Y日記32

今年はじめての吹雪だった。ピックルボールの帰り道、駅の改札をくぐるあたりから、床に真っ赤なペンキがポタポタと落ちていて、ずっと駅の構内にも続いていた。ペンキだと最初は思ったけど、なんとなく悪い予感がして、なるべく踏まないようにしていた。

「おい! あんたの頭から血がダラダラしたたっとるぞ!」と駅の人の声が聞こえた。ただごとではない雰囲気がして、声のほうを見たら、どこかの工事現場の仕事上がりのような男の人がいて、頭も顔も、ダウンジャケットも、赤い血に染まっていた。目もあけられないみたいで、目をしばたいているのが見えて、心底ぎょっとした。それにその人は「ああ?」くらいの短い言葉を返した。

じろじろ見たらいけないと思って、そそくさとその場を去ったけど、あんなに血だらけの人、ハロウィーンの仮装のときしか見たことなかった。何があったんだろう。雪ですべって頭をどこかにぶつけたのかな。自分が血だらけだとは言われるまで気づいていなかったみたい。

その人の血は、少なくも床に落ちていた血の色は明るい赤だった。血ってもう少し黒みがあるんだと思っていた。静脈血と動脈血でも色が違うらしい。

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