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「カナダを伝える会」

1カ月ほど前にカナダにゆかりのある翻訳者さんを募集して、何人か集まり、7月10日から Note にてカナダの書籍や作家、文化についてメンバーがぼちぼちと発信しています。メンバーも多様です。

先日ユーチューブライブに出演したとき、「カナダ文学の魅力は?」と訊かれたのですが「まだ自分でもよくわからない」と言ってしまいました。そもそもわからないから知りたいという欲求がある。カナダ文学にうっすらと感じていることはあるのですが、まだ読書量が足りないので思いつきで発言をするのもな……とも思ったのでした。

「カナダを伝える会」をやろうと思ったとき、何が「カナダっぽいのか」は一人の人間が説明するより、複数の人が「これがカナダっぽい」と発言したほうが面白いのではと考えました。そのほうが複眼的なので、読者側も情報を押し付けられているというよりは、「そうかもね~」と気軽に感じたり(あるいは「それは違う」とか)、「へえ、カナダにはそういうものがあるのか」と思ったり、自由に取捨選択できていいんじゃないかと思います。

カナダに「カナダ語」なるものが存在するわけではなく、カナダ人は英語かフランス語で書いて世に出しているので、第三者が「この人、カナダ人作家だよ」と言わないことにはカナダ作品であることがわかりにくい。SF小説に非常に詳しい人に、「SF小説が盛んなところはどこですか?」と尋ねたら、2番目にカナダが挙がったので、今、カナダのSFに詳しい人いないかな…… と探しています。あとは、アメリカにはアメリカ南部の独特の小説があるように、カナダにもオンタリオ南部の作家の作品群があります。そういうものも、うまく紹介していきたい。

日本でもそうですよね。小説は標準的な日本語で書かれるけれど、小説に地方色はある。

というわけで、Note を時々のぞいてみてください。ツイッターでもつぶやいています(@writersoncanada)。目印はピンクのビーバーです。それから、「やってみたい!」という人がいたら連絡ください。難しいことなど書かなくたっていいんです、自分の言葉で語りたい人なら是非!

Heat Wave

6月末に、アメリカやカナダの西海岸沿いを熱波が襲い(サンフランシスコ市は相変わらず寒かったらしいが)、カナダのブリティッシュコロンビア州のある町では50度近くまで気温が上昇しました。私の住んでいるトロントは東部にあるので熱波は押し寄せてこず、西海岸の人々を気の毒に思いながらニュースを見ていました。

その後、ニューヨークタイムズのポッドキャスト「The Daily」で、熱波に襲われたオレゴン州ポートランドのあちこちで気温を図った研究者の話を聞きました。

それによると、熱波が襲った3日間、大きな木が生い茂り、道に木陰ができるようになっている富裕層の住んでいる地区の平均気温は、36℃から37℃(それでも暑い!)だったのに対し、木陰を作るような木がなく、雑草とコンクリートむきだしの土地が多いせいで、太陽の照り返しが強い貧困地区の気温は49℃だったそうです。同じ市内でも、約12℃の差! なんとなくそうかな、とは思っていましたが、こんなに違うとは驚きです。木陰の威力ってすごい。そんなのんきなこと言っている場合じゃなくて、当然熱波で亡くなった人は貧困地区に多かったのです。

コロナ禍で散歩が日課になった私は、富裕地区にわざわざ足を運んで散歩しています。緑がたっぷりできれいだからです。超富裕層地域だと道沿いに大木が茂っていて、前庭も広々としているので、ひんやりとしています。が、「最近富裕になってきた地域」だと、前庭部分が車を停めるためにコンクリートやレンガを敷き詰めてあるだけの家がそこそこあり、芝生や木を植えて前庭を作ってある家と入り混じっています。晴れているけれど湿気の多い日など、コンクリートの前庭の家の前を歩くと、モワァ~~~っと生暖かい空気が襲って来ます。なので、「The Daily」を聞いたとき、「やっぱり……」と思ったのでした。

職業設定類語辞典

http://filmart.co.jp/books/playbook_tech/occupation_thesaurus/

フィルムアート社から「類語辞典シリーズ」の新しい辞典が出ました。『職業設定類語辞典』です。翻訳を担当しました。創作のお供に是非!!

私も小説を読むときに、登場人物の「職業」が気になります。最近読んだ『ある一生』というドイツの小説の主人公は、ロープウェイを設置するための基礎工事を担う労働者で、コツコツと自分の人生をひたすら歩む山男にはぴったりの職業でした。私の大好きなジョン・ヒューズの映画『ブレックファスト・クラブ』も『フェリスはある朝突然に』も、登場する高校生たちは学生なので無職ですが、親がほとんど出てこないのに親の職業が背景情報としてとても重要です。ネットフリックスの『クイーンズ・ギャンビット』に出てくる養母も「専業主婦」だったことが、主人公が一気に羽ばたくきっかけになっています。友だちに、最近面白かったドラマのあらすじを話すときにも「主人公は弁護士なんだよね」と、職業は外せないディテールではありませんか?

たとえば、「翻訳者」という職業。

まずは、本が好き、文章を書くのが得意、内にこもるのを厭わない、などの推測ができそうです。

そこからさらに掘り下げて、クリエイター志望なのに、クリエイターにはなりきれない事情(自信がないとか? 職人気質のほうが勝っているとか?)があって、小説家にはなっていない。小説を翻訳しているときに、いつもあら探しをしてしまい、「自分なら、こうは書かない!」と悪態をついている。あるいは、語学能力にコンプレックスがあってそれを克服したくて翻訳をやっているのに、ある日、編集者から「誤訳が散見されます」と赤字で書かれたゲラが届く…… あるいは、どこにもうまく帰属できなくて、二つの文化の狭間にいることにある種の心地よさを感じているところへ、とある団体に所属せざるを得ない事情が発生する、などなど。

「翻訳者」という設定なのに、「超社交的で毎晩出かけている」だと少し違和感を感じます。それなら、「通訳者」という設定のほうがしっくりいくのでは、なんてこともあるのでは。

この一冊で、妄想が広がりますよ!!

http://filmart.co.jp/books/playbook_tech/occupation_thesaurus/

YA翻訳の勉強会

最近、YA書の翻訳の勉強会に入れてもらいました。別にYAを翻訳する案件はないのですが、仕事ではかたい訳文を作ることが多いので、ちょっとやわらかな訳文を作る練習をしようと思い立ちました。意識の高い社会人やクリエイティブ系の大人が読むようなノンフィクションと、中高生が読む本とでは、単語選びも、漢字の開き方も、全然違う。というか、おそらく「海外文学はこれがはじめてです」みたいな読者層に向けた文章の書き方を勉強してるわけです。

ああ、いろいろ勉強になる……。日本語ムズカシイ。

最近、アメリカのラジオ番組で、アメリカ人夫婦に養子縁組されたあと、パキスタンにいる生みの親を訪ねたところ、アメリカに帰してもらえなくなった女性の話を聞きました。

その女性(当時は女の子)は、1990年代にパキスタンからアメリカに帰してもらえなくなり、生みの親に「アメリカナイズされすぎているから再教育する」と言われ、軟禁されてしまいます。「女は本など読んではいけない」とも言われ本も読めなかった。そこで、こっそりなんとか入手したのが『若草物語』だったのです。人がいない時を見計らって、この小説を何度も何度も、丸暗記してしまうほど読んだのだそうです。

紆余曲折を経て、彼女はやっとアメリカに戻ったのですが、その頃には英語も自由に話せなくなっていて、パキスタン流の女性の生き方が身に沁みついていました。逆カルチャーショックを味わい、自分はどう生きていけばよいのかわからなくなったとき、『若草物語』を開いては、あの四人姉妹の生き方(特にジョーの生き方)を参考にしていたそうです。1868年のアメリカ女性の生き方と、1990年代のパキスタン女性の生き方に、わりと共通点があったから参考になったと言っていました。

YAってそういうところあるよな、とラジオを聞いていて思いました。私も『若草物語』のジョーとか、『赤毛のアン』のアンとか、少女漫画の主人公とかを自分に重ねて考えていました(女の子が逆境を克服する話に共感していた)。

話はずれますが、1950年代のニューヨークの広告業界を舞台にした『マッドメン』にはまっていたときも、「職場における男女の位置づけやセクハラの感じが、1990年代の日本と同じくらいなのかな」と思いながら見ていました。私が一番共感できたのは、もちろん「ペギー・オルソン」です。

Sapiens

最近、誰かに読み聞かせしてもらっているみたいにオーディオブックを聞きながら、紙書籍を読むのが気に入っています。同じものを二重に買いたくないので、オーディオブックを図書館で借りるのですが、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』は、なぜか最近までなかなか図書館では借りられませんでした。コロナ禍でみんながこぞって読書していたか、どこかのブッククラブがこれをみんなで読んでいたか……

紙書籍はUK版(カナダの書店で売られている)なのですが、なんとオーディオブックはアメリカ版でした。さらにややこしくしているのは、朗読者がイギリス人なのです。

ホモサピエンスが移動した距離などが紙のほうではメートル法で書かれているのに、聞こえてくる数字はマイルやインチ。限りなくクセのない英語で読み上げているとはいえ、イギリス英語であることは明白なのに、マイルやインチで数字を読み上げる! 全然集中できない! さらに、ところどころ細かい部分が書き換えられています。出版された国が違うからなのか、それとも版が違うからなのか…… 全然集中できない!

最近、KOBOでオーディオブックのサブスクをやるよというお知らせが届きました。図書館は大変にありがたいのですが、(仕事で本を読む場合は特に)待たなければならないのはネックです。KOBOで買ったとしても、オーディオブックがどの英語で、どの度量衡で読み上げられるかは、開いてみるまでわかりませんけどね。

私が訳すノンフィクション書籍では、ユヴァル・ノア・ハラリの著作からの引用が出てくることが多いです。日本語版は前から持っていて、引用箇所の周辺だけちらちら読んでいましたが、通読をしたことがなかった。そこへ、人から「英語版あげる~」と本をもらったので英語で読んでみることにしたわけです。

カナダ人は夏にゆっくり休暇を楽しむ人が多いです(生活にゆとりのある人は、ということなのかもしれませんが)。そのせいか、毎年「Summer Reads」といって、湖畔のコテージでのんびり読書したい人のための書籍リストが出てきます。今年はこちら。日本だと「読書の秋」だから、読書の季節が違いますよね。私は日本にいたときから、読書は夏にしてましたが。