ばっかりしてても私の未来は変わらない」

以来、私は散歩中に「<チョメチョメ>ばっかりしてても私の未来は変わらない」の<チョメチョメ>にあたる部分をいろいろと考えています。みなさんの<チョメチョメ>は何ですか?