読書会16 – ぼくが死んだ日&魔法にかけられたエラ

9&10月を一緒にした読書会の課題書は、2冊。『ぼくが死んだ日』と『魔法にかけられたエラ』でした。どちらも三辺律子さんの訳で、三辺さんの訳書で一度読書会をしてみたいね、と意見がまとまったからでした。

『魔法にかけられたエラ』は、アン・ハサウェイ主役で映画化もされているので知っている人も多いかもしれません。主人公が想像上の国の言葉に長けている設定なので、これ翻訳にすごく工夫が必要だっただろうな!とみんなでしきりと感心してました。翻訳 in 翻訳ですよね! 

英語の原作が出たのは1997年(?)なせいか、シンデレラの話がベースになっているからのか、結婚が「あがり」なので、今読むと、そこが気にはなりますが。とはいえ、エラにかけられた魔法は、彼女から自由意志をかなり奪い、それを取り戻す話なので、ガールズ・エンパワーメントな話です。

Netflix でやっている「Sex Education」の主人公級の女の子(メイヴのこと)が選ぶ人生はちょっと違う。2023年の女の子のエンパワーメントってこうなんだな、と。エンパワーメントって、個人の内なる力と、自分を認めてくれる外からの救いの手が同時に起きないと難しいですよね。「Sex Education」が秀逸なのは、本来「自分を認めてくれて、手を差し伸べてくれるはずの大人たち」がほぼ全滅してる点かなと私は思います。

と話がずれましたが、どこかで、若い読者はパステルカラーの表紙を好むと聞きました。『魔法にかけられたエラ』はまさにですね!

私の個人的な好みは、『ぼくが死んだ日』でした。普通、怪談といえば、キャンプファイヤーを囲んで、生きている子たちが怖い話をして盛り上がりますが、これは「死んでる子」たちが墓場で集まり、自分がどうして死んだのかを順番に話してます。最初、「あれ、そういう話なの?」と気づいてから、加速的に変な話が続くので、大人で怪奇小説好きな人は、「お!これはあの作品をなぞってる??」みたいな発見の楽しみのある本です。残念ながら、私にはそこまでの知識はなかったのですが、それでも楽しめましたよ!

19世紀に死んだ子や、わりと最近死んだ子もいて、「どの話が一番気に入った??」と盛り上がれる、読書会向きの作品でした。

表紙絵も、大好きなさかたきよこさん作です。もう何回も人にいいふらかしていますが、私はさかたきよこさんが絵付したライオンのこけし、「コケジジ」を持っています。すごく自慢!

読書会11 – しずくの首飾り

2月の読書会の課題書は、ジョーン・エイキンの『しずくの首飾り』(稲熊葉子訳)。「収録されている話のうち、どれが好き?」というありきたりなふりから、どんどんとダークな方向へ会話が進むのが面白かったです。子どものために書かれた話は人間の闇を引き出しますよね。

ジョーン・エイキンを読むのは初めてだと思っていたのに、どの話も聞いたことがあるような既視感がありました(読んだことを忘れている可能性もある)。どれもすてきで、ちょっと苦みのある話ばかり。表題の「しずくの首飾り」には、少女時代に必ず遭遇する嫉妬心の強い、いけずな女の子が登場します。いえ、誰もがそういう意地悪になる時期があると言ったほうがいいでしょう。

「空のかけらをいれてやいたパイ」は、空飛ぶパイが、途中、いろんな動物を拾っていくお話。最後は巨大な動物が乗り込んで、みんなでにぎやかに飛んでいく。動物どうしだと落とし合いが起きないのも、王道的なシャングリラ。

「三人の旅人たち」は、砂漠の中の駅で働く三人の男の話。駅としての施設は整っているのに、電車がとまらず、誰も乗り降りしないという設定が、「どこか遠くへ行きたい」という気持ちをかき立てます。

「たまごからかえった家」は、バーバ・ヤーガというスラブ民話の魔女が住む家に似ていると、読書会の人たちが言うので、みんなでウィキペディア検索。フィンランドのサーミ人が住んでいた高床式の家にそっくりで、民話はいろんなところへ伝わって少しずつ形を変えていくのだなと実感。

影絵みたいな絵は、ヤン・ピアンコフスキー。

私はさらにジョーン・エイキンの『ルビーの詰まった脚』(三辺律子訳)も読んでみました。こちらは一篇がもう少し長めで、対象年齢が上。『秘密の花園』くらい?? 怪奇要素があって、なかなかよかったです。表紙絵はさかたきよこさん。私、さかたさんが絵を付けたこけし持っててファンです。

みなさん、本にお金をつぎ込んでいるので、最近、「こっちの本のが安いね」と値段で課題書が決まることが多いような(笑)