Y日記20(喪失を味わったときに読む本)

大切な人を亡くし、心にぽっかり空いた穴を埋めたくて何かを読みたいと友人に訊かれた。一瞬、きっと私はそういうとき本を読まないだろうと思った。過去を振り返っても、すごくつらくなったときは、Candy Crush 的なゲームを延々とやり続けていた。「ああ、もう十分やり尽くした……」とゲームアプリを削除する瞬間が、私の復活の日だった。でも、喪失とどう向き合うのかは人によって違う。誰を、何を失ったのかにもよるし、心の傷が癒えるまでの時間も違う。私だって、アプリを削除した日以降は本を読んだ。

自分一人では、目下悲しみに暮れている友人に本を紹介できないと思った。だから、書評講座の仲間、Bookpotters に意見を訊いてみた。みんなそれぞれ、お勧めの理由とともに本を紹介してくれた。なるほど、と思った。そして何かのときに、私はお勧めされた本を振り返りたくなるだろうと思った。私も、そう遠くはない将来に、大きな喪失を味わうだろうから。もしかしたら、誰かの役に立つかもしれない。お勧めの理由は公開できないけれど、タイトルだけ、ここに書き残しておこう。私自身がつらめのときに、よく開く本も入れてみた。

あとで時々、書き足していくかも。「この本もよかったよ」「自分はこの本で救われたよ」とお勧めがあったら、コメントやDM等で教えてください。

そういえば、日本は昨日がお盆だったね。

和書

『ぼくの死体をよろしくたのむ』川上弘美著、新潮社

かなたの子』角田光代著、文藝春秋

『今年の春』(父編) 『今年の初夏』(母編) 『今年の秋』(弟編)、正宗白鳥著(←これって、何に収録されているのだろう?)

じゃむパンの日』赤染晶子著、palmbooks

海外文学

観光』ラッタウット ラープチャルーンサップ著、古屋美登里訳、早川書房

いずれすべては海の中に』サラ・ピンスカー著、市田泉訳、竹書房

さりながら』フィリップ・フォレスト著、澤田直訳、白水社

回復する人間』ハン・ガン著、斎藤真理子訳、白水社

海外文学(絵本)

ドクロ』ジョン・クラッセン著、柴田元幸訳、スイッチ・パプリッシング

Y日記19

なんか今週はうれしかった。

『かわいいウルフ』を読んで勇気が湧いた。あれだけのものは私一人では作れないけど、勝手にやる気が湧いた。別件で、ひょっとしたら次につながるのではないかと思えることもあったし、日本滞在中の予定を立てているだけで楽しい。

だが、時差を失念し、まだ空の上にいる時間に人と昼ごはんを食べる約束を入れていた。気づかなかったら、大変なことになっていた…… このポカミスが発覚してから、すべての予定が1日本当はずれているのではないかという強迫観念に襲われ、気が気でない。

ある通訳さんが「通訳も翻訳もやりなさい」の記事を書いたと投稿していた。それを見て、かつて通訳に手を伸ばした頃のことを思い出した。着物ショーのバイリンガル司会(自分も張り切って着物を着てしゃしゃり出た)、QMS調査(疲れすぎて、最後の最後で日本サイドの人に英語で話しかけた)、解剖学の授業(死体の前で通訳)、原爆被害者の証言などをやったが、私はやらかし系なのかもしれないと思い、通訳は無理だと思った。

言語がらみの仕事をずっとしているけど、今の出版翻訳がいちばん自分には向いている。

はじめて、このウェブサイトから仕事が舞い込んだ。このドメインを取得して、このウェブデザインにして、6、7年は経っているはず。こんなことってあるんだね。内容もニッチで興味深かった。

Y日記18

一時帰国の大型荷物ハックとして、IKEAのあの青いバッグ+段ボール箱がいいと聞いたので、IKEAへ行こうとしたら、地下鉄の駅の出口で若干迷った。出口は2つしかなくて、どっちから出たほうが歩かずに済むかで迷っていただけだが、フィリピン系と思わしきおばさんに

「あんたどこ行くん?」

と声をかけられた。こういう親切をふりまいてくれるのは、だいたいフィリピン系の人よね、ちょっとほっこりする。

しかし、私はノイズキャンセレーションのヘッドセットをし、ポッドキャストを聴きながら迷っていたのだった。おばさんの声はあまりキャンセレーションされなかった。目の前で身振り手振りで声をかけてきたのもあるけど、おばさんは特殊な音域の声を発したとか?

「IKEAに行きたい」

「IKEAは上にある」

知っとるわい!と思ったけど、親指を立てて「いいね」のポーズをしてその場を去った。

IKEAのバッグは1個$1.5くらいだったので、2つ買い、せっかくここまで来たんだしと要らないものまで買い込み、完全にIKEAの罠にハマった。

帰りにマクドナルドのそばを通ったので、そういえば、「最近ここでも10ドル超えは当たり前」と聞いたことを思い出し、店内に入って、タッチパネルでフィレオフィッシュのセットを注文するふりをしたら、12ドル超えだった。

それだけ確認して店を去った。


猫がリビングで粗相をするようになった。アマゾンの空き箱が好きなので、空き箱を置いておいたら、そこをトイレと勘違いしたらしい。猫にも認知症があるので、それかも?


週末、Bookpotters の読書会で、『死んでから俺にはいろんなことがあった』について話し合った。訳者の木下さんも遊びに来てくれて、ポルトガルの文化や歴史をいろいろと教わった。「ルゾフォニー」という言葉を知った。

そーいえば、ピックルボールのコートにポルトガル系の男の人がいて、その人もスキンヘッドだ!

Y日記17

2日間立て続けに、20代男子とピックルボールで対決し、腰を痛めた。

中年同士でプレイをすると、互いに走り回りたくないと思っていることを明らかにするのだが、若くて元気な人たちにはそのような考えはない。彼らは有り余るエネルギーを消費したいのだ。打ち返してくるボールも重く、猛ダッシュしたかと思えば、急に止まったりと、私もつい頑張ってしまう。

ダブルスで組んだ相手が若い男子だと、コートが一気に華やぐ。そのせいで、私は自分が一体何歳なのかを忘れる。腰を痛めるまで。


この間、随分久しぶりにポッドキャストの収録をした。姉御は中年の性愛について語りたかったのだが、今の私はそういうことにまるで興味がないため、薄い反応しかできなかった。確かに、私と同じくらいの年齢でも性愛や見た目の美しさ(体型とか)を非常に大切にしている人はいる。というわけで、二人のちぐはぐな会話をよかったら聞いてください。


1冊訳し終えて、ちょっとぶらぶらしてから、次の本を訳しはじめた。訳しはじめは、スピードが遅い。ま、そんなもんだよね。明日ぐらいからスピードアップすると思う。

超訳したい本がある。びっしばっしと物を言う女性が書いた本。全方位に配慮してばかりじゃだめなんだよ! 持ち込んでいるけど、話が決まってほしい(祈り)。

最近、本のことはインスタで投稿して、スレッドとFBに垂れ流してる。

Y日記16

あくまでもトロントの話だけど、UberとLyftの両方に登録しているライドシェアの運転手から面白い話を聞いた。Uberの利用者が圧倒的に多く、客を下ろしたら、すぐに次の客を乗せるほどひっきりなしなのに対し、Lyftで車を呼ぶ人は少なく、数分に1回くらいだと言う。Uberのほうが大きい会社なのだから、まあ、致し方ない。しかも、運転手的には1マイルあたり、Uberのほうが10セント多く稼げるのだそうだ。私は、Lyftが存続する限り、永遠に利用すると誓った客なので、社交辞令的に「申し訳ないです〜」と声をかけてみた。すると、

「なんでなの?」

と聞かれたので、事情を説明。私は過去にアメリカでUS$300の現金入りバッグを車内に置き忘れたことがある。でも、Lyftの運転手さんにちゃんとそのバッグをホテルに届けてもらった。以来、Lyft派になったのだった。アメリカで$300の現金が戻ってくるってミラクルじゃないですか? 運転手以外にも、アメリカ在住の友人各方面に迷惑かけたけどね。

「ええ話や」

トロントの運転手はつぶやくと同時に、「本当に忘れ物する人が多い。特にスマホ!」と憤りと諦めが混ざったため息をついていた。

先週までの切羽詰まった感じが嘘みたいに今週は小休止だった。だから、寝溜めし、ややこしめのメールを書き、いつもよりピックルボールを長めにプレイし、部屋を片付け、旅行の細かい計画を立てたりしていた。スイス鉄道の料金設定がのみこめず、なぜ部分的にしか座席指定できないのかもわからず、スイス鉄道に電話した。たまたまなのかもしれないけど、控えめに言っても、そのカスタマーサービスのお姉さんは優秀かつ親切だった。

ゼンデイヤの『Challengers』をやっと見た。内容が新鮮で、意外で、しめっぽくなくて面白かった。最後のシーンのコートでの戦いが、『エースをねらえ!』みたいで面白かった。最後のとこだけ、もう一回見た。

先週末は書評講座を開催した。あちこちのSNSで感想書いたけど、ポール・オースターの追悼会という特別企画だったので、いつもとは違う新鮮さがあって楽しく、こういう特別回を時々入れようと思った。私の書評は今回も最下位争いをしていたが、それにももう慣れてきて、逆に話題提供をしているのだ!と自負が芽生えてきた。