不毛地帯

毎日、世界のあちこちにあった帝国について調べています。翻訳作業のために下調べしているのに、今日もリヴィウ(ウクライナにある)っていいところだな、コロナが落ち着いたら行ってみたいな、と長い間(ネット上で)すてきな建造物を見る旅をしてしまい、気が付けば仕事がはかどっていませんでした。

私の頭の中は、帝国や帝国主義のことでいっぱいで、仕事していない時間には山崎豊子の『不毛地帯』を読んでいます。戦前の軍事教育を受けた優秀な軍人って、戦後どういうところで何をしていたのだろう? と気になっていましたが、それに答えてくれる内容です。何度もドラマ化されているので、ここであらすじを話すまでもないですが。

毎年、夏の今くらいの時期になると、第二次世界大戦中の日本を描いた映画が見たくなります。市川崑の『野火』を見ようと決めてはいるのですが、内容が内容だけに、ホットドッグなど肉を食べながら見るのも憚られ(人肉を食べる話が出てくる)、まだ見ていません。その代わり、ドナルド・リッチーがこの映画について話しているインタビューを見ました。「実際に戦争を体験した世代が生々しくそれを覚えている時代にこういう映画は作られるけれど、今の日本ではこういう映画は絶対に作ることができない」と言っていました。時代が流れているってことですね。『不毛地帯』もそんな小説。

I’m melting

私の住んでいる北国では、30度を超える日はそんなに多くはないですが、30度を超えようものなら、「暑い暑い!」と騒ぐ人が半分、長い冬のつらさを思い出して「夏を楽しめ!文句言うな!」とたしなめる人が半分、といった印象を受けます。しかし往々にして、「暑い」という言葉は繰り返されると、うっとおしいものです。

そこでもう少しポジティブに「I’m melting!」と言ってみることを提案。「溶けてしまいそう!」の意味です。結婚式でバージンロードを歩くとき、感動で足がすくみ、せっかくのお化粧が流れるほどの涙を流してしまいそうなときには、down をくっつけて「I’m melting down!」と言うのもありです。

食料品を両手に抱え、お母さんが帰宅する。お母さんは汗をだらだら流しながら、「溶けそうやわ!」と一言。それを聞いた子どもは、「そうか、お母さんは溶けるほどに暑いのか」、よし、ここはひとつ、うちわであおいであげよう…… と親孝行。

お母さんも決して、「I’m melting! Melting! Melting!」とこれ見よがしに何回も言ってはなりません。人前で(←ここ重要)ドラマチックに「I’m melting!」と一言発し、買い物袋をドサッと床に置く、これだけでいいのです。

「Melting」と言えば、「Melting Snow」を「残雪」とか「なごり雪」と和訳したりしますが、逆転の発想は、翻訳の基本技術のひとつでもあります。

ところで、今回動画に使ったミニチュアのオレンジジュースは、最近買ったものです。まねっこのぬいぐるみたちには小さすぎます。ミニチュアの世界では縮尺が重要なのです。

長考:Go to Travel

Go to Travelについてしばらく考えてみた。翻訳者の視点で。家人や友だちのコメントも含めて考えた。英語圏でもキャッチコピーは文法を無視することはよくある。キャッチーにするには、当たり前なのだと思う。友だちの旦那さん(アメリカ人)が「Jane the Bakery」という店の名前が文法的に間違っていると憤慨していると聞いた。文法的に正しいのは「Jane the Baker」だから。「Jane the Baker」だとなんとなく、「David the Sheppard」みたいに聖書の一節とか昔話が始まりそうな響きがあるような気がする。「Jane’s Bakery」にするって手もあるけど、それは既に誰かが使っていそうだし、「ステラおばさんのクッキー」みたいに、やや使い古されたイメージがある(私がそう感じるだけかも)。

「Go to Travel」にネイティブスピーカーが感じる不思議さは、言葉の「重複」にあると思う。Go+Travelの。おそらく日本人は気づいていないけれど、海外の英語のネイティブスピーカーは気づいている。今に始まったことではなくて、昔からだと思う。

たとえば、ひかり新幹線を英語では、Hikari Super Expressと呼ぶ。「Super か Express のどっちかだけでもよくない?」と思ってしまう。スーパークールビズも「クールだけで十分わかるけど……」、スーパーグローバル大学創設も「超グローバル???」と、その気合いは十分すぎるほど伝わってくるネーミングで、むしろほほえましい。『となりのサインフェルド』には、主人公ジェリーが日本のテレビ番組「Super Terrific Happy Hour」に出演するというエピソードがある。90年代の話なので、その頃から、少なくともアメリカ人は日本人的な英語の使い方に気づいていたのだと思う。つまり、日本的な英語用法が確立されている。

ちなみに、私の母親が生まれた地域では、標準的な日本語なら「とても大きい」と言うところを、「おっきいおっきい」と二度繰り返す。例文を挙げると「きょうなあ、おっきいおっきい西瓜もろてん。おっきいおっきいねんでぇ~!」。大人も男女を問わず使っていたので方言なのだと思うけど、すごくかわいらしい表現だなと幼心に思っていた。ついでに言っとくと、お姉さんが2人いる場合、年の大きいほうのお姉さんは「おっき姉ちゃん」になる。お姉さんが3人いる場合は…… まだ会ったことがないから、わからない。

てなわけで、「Go to Travel」は私的にはアリ! 英語のネイティブスピーカーに寄せた「完璧」な英語のキャッチコピーを考えはじめないほうがいいと思う。でも、やっぱり、日本人に呼び掛けるときは日本語でいいんじゃない? って思うので、私だったらどういうのにするか考えた。

「たび2で4」

You’ve asked for it

4月に撮りためた動画が底をついてきました。まだ何本か撮影はしてあるけど編集してないし、ネタ帳にはネタもいっぱいあるけど撮影してないし…… はい、今回の動画は「身から出た錆」「自業自得」がテーマです。

またしても「Go to Travel」に関して英語警察が出動しています。文法が間違っているとか、英語ネイティブはそんな言い方しないとか…… それより、日本政府が日本国民に向けて発している言葉なのに英語はやめたほうがいいんじゃない? いや、そんなこと言ってないで自分のできる範囲で観光業を助けてあげれば? と思う私です。

この「Go to」で思い出しましたが、私の住むオンタリオ州の車のナンバープレートには「Yours to Discover」と書かれています。「オンタリオ州は君のもの、だけど、オンタリオのどんな魅力を発見するのかは君次第」という意味です。つまり「車であちこちぶらぶら出掛けて行って、自分でいろんな発見してね」というゆるい標語です。「ああ、出かけたい!」と思わせる言葉だと私は思います。

ちなみに、今、私がすごく行きたいところはロンドン(+イギリスのあちこち)です。何回行っても飽きない(シカゴについても同じことを言っていますが)。

No Need To Butter Me Up

誰でも褒められたい。褒めてほしい。

しかし褒め加減も重要です。度を越すとおべっかやごますりになり、裏には何かあるのでは? と勘ぐってしまいます。ティーンエージャーの頃、毎日のように私の容姿をしつこいほど褒めてくるクラスメートがいて、「ふ~ん」「そんなことないよ」「ありがとう」のバリエーションでひたすら返していたのですが、ある日、本当に嫌になって、「そーですが、何か?」的な言葉を返したところ、痛い目に遭いました。大人になった今でも「なんであのとき我慢ができなかったのかな」と思います。本当に、褒めるほうも、褒められるほうも、加減が…… 自制心が求められるのです。

「You don’t need to butter me up. 」は「おべっかなんて使わなくていいんだよ」です。おべっか、ごますり、ご機嫌取り、どれでもいいですが。

それはさておき、この動画に出てくる、小さな猫の絵皿に注目。私のアンティーク探しのなかで1,2を争うお宝発見だったのです。もう1つのお宝は、このウェブサイトの「Welcome」ページにあるウィローのミニチュアカップ&ソーサ―。この2つはネットで見つけたのではなく、巨大なアンティーク市場で見つけたのです。