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18世紀のヘアスタイリング

新しい訳本が出ました! 『18世紀のドレスメイキング』がローズ・ベルタンを気取る本だとしたら、『18世紀のヘアスタイリング』はレオナール・オーティエになりきる本。ちなみに、ベルタンはマリー・アントワネットのドレスメーカー、オーティエはマリー・アントワネットの髪結い師です。

これを訳すために、資料を読むという口実をつけ、『ベルばら』を全巻読みなおしましたし、同じく漫画の『傾国の仕立て屋ローズ・ベルタン』も、ノンフィクションの『マリー・アントワネットの髪結い:素顔の王妃を見た男』も参考にしました。本当はツヴァイクの『マリー・アントワネット』も読みたかったのですが、時間がなかったので、こちらはあとの楽しみに。漫画情報は、翻訳の勉強会や読書会で一緒の人にいろいろと教えてもらい、助かりました!

もちろん、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』も見直しましたし、オーストリア妃だったシシィこと、エリーザベト・フォン・エスターライヒのドラマも見て、時代や国が変わればドレスも髪型も変わるもんだと実感。

これはロココ時代のヘアスタイリングについての本なのですが、著者たちがアメリカ人なので、ロココヘアがイギリスやアメリカに広まるとどうなったか、なんてことにも言及があります。フランスほどはっちゃけてない! あと、髪がセミロングでもロココヘアにできますし、自分で整髪剤やコスメを作れるレシピも載ってます。

とにかくですね、ファッションの歴史は面白い! 俄然興味が湧き、今オンラインでファッション史講座を受講してます。講師はこの本の監修を担当されている青木さんです。勉強もしたし、ファッション史の本、どんどん訳したい!

インスタグラムでは、歴史衣装のコスプレしている人たちをいっぱいフォローしてます。みんなとても楽しそう! この間コミコンに行ってきたのですが、ロココに特化したイベントがあったらすごく楽しいだろうにと思いました。すでにどこかでやってそうですが。

コロナ禍でファッションが遠のいた人たちは、ロココ調のヘアやドレスを現代風にアレンジして、どかーんとおしゃれを楽しんでみては? まあ、既にそういう人が一人いますが、それは黒柳徹子さん! 私が師と仰ぐ方です。

Tár

ブログチャレンジが5日目でストップしたけど、Day 7 まで続ける。

姉御にミロミロ攻撃に遭ったので、見た。な、長い! 私は女性の多い世界で過ごすことが多いので、こういう展開にあまり驚かなかった。結末以外は。

女ばかりの世界にいれば、当然リーダーも女になる。女がリーダーになったからといって、女性が抱える問題は消えない。支配欲のある女は、支配を強めるために、他の女の権利を奪うような、他の女を敢えて苦しめるようなことをする。女ばっかりの世界に浸かったことがある人は、「ちょっと男の人が混じってるほうが、平穏になるのになぁ」と思ったことも多いはず。私はそう思っていた。アグレッシブ烈子のハイ田が、バイト先のコンビニで他の女性店員の癒しになっていたのを思い出してほしい。あれだ。

主人公がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者っていう設定が、支配を描くのにぴったり。

読書会12 – 私の名前はルーシー・バートン

3月の読書会の課題書は、エリザベス・ストラウトの『私の名前はルーシー・バートン』(小川高義訳)。1980年代のニューヨークが舞台で、イリノイ州の田舎で暮らした過去にフラッシュバックしたかと思えば、フラッシュフォーワードもする。

とても貧しい幼少時代を過ごした、主人公のルーシー・バートンは一家の中で唯一大学に進学し、結婚して子どもを産み、小説家としての才能を開花させ、ニューヨーク市に住んでいる。ところが病気で長期入院することになったため、田舎から母親が付き添いとして5日間だけ病院に寝泊まりする。田舎で貧しいまま暮らした母親と、都会で作家として成功しはじめた娘の会話は、水面下でぎくしゃくする。

ルーシー・バートンがイリノイでどういう暮らしをしていたのかは、少しずつ明らかになるが、深くは掘り下げない。貧しさのせいで欠落しているものを抱え、親の愛がいびつで、虐待を受けたルーシーの過去は少しずつあぶり出される。

読書会では、現在過去未来を行ったり来たりするストーリーの流れのなかでルーシーの過去を拾い集めたものを披露し合うように、「つまり、ルーシーは……?」と話し合ったのが興味深かった。

2回目の読書会で読んだ『わたしはイザベル』も、貧困に由来する母娘の虐待関係を描いた話だったことを読書会仲間が思い出させてくれた。どちらも虐待関係を乗り越えて、「私はXXXXXだ」と自分を改めて名乗りなおすのが共通点。『わたしはイザベル』は作者自身の体験だから、名乗りなおした「その後」は世間が知っている。一方の『私の名前はルーシー・バートン』は架空の人物。作者が作中で「ルーシーのその後」を書いているので、読者はルーシーがどういう道を歩んだのかを徐々に知る。

母と娘ってむずかしい。

次は、この読書会では初めての和書を読む!

PODCAST S2 EP11

シーズン 2 のエピソード11をお届け。今回はゲスト回です。シーズン2のフィナーレを飾ってくれるゲストさんは、かつてのティーン・ファッション誌『エムシーシスター』の専属モデルで、現在はモデルと俳優をされている優恵さんです! なつかしいっ!

  1. 優恵さんが『エムシーシスター』の専属モデル時代、当時のモデル業界について話してくれています。すごく自然体な方で、話しやすい! 途中、ごみの分別の話してます、有名なモデルさんを相手に……
  2. 途中、きょうこりんが無印のボーダーシャツを12枚も買ってしまった話を蒸し返されています。
  3. 優恵とのおしゃべりは全然尽きなくて、今回のエピソード内には収まりきりませんでした。あと2、3回に分けてお届けしますね!

Spotify だけでなく、アップルポッドキャスト、グーグルポッドキャスト、アマゾンミュージックでも聞けます。「きょうこりんと姉御」で検索してみてね。

A Christmas Mistake

2年前、イラストレーターの友人とコラボして、『赤毛のアン』でおなじみのモンゴメリの古い短編『A Christmas Mistake』を『クリスマスの伝言』と訳して、ミニ冊子を作った。去年はそれを電子書籍化して、Kindle Unlimited でも読めるようにし、英語版も作ってグリーティングカードにも使えるように体裁を整えた。どれもこれも、かかったコストは回収していないけど、学びは多かった。

ボケキャラの導入

ところで、この『クリスマスの伝言』、単なる心温まるお話という以外に、モンゴメリの力量を感じる部分がいくつかある。まずは、登場人物の多さ。英語で2900文字にも満たない短い作品なのに、8人も登場人物がいて、主人公の女性2人はもちろん、他の6人も性格や物語の位置づけがぱっとわかるように書いてある。そして、この女性2人を一気に近づけるため、「ボケキャラ男子」を投入している。このボケキャラが伝言ゲームで失敗を犯すのが、この話のミソなのだ。

キリスト教的な互助精神を描いているのに、「男にボケさせる」という仕掛けを思いついたモンゴメリを私は尊敬した。それだけではない。モンゴメリは主人公の女性2人に、ボケ男について手厳しいことを言わせ、「庇護を受けるのは女性」という社会通念をひっくり返している。主人公の1人の女性は、子だくさんで男の子も何人かいるが、みな幼いため、「どいつもこいつも」な少年で、まだ母親の世話になっているところが見逃せない。

19世紀終わりから20世紀初めのお菓子

『クリスマスの伝言』には、19世紀から20世紀に入る頃のお菓子がたくさん登場する。だから、イラストの作り甲斐があった。なんたってまだ電気の冷蔵庫がない時代。ゼラチンを使ったお菓子は高級とみなされていたようで、それをケーキ台の上にのせて出したりする。『クリスマスの伝言』にもクランベリーゼリーを外で冷やし固めて作る場面が出てくる。北米でよく見かける「Jell-O」が売れ始めたのは、ちょうど、モンゴメリが『赤毛のアン』を発表する頃だった。

私たちはここから、19世紀のクックブックに目覚め、これで次の冊子を作るべく、時間があるときに調べている。イラストレーターの友達は料理好きなので、当時のレシピどおりにお菓子を再現してくれる。でも、全然おいしくないらしい。