様々な仕事がブルシットジョブと呼ばれたり、エッセンシャルワークと呼ばれたりする。前者は充実感を覚える仕事でないわりに給料が高く、エッセンシャルワークはやりがい詐欺かと思うほど、報酬が見合わないことも。結局、おまんまか、やりがいかのせめぎ合いなのか? そんなわけで、去年から労働の本を物色していた。中でも、『富豪に仕える』がおもしろすぎた。
雇用関係はそもそもいびつ。そのいびつさを死守したい貴族的富裕層の雇用主は、雇われ人をひどく扱わない。しっかりとした報酬を渡し、なんなら雇われ人の家族の面倒まで見て、彼らを立派に成長させるのがステータス。周囲の富裕層にひけをとらないことが何よりも大事なのだ!
雇われ人のほうも、自分が決して言ってはならないことや、超えてはならない境界線を心得ている。富豪と自分を重ねがちであっても、対等ではない事実をいつ何時も忘れない。
しかーし、富裕層で使用人を複数抱えていると、彼らの管理が「妻」にのしかかり、使用人同士の揉め事などに振り回されるらしい。そうか、そうなのか。じゃあ、家事ロボットでいいわ、私は!
この本を読んでいて、バラ好きが高じて、「バラの世話人」を雇った人の話が出てきた。「バラの世話人」はバラに読み聞かせをしたり、話しかけたりするのが仕事。このくだりを読んで、真っ先に「キャンディ・キャンディ」を思い浮かべた私は昭和生まれだ。
実は去年、欧米で起きている労働問題を横断的に伝える本を日本に紹介しようと思った。でも、成功しなかった。メディア業界の中枢にいる友人に、「これ売れると思う?」と訊いたら、「網羅的な本は売れない」とはっきり言われた。そうか、そうなのか。
『富豪に仕える』の何が私に刺さったのか。「富豪」という実際には見たことのない世界の人々の生活を垣間見たい好奇心もさることながら、生活のために働かない、家事も子育ても税申告も資産形成もホテルの予約も自分でやらず、専門家にやらせる富豪生活への「憧れ」だね。でも、この本を読んで、富豪は結構です、と心から思うようになりました。
最近の悩み
あれとこれは毎日やろうとしているのに、していない。
それなりに、年老いた親のことを考える時間が長くなった。
今週の見た、聞いた、読んだ
『The Bear』。邦題は「一流シェフのファミリーレストラン」。レストランの厨房の話なので、見ているこちらも落ち着かないくらいに戦場。シカゴが舞台だし、いろいろと面白い。アメリカのドラマだけど、イタリア系の家族と食べ物好きな人たちの話なので、おいしそうなご飯のシーンが多くて、お腹が空く。
Freakonomics でここんとこずっと、アメリカの移民についての統計データとか、アメリカとカナダの移民政策の違いとかを配信してる。不法移民はアメリカの低所得者層の給与を押し下げるけど、合法移民はアメリカの中産階級より給料も高く、金持ちだとか、移民一世は経済的に苦しいから、受け入れ国の経済負担が大きいけど、二世になると逆転して、社会への経済的貢献度が高くなるとか。日経新聞の「やさしい経済」でも国際労働力の移動と移民政策についての連載があって、とても興味深く読んでいた。
