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Y日記6

キャラ・スイッシャーの『Burn Book』を読んだ。著者の自叙伝が基軸になっていて、グーグルやフェイスブックが台頭し、ネットスケープなどが消えつつあった1998年あたりから直近までの、「スイッシャーが見たテック業界とメディア業界の歴史」が書かれている。テック史といっても、彼女はテック・ジャーナリストだから、話題として誰もが飛びつけるマイクロソフト、メタ、アマゾン、グーグル、テスラなどの創業者をこき下ろして書いている。こき下ろしていないのはスティーブ・ジョブズだけかも。ちなみに、創業者を引き継ぎ中興の祖としてがんばっている人々や、本当に技術を愛している人々のことは評価している。

著者が本当に言いたかったのは、テック業界のマッチョさや横柄さがあまりにもひどくて、もうテクノロジーを愛する気持ちにもなれなくなってきたことだと思う。新しい技術が飛び出してくる面白さより、巨額の富に飛びつく人の多さや、彼らが政治にまで首を突っ込んでくるのにうんざりしているらしい。訳者が決まっていないなら訳したい!

スイッシャーの本を読みながら私は思ったね、SNSをはじめ、ポッドキャストやユーチューブありの世界では、特に金融やテクノロジー系の情報が垂れ流されて大騒ぎになりがちだけど、「わざわざ本にする価値」があるとしたら、その「大騒ぎ」を振り返り、答え合わせをすることかもなと。答え合わせには「煽り」は不要だし、本当の識者にしかできないし、本を読んで自分が間違っていたと気づいた場合は、部屋で一人静かに反省すればいいだけだし。

私自身の反省点はというと、Redditの元CEOでVC出身のエレン・パオを理由もなく嫌っていたことかもしれない。パオは自分が昇進しないのはジェンダー差別を受けているからだと訴訟を起こして敗訴しているけれども、その騒ぎの最中に、私は彼女のことを「シリコンバレーで富を築いておいて、これ以上何が欲しいっていうの? ふんっ!」と気障りに感じていた。でも、キャラによると、あの世界は壮絶な白人マッチョな世界らしい。ごめんよ、パオ。

女性読者にとっては、舌鋒鋭い著者がテック業界の上のほうで蔓延しているマッチョ文化をばっさばっさと切り、マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクなどを酷評しているのが面白いし、逆に、シェリル・サンドバーグやベゾスの前妻マッキンジー・スコットがしっかりと誉められているのに安心したりする。私はAMDのCEOリサ・スーに敬意を抱いているけど、彼女の名前も一回だけ、心あるテック業界のリーダーとして挙げられていた。もしもリサ・スーの自伝が出たら、絶対に訳したい。

すごくどうでもいいことですが、私はベゾスの新妻ローレン・サンチェスが嫌いではない。私とは違うタイプの女性だとは思うけど、欲望に忠実そうなところを好ましく感じる(勝手な想像)。メラニア・トランプと似たものを感じる(これも勝手な想像)。

この1週間はなんだか冴えなかった。なにもかも投げ出して、ふとんの中にずっといたい気分だった。『SHOGUN』見て、通訳が重要な話な展開になって俄然面白くなってきたのが、今週のハイライトかな。

姉御とシーズン4の収録した。あいかわらずの雑談を垂れ流すこと必至。

今週、最悪だったのがアメリカの銀行に振り回されたこと。詐欺が横行してるせいだと思うけど、もうほんとにオンラインバンキングが使えなくなってきた。スマホ+現地の電話番号+それを受け取る手段がないと無理。

ポール・オースターが亡くなり、古い本を引っ張り出してきて再読中。何冊か持っていたはずなのに1冊しか見つからなかった。

先週末、大豆から豆腐を作って疲れ果てた。豆腐に比して、おからの量が多いので、おから地獄に陥った。がんばって食べてみたものの、顔がかゆくなり、もしかすると食べ過ぎによる大豆アレルギーなのかも。適量を摂取するのであれば、問題はないと厚生労働省のサイトには書いてある。豆腐作りのきっかけは、髪の健康にイソフラボンがよいのではないかと美容師さんとの雑談で盛り上がったからだった。髪の健康を取り戻したい!!大豆と頭皮マッサージ以外に即効力のある方法はないものか?

「今週の日記」あらため、「Y日記」5

「今週の日記」では普通すぎるので、「Y(ワイ=私)」日記と呼ぶことにする。くだらないダジャレ。

『オリンピア』を読み終えた。胸が締めつけられたね、いろんなところで。トロントよりもモントリオールのほうが栄えていた時代からはじまるから、トロント近郊の描写が牧歌的。今はもうそんな雰囲気はない。それもあって、少し寂しかった。静かなのにぐっとくる話だった。オンタリオ州のこのあたりに住んだことのある人全員におすすめしたい。インスタでは既におすすめした

この小説で、「ああ、そうだよね……」と思ったのが、時代によってどこから移民が来るのかが違うということと、家庭内での母語と訛りの抜けない英語の切り替え。この小説は、ドイツ系カナダ人の家族が描かれているので、第二次世界大戦がはじまるころのドイツ社会がこの家族に影を落としている。

今カナダは移民を受け入れすぎた結果の人口増に悩まされている。高学歴で英語と仏語が話せると有利になるポイント制の移民政策をとっているため、工事現場、農業などで深刻な人材不足が起きているのに、必要な労働力を賄えていない。そういうわけで、留学生の受け入れに制限がかかっている。移民政策とはなんぞや、とカナダにいる誰もが考え込んでいる気がする。

映画『関心領域』をやっと見た。建造物とその配置が重要な映画。壁も建物も四角い。見たいものだけを見て生きることができてしまう「今」な話でもあるよね、と思った。

仕事で第一次世界大戦がはじまる頃から第二次世界大戦がはじまるまでの歴史を調べているうちに、どうしても見たくなり、『ラスト・エンペラー』を久しぶりに見直した。1987年の映画! ジョン・ローンは弁髪姿でもボロボロの姿でも美しく、根っこを生やすところがまるでない最後の皇帝にぴったりだなとあらためて思った。ラストシーンの「浦島太郎の玉手箱」感のある消え方も好き。

アップルペンのそっくりさんタッチペン購入。すぐ物をなくす私としては、アップルペンやAirPodsのようなものにはなかなか手が出せない。が、背に腹は変えられない。家人の本物ペンと比べたけど、「安っぽいプラスチック」であること以外、変わらないと思う。ちなみに家人は既に2本紛失していて、現在3本目。「おらのペンは27ドルだぞ!」と威張り散らしてやった。

ポッドキャスト「Talk Easy」で、詩人ルピ・クーアの回を聴く。来年30歳になるらしい。まだ30歳になってない!? 年齢差もあると思うけど、最初彼女の詩を読んでも「ふ〜ん」だったのが、若くして大成功して、いろんなプレッシャーに耐えて、という話をしているのを聞いてちょっと好きになった。結構男尊女卑なパンジャビ文化を跳ね返しつつも両親を受け入れるこの強さ、このレジリエンス。一度、彼女のパフォーマンスを生で見てみたい。

ようやく『SHOGUN』を見はじめた。まだ1話。う〜ん、どうなんだろう。でも見続ける。

ハン・ガンの『別れを告げない』の訳者あとがきを読み、歴史情報の消化でいっぱいになった。本文は来週から読むことにする。今週は、ゲラチェックのせいで気持ちにやや余裕がない。

お口直し的に『夏のサンタクロース』を読んで、ほんわかする。

今週の日記4

日本の友だちから「さくらおみくじ」なるものが届き、中吉と出た。でも、「成果、美貌、魅力、人生、才能、努力」が花ひらくのを願う、欲張りなお守り入りで、気持ちがあがった。

ドバイの暴風雨の映像を見て、わたしのおしゃれウィッグはあれに耐えられるだろうか、と不謹慎にも思った。

Bookpotters の新しい企画会議があった。今すぐにはエンジンがかからないかもと不安がよぎったが、今種を蒔いておけば、夏以降にそれをバネに活動ができるじゃない? と自分を奮い立たせてみた。どうなるかな?

デニス・ボックの『オリンピア』を大切に少しずつ読んでる。越前さんの訳者あとがきが胸アツすぎて、ささっと読むのは忍びない。美しいお話だ。地元だから風景や距離感もなんとなくわかるし。昔はもっとのんびりとしたところだったんだろうなと想像しながら読んでる。

先週買った鯨の本を少しずつ読んでる。図鑑を買って大正解。イラストと図がないと、イメージわかない。マッコウクジラがダントツで好きだけど、その巨大さを表すために描かれていたコガシラネズミイルカも好きになりつつある。大きくてわたしくらいのサイズらしい。親近感。

同業者から半導体関係の本を頂いた。半導体業界に足を踏み入れたとき、略語の多さにびっくりしたけど、そのときに知った略語がタイトルの一部になっている。これから読む。不況に入ったときから次の救世主が現れるまで(新技術か新応用が発見されるまで)の半導体業界が面白いよね。どこの業界もそうだと思うけど。

翻訳が速い、とはじめて言われた。孤独な作業なので人と比べることもないし、自分ではわからないけど、ここからさらにスピードを上げたいなら、やらねばならないことはわかっている。SNS禁止だ。

今週の日記3

4月6日は書評講座だった。6回目だし、そろそろうまくなってるだろうか? と思いきや、そうではなかった。自戒を込めて、ここに Before & After をさらしておく。いろいろな話や意見が聞けてよかった。

今回、自分の書評をトップバッターにしてみた。いつもは到着順に並べているのだけど、選ぶ特権を私は持っているので、「一度くらいは、フェアに自分をトップバッターにするか」と思ったのだ。やってみて思ったが、最初に切られるのはつらい。みんなやる気満々だから。書評13あたりになると、全員エネルギー切れになる。

書評講座から読書会のアイデアが出てきて、それもいいなと始動中。活発でいいね。こじんまりしているから、動きやすい。

4月8日。皆既日食を家の中から観察。トロントは、太陽が完全に月に隠れる割合が99.9%だったので、100%の地域に比べると、それほど暗くはならなかった。0.01%の差、おそるべし! 太陽が欠けていくときに、うちの猫を観察したが、興味なさそうに昼寝していた。

寝ても寝足りない。眠たいのに翻訳しても、あとでやり直すだけだから、締め切りが近づいていなければ寝る主義だけど。春だから?

くじらについて勉強することにした。いろいろな方に「おすすめ」を紹介してもらい、3冊、しっかりと学べそうな本を入手。ついでに、魚のジグソーパズルも買い、本を読む前に、まずはそっちをやった。

「同人誌と商業誌の違いは、あなた的にはどうなの?」とSNSで聞かれ答えようとしたが、これは簡単には答えられる問題ではないなと。悩んで「今はこうかな」と結論を出したことを、特に同人誌を出そうと考えているわけではなさそうな人(知っている人だったけど)にSNSで答える必要もないかと思って、投稿を消した。これはやってみないとわからないことだし、もとより、夢みたいなことにお金を投入する性質があるかどうかにかかわってくると思うし、私が関わっている同人誌はグループでやっていることなので。

『The Bear』のS2E6にジェイミー・リー・カーティスがカーミーのマンマ役で出てくるけど、すごかった。ぜひ見てほしい。

今週の日記

様々な仕事がブルシットジョブと呼ばれたり、エッセンシャルワークと呼ばれたりする。前者は充実感を覚える仕事でないわりに給料が高く、エッセンシャルワークはやりがい詐欺かと思うほど、報酬が見合わないことも。結局、おまんまか、やりがいかのせめぎ合いなのか? そんなわけで、去年から労働の本を物色していた。中でも、『富豪に仕える』がおもしろすぎた。

雇用関係はそもそもいびつ。そのいびつさを死守したい貴族的富裕層の雇用主は、雇われ人をひどく扱わない。しっかりとした報酬を渡し、なんなら雇われ人の家族の面倒まで見て、彼らを立派に成長させるのがステータス。周囲の富裕層にひけをとらないことが何よりも大事なのだ!

雇われ人のほうも、自分が決して言ってはならないことや、超えてはならない境界線を心得ている。富豪と自分を重ねがちであっても、対等ではない事実をいつ何時も忘れない。

しかーし、富裕層で使用人を複数抱えていると、彼らの管理が「妻」にのしかかり、使用人同士の揉め事などに振り回されるらしい。そうか、そうなのか。じゃあ、家事ロボットでいいわ、私は!

この本を読んでいて、バラ好きが高じて、「バラの世話人」を雇った人の話が出てきた。「バラの世話人」はバラに読み聞かせをしたり、話しかけたりするのが仕事。このくだりを読んで、真っ先に「キャンディ・キャンディ」を思い浮かべた私は昭和生まれだ。

実は去年、欧米で起きている労働問題を横断的に伝える本を日本に紹介しようと思った。でも、成功しなかった。メディア業界の中枢にいる友人に、「これ売れると思う?」と訊いたら、「網羅的な本は売れない」とはっきり言われた。そうか、そうなのか。

『富豪に仕える』の何が私に刺さったのか。「富豪」という実際には見たことのない世界の人々の生活を垣間見たい好奇心もさることながら、生活のために働かない、家事も子育ても税申告も資産形成もホテルの予約も自分でやらず、専門家にやらせる富豪生活への「憧れ」だね。でも、この本を読んで、富豪は結構です、と心から思うようになりました。

最近の悩み

あれとこれは毎日やろうとしているのに、していない。

それなりに、年老いた親のことを考える時間が長くなった。

今週の見た、聞いた、読んだ

『The Bear』。邦題は「一流シェフのファミリーレストラン」。レストランの厨房の話なので、見ているこちらも落ち着かないくらいに戦場。シカゴが舞台だし、いろいろと面白い。アメリカのドラマだけど、イタリア系の家族と食べ物好きな人たちの話なので、おいしそうなご飯のシーンが多くて、お腹が空く。

Freakonomics でここんとこずっと、アメリカの移民についての統計データとか、アメリカとカナダの移民政策の違いとかを配信してる。不法移民はアメリカの低所得者層の給与を押し下げるけど、合法移民はアメリカの中産階級より給料も高く、金持ちだとか、移民一世は経済的に苦しいから、受け入れ国の経済負担が大きいけど、二世になると逆転して、社会への経済的貢献度が高くなるとか。日経新聞の「やさしい経済」でも国際労働力の移動と移民政策についての連載があって、とても興味深く読んでいた。