今年もY日記は続ける所存だけど、もっと日記らしく書こうと思う。
今回の一時帰国はリベンジだった。去年夏は東海道新幹線が数日間不通となったせいで東京どまりだったから。実家に無事行けたが、庭にある灯籠がピサの斜塔のように傾いていることに気づいた。地震でそうなったらしい。母親にこのことを伝えると、「あの灯籠の下に生える草を毎回決死の覚悟でむしっている」とのん気だった。自分では手入れができない木を短く切ってもらったせいなのか、木の数が減ったからなのか、灯籠だけでなく庭石もやたらと目立つ。友人が何億年もすれば全部土に還ると言うので、安心して放置することにした。
家族で京丹後をはじめて旅した。京都市内に10年近く暮らしたというのに丹後鉄道を利用したことがなかったから、すべてが物珍しかった。「丹後の海」というレトロ列車に揺られ、天橋立を横目に日本海側へ行き、カニづくし料理を堪能した。カニをがつがつ食べる姿は人に見られたくない。温泉宿であるからして温泉に入ったけれども、メガネを外すと何も見えない。温泉はそれほど好きではないのだ。
関西を後にして、東京へ戻った。定宿が遂にチェックイン用の機械を3台導入し、そこで日本のサラリーマンのおじさんが3人、揃いも揃って機械と悪戦苦闘し、ホテルの人が3人がかりで対応に追われていた。この光景を目の前にして恐怖と笑いがこみ上げてきた。隠居生活を楽しまれている人なら、私だって笑わない。企業で意思決定者の地位に就いていそうな方々だったからだ。
大阪と東京でBookpottersの仲間と集まった。今、本や翻訳の話をするのが楽しくて仕方ないのだ。同業以外の人と本の話をしようものなら、「最近、本を読んでいないから」と牽制されて終わりになるが、Bookpottersとなら、延々と本にまつわる話ができる。東京での集まりには豊﨑さんも来てくれて、面白く、ためになる話をいっぱい聞いた。そして、豊﨑さんのエッセイ『どうかしてました』にサインしてもらった。実はこの本を買うのは2冊目。実家でこれを読んでいたら、小4女子に奪われてしまった。小4女子はものすごい勢いでそれを読みだすと、「この人、すっごく変よね。これ、ちょうだい」と言った。犬ん子さんのファンなので表紙も気に入ったに違いないが、一体何がフックになったのだろう。最近の小学生は辛辣なので、豊﨑さんとの親和性が高いのかもしれない。
東京ではひたすら自分のしたいことをした。その1つが、ポッドキャストのシーズン4のフィナーレにゲスト出演してくれたジョルジョ・カンチェーミさんの実家がやっている青山のイタリアンレストランへ行くことだった。姉御にあらかじめ予約をしてもらい、引き合わせたいと思っていた人たちを引き合わせて食事をしていたら、ジョルジョも、そのお兄さんもお父さんも来てくれた。ポッドキャストでも話したけど、お兄さんはイタリアでプロ野球選手だったので、そっちのほうの楽しい話も聞かせてもらった。一緒に行った友だちとカンチェーミ家が実は割とつながっていることが発覚し、「世界は狭い」との思いを新たにした。
姪を出版デビューさせるべく、ふたりで営業活動をしてきた。姪は作りたいもののイメージを伝えるスクラップブックをちゃんと作ってきていたし、受け答えも上手で立派だった。私が思う「上手」は不必要に自分を盛らないでも、聞かれたことに対して端的に答えられる話術のことなんだけど、姪には、まわりくどいことを言って時間を無駄にしたりしない潔さと賢さがあると思った。完全なる「おばバカ」だな。さてどうなることか今後が楽しみ。
単独の営業活動もした。よく人に「行動力がある」と言われるけど、私の場合、佇んでいても、いつか誰かが気づいてくれる才能があるわけではないので、自分から動くしかない。
以前から一度会ってみたいと思っていた同業の方とも会うことができた。私なんかよりずっと経験があって売れているので私が言うのもなんだけど、会って話してみると、いろいろと考えや感性が似ていた。物静かで控えめだけど、殻を破りたいという意志があって気が合うと思った。将来的に一緒に何かをしたい。さすがに、初対面でそこまでは言えなかったけど。
歌舞伎町では、とても美味しい台湾料理を食べた。台湾に詳しい友人によれば、昔、歌舞伎町には台湾人コミュニティがあって、昔ながらの店をやっているところは今は減っているとのこと。そんな貴重なお店に連れて行ってもらえて感謝!
ようやく村上春樹ライブラリーに行けた! 思ったよりこじんまりしていたけど、山本容子版画展をやっていて、それがすごくよかった。文化服装学院の博物館での「動物柄の服」の展示もよかった。あと初詣してなかったから、小網神社と蛇窪神社にお参りしてきたけど、どっちもものすごい行列だった。おみくじは小吉で、後半にかけて運勢良さげ。
帰りの機内で、日本滞在中に思いついたことを書き留めて、あれこれ策を練ろうと思ったのに、となりに座っていたおじさんがパーソナルスペースという概念をあまり持ち合わせていない人だった。私のスマホやタブレットを覗き込み、挙げ句の果てには私の顔まで遠慮なく覗き込むので、ほとんど何もできなかった。客室乗務員さんに席を変えてほしいと何度言おうと思ったことか。別にセクハラをするわけでもないから微妙だなと11時間も悩み続けてしまった。ばかみたい。
