ウソ日記1

山形でトミヤマユキコさんの講座がある。7日間ウソ日記を書くという課題らしい。本当は受講したかったけど、できないから、代わりにここに7日間ウソ日記を書く。全部がうそっぱちとは限らない。

5月22日月曜日

信号待ちで、お姉さんなのかお兄さんなのかわかりにくい人に遭遇した。たぶんお姉さん。ジムへ行く途中で、上下黒のエクササイズウェアをキメてるのはいいけど、顔が厚化粧。よくインスタグラムやTIKTOKで見かける変身動画くらい。「まさかこの人がこんなに美しく?!」っていうメイクで化けるやつ。しかも姉さんはたばこをふかしてる。じろじろ見るつもりはなかったけど、見るなってほうが無理って相談。性別がわかりにくいと最初に思ったのも、このメイクのせい。だけど、別に好きにすればいい。

ふと足元を見たら、姉さんの靴は左右で色が違う。……ま、そういう靴もあるんだろうか。いいじゃない、おしゃれで。昔、夜中にバイクに乗ろうとヘルメットをかぶっていたら、知らない若い男がいきなり、力任せにショーウィンドウを石で割りはじめたことがある。目の前でガラスがメリメリと割れていった。でも、男は逃げていった。誰かが警察を呼んだから。目撃者の私は、「男は左右で色の違う靴を履いていました。片方は黄色でした」と証言した。警察に「こんな遅い時間にバイクに乗ってどこへ行くところだったの?」って聞かれたけど、「どこって家に帰るに決まってるじゃないですか」。そこへ、聞かれてもないのに同行者が「あ、でも僕たち飲んでないですよ」って虚偽の発言。なんでわざわざそんなことを警察に言うの?とあとで口げんかになった。同行者が嘘つきで小心者だと発覚したことのほうが、私にとっては事件。姉さんの靴のせいで、昔の記憶が蘇った。

信号が青に変わって、姉さんは人混みに消えていった。すたすたとすごく斜めに道を渡っていった。姉さんらしい。

私も一日がんばりまフ。

翻訳勉強会 – 二つの旅の終わりに

コロナ禍を機にYA翻訳の勉強会に入り、エイダン・チェンバーズ作、原田勝訳の『二つの旅の終わりに』を少しずつ訳してきた。気がつけば2年以上経っていて、この小説のラストに近づいている。

なかなかに奥深い小説で、大人も十分に楽しめる。すぐに自意識をこじらせては考え込む思春期の少年が主人公で、彼の心の成長に第二次世界大戦がかかわって、少年は理不尽なことをいろいろと知る。現代はこの少年の語り、第二次世界大戦の過去は年老いた女性の語りと二重になっている。

この小説を部分的にあちこち訳してみて、改めて思い知ったが、話は重要であればあるほど複雑。現代は「すきま時間の活用」だとか「時短」なんて言葉が躍る時代だけど、そんな時間でわかるような問題じゃない!本当は何かをじっくり考える時間、考えている間に時間なんて忘れるくらいの経験が大切なんだよ。

私はかたい内容のノンフィクションを時々訳すので、著者が「すごくややこしい問題を考えることを読者に促す」ために、どういう章立てをして、どんな具体例をどれくらい、どのタイミングで盛り込んでくるのかについてよく考え込む。原文の文章が緻密であればあるほど、「ここに誤解されたくない、言いたいことがある? 煙に巻こうとしてる?」と思って読み返す。『二つの旅の終わりに』を訳していて、そういう作業は文芸もノンフィクションも同じだなと思った。

今、気候変動の本を訳してる。過去にいったん遡って、徐々に現代に近づく手法で書かれていて、文章が緻密。そういところも『二つの旅の終わりに』と似てる。似てるっていうのは変に聞こえるかもしれないけど。

そんなわけで、最近は家人と気象現象の話をする。私よりは断然科学に詳しいので。昨日は「成層圏(stratosphere)」の話になり、「昔は、<え?まじで?何それ?>みたいなことを stratospheric と言っていたが、今は誰もそんな言葉を使わない」と教えてもらった。

ChatGPTに訊いてみたところ、いろいろと例を挙げてくれた。

  • stratospheric prices=めちゃくちゃ値段が高い
  • stratospheric salaries=めちゃくちゃ給料が高い
  • stratospheric success=超すごい/すげー、やるじゃん
  • stratospheric leaps=超すごい/すげー、やるじゃん

今はもう「成層圏ぐらいで威張んなよ」ということで、使われなくなったのだろうか。

原書はこっち↓↓↓