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謹賀新年2025

あけましておめでとうございます。

大晦日にロールキャベツを作りましたが、きれいに巻けなかったので、キャベツとハンバーグを煮込んだ料理と大差ないのではないかという出来でした。ロールキャベツを作ったのは、お正月も忙しいから作り置き……と思ったからなのですが、そのまま室温で放置してしまったため、元旦の今日、食べても大丈夫なのかどうか不安です。ネットで調べても意見は分かれている。忙しいのに食中毒にかかっては元も子もない。というわけで、結局半分を無駄にすることになりそう。まだこの時点で捨ててはいないですが、冷蔵庫にも入れていないので。

去年の振り返りと今年の抱負をば。

去年、刊行された訳書は、『対立・葛藤類語辞典 下巻』と『リベラリズムという妄想』の2冊。訳了したのは3冊で、今年出版されるはずです。そのうち1冊はもっと長く塩漬けになるかもしれませんが。

いちばんうれしかったことは同人誌の刊行です。完売したし、話題にもなったので大満足。今年は第2号を出す予定で、今回も執筆で参加する予定です。一日中、読むか書くかのどちらかなので、ピックルボールのパドルをぶんぶん振り回すことも忘れずにいきたいと思います。

書評講座と読書会も続けます。私が仕事として書評を書くことはないので、去年から、インスタで500字程度のプチ書評を書くことを自分に課しています。想定読者は友人と家族親戚。要約作業も執筆も一種の筋トレです。面倒なので別アカウントを作らず、そのまま他とごちゃ混ぜで投稿してます。これも続ける。

今年最大の目標は、フランクフルトとソウルの国際ブックフェアに行くこと。言語が英語なんだからロンドンのブックフェアに行きなよってかんじなのですがね。ロンドンも考えよう、3月に(遊びに)行こうと思っていたし。1年の間に3つ見るってのも面白いかも! それとも、ソウル→フランクフルト→ロンドンの順番で行くか。

去年、このウェブサイト経由で、ある版元から「こういうのを訳しませんか?」と打診がありました。まったく初めてのことです。その編集者さんは、私の訳書に目を通してくださって「この人ならこれを訳せる」と思って連絡をくれました。もっとこんなかんじで仕事が降ってこないだろうか。私の起用を考えている編集者さん、お気軽にご連絡ください。お待ちしてます。このウェブサイトを用意しておいてよかった。

目下翻訳中のこの本は、機械化とファストファッションに駆逐され、消えゆく洋裁技術を記録したもの。ものすごく複雑な作業工程を記してあるので訳すのは大変ですが、私にはとても興味深い内容。調べ物をしているだけでいつの間にか何時間も過ぎていく、という日々を過ごしています。版権の購入も紙代も高くなり、AI翻訳も精度を高めるなか、いろいろと厳しいことが言われる翻訳業界に身を置いているので、明日は我が身と思わなくもないですが、世の流れと逆行する「蛮族」として生きる道を模索していきたいものです。

……とここまで書いて、舞台芸術の分野で仏語と伊語の翻訳・通訳をされている平野暁人さんが note に書いた記事を読みました。分野と言語が違うので私の現状には当てはまらない点もあるものの、今のAIには決して持ち得ない筆力で書かれているところに心を揺さぶられました。多くの人に読まれているようで、さまざまな反応を読みつつ、考えさせられています。

今年も自分にやれることをやっていく所存です。

2025年もどうぞよろしくお願いいたします。

Y日記34

ブログのような場所で日記を書いている人がまた増えている気がする。「日記」という形式が流行っている。同業の人が書いていた短文をよく読んでいたけど、「うまい!」といつも思っていた。きっと翻訳もすごくうまいんだろうな。

来年からこのY日記をどうしよう。何か目指すもの(または目指したくないもの)があったほうがいいよねと思い、ブログでFIREした人の本をポチりそうになった。ポチりそうになったということは、やっぱりお金を稼ぎたいってことなのだろうか……? 

今後をつらつらと考えるのも年末だからだね。来年はどうしようか。私のビッグな目標は決まっている。ソウルとフランクフルトの国際ブックフェアに行くのだ。いろいろな人と話しているうちに俄然行く気になり、フランクフルトはとりあえずホテルを押さえた。2年くらい前に行ったから、中央駅から見て何がどこにあるのかはまだ覚えている。問題はソウル。1994年以来行ってない! 近頃、翻訳のこととなると暴走気味の自分をとめることはできない。今ピックルボールに狂い咲いているのと同じで、モメンタムってやつですな。

モメンタムといえば、先週、伊藤詩織さんのドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』を見に行った。たまたまSNSで見かけて検索したら、1日だけトロントで上映されることを知り、それが翌日だったので、思い切って行ったのだけど、あいにくの極寒日で、クリスマス前の週末とあり、見に来ている人はとても少なかった。

私は、伊藤詩織さんの事件を詳しく追っていなかった。いろいろな憶測や揶揄が飛び交い、私の身近にもアンチの人はいて、軽々しくふれる話題ではなかった。なにより私自身よくわからなかった。五ノ井さんの事件とはまた別のおどろおどろしさや、女同士でも意見が激しく分かれるところがあった。だから一人で見に行った。

『Black Box Diaries』は、日記の形をとって時系列で裁判で勝訴するまでの過程を伊藤さん側が記録していた音声と動画を並べて描かれていた。冒頭から、妹さんの「公に話さないで」と懇願する言葉と、伊藤さんの「私のストーリーを聞いてほしい」の訴えがぶつかる。とりあえず彼女の声に耳を傾けようと思った。彼女の話に引き込まれ、涙なしには見られない場面も多かった。

北米だと『She Said』が公開されて、ハーヴィー・ワインシュタインのセクハラの犠牲者の一人、アシュリー・ジャッド本人や、ニューヨークタイムズの女性記者たちは「勇気ある人」的な描かれ方をしていた。彼女たちは画面の中では泣き崩れたりしなかった。でも、『Black Box Diaries』の伊藤さんはそうじゃない。もっともっと脆い存在で、泣いたり、絶望したり、自分を無理やり奮い立たせている。このドキュメンタリーが世にいくら認められても、彼女は大丈夫でいられないんじゃないかと見ている私を不安にさせるくらいに。なんとか幸せになってほしいと画面越しに祈った。

Y日記33

冬になり、マイナス5℃だろうと雪が降り積もろうと、ピックルボールをしています。来年はミニリーグでプレイする予定です。「冬になったらピックルボールは休憩する」と言っていたのはどの口だ? 年末年始に出かける人も多いですが、どこにも行かないメンバーでプレイをする予定がいっぱいです。仲間からさっそくクリスマスプレゼント(キーホルダー)をもらいました。

ちなみに、私がプレイしているのは教会の地下です。コートは1面しかないのですが、このコート貸しで教会はすごく儲かっているらしいです。あちこちにお布施を頼まなくてもいいくらいに。知らなかったけど、教会って活発に使われているのですね。クリスマス前とあって、上階では聖歌隊が歌を練習していたり、キルトのグループが集まっていたり、若い人もたくさんいる。LGBTQの人にも扉を開いている宗派だし、結構この教会好きかも。

この間、リタイア生活を楽しんでいる女の人が「クルーズ船でピックルボールをした」と言っていました。いくら大きな客船でも、さすがに揺れるんじゃないかと思っていたら、「揺れるわよ。ボールも海に落ちるわよ」と。そこまでしてピックルボールをしたいのかと驚きましたが、実は私も1月に日本に行くときに、パドルを持っていこうかなと考えているので人のことは言えない。

久しぶりに車で遠出をしました。ワイナリーに行ったのですが、平日だったのというのに早々とクリスマス休暇に入っているらしいお年を召した人がいっぱいいました。私たちは普段在宅勤務か徒歩通勤なのですっかり忘れていましたが、帰り道の高速の渋滞がすごかった。車の中でじっとしてるのもなんだし、ショッピングモールにでも行くかと立ち寄ったら、なんと! 夏休みで使ったカタール航空の機内食で出てきたレダラッハのチョコレートが売っていた! チャリーンとお金が出て行きました。そういえば、夏のスイス旅行を note の記事にするはずだったのに、してない。

今週はせっせと仕事の種まきをしていました。すごく時間がかかるし報われないことも多いけど種まきは重要。しかも、この作業はいつも手探りで、これでいいのかがわからなくなってくる。1週間で詰め込んでやったので、今日は昼寝をたっぷりと。そんなわけで、今週は翻訳を進められませんでした。

Y日記32

今年はじめての吹雪だった。ピックルボールの帰り道、駅の改札をくぐるあたりから、床に真っ赤なペンキがポタポタと落ちていて、ずっと駅の構内にも続いていた。ペンキだと最初は思ったけど、なんとなく悪い予感がして、なるべく踏まないようにしていた。

「おい! あんたの頭から血がダラダラしたたっとるぞ!」と駅の人の声が聞こえた。ただごとではない雰囲気がして、声のほうを見たら、どこかの工事現場の仕事上がりのような男の人がいて、頭も顔も、ダウンジャケットも、赤い血に染まっていた。目もあけられないみたいで、目をしばたいているのが見えて、心底ぎょっとした。それにその人は「ああ?」くらいの短い言葉を返した。

じろじろ見たらいけないと思って、そそくさとその場を去ったけど、あんなに血だらけの人、ハロウィーンの仮装のときしか見たことなかった。何があったんだろう。雪ですべって頭をどこかにぶつけたのかな。自分が血だらけだとは言われるまで気づいていなかったみたい。

その人の血は、少なくも床に落ちていた血の色は明るい赤だった。血ってもう少し黒みがあるんだと思っていた。静脈血と動脈血でも色が違うらしい。

Y日記31

最近、私の訳本が刊行されましたが、一般流通はしていないみたい。リアリズムの国際政治学者ジョン・ミアシャイマーの本で、邦訳は『リベラリズムという妄想』です。前半が政治哲学、後半が今の国際政治についてだから教科書っぽくはあるけど、政治哲学に馴染みがない人は後半を読んでから、前半に戻るという読み方をすれば、わかりやすいかな。

タイトルは私がつけたわけじゃない。邦題からは内容を想像しにくいけれど、一極集中の世界で超強大なリベラル国が「リベラル・ヘゲモニー」という世界覇権を目論んでも、他国のナショナリズムの抵抗に遭って失敗します、という大筋です(アメリカがそうであるように)。どうしても、「共和党支持か/民主党支持か」や「保守か/進歩か」の対立軸で考えてしまいがちではありますが、そうではなく、もっと俯瞰して、冷戦以降のアメリカの政権を振り返って分析しています。たぶん、『リベラリズムという妄想』というタイトルが付いたのは、反リベラルのほうが食いつきやすい内容なのと、ジョン・グレイの『グローバリズムという妄想』の二番煎じっぽい邦題により、あれを読んだ人はこれも読んでね、と誘導しやすいからかもしれないです。

今後の世界の勢力均衡はどうなるのだろう、各地の戦争はどうなっていくのだろうと思っている人は読んでみてください。といっても、この本、どこで買えるんだろう? 今のところ、Amazonでも売っていなかった。いつかメルカリに放出されるかも。

実は、この本、向こうから私のところへ転がり込んできました。私が引き受けたのは、次のような理由があったからです。

2年以上前、ロシアがウクライナに侵攻したとき、カナダやアメリカの大手メディアでは、当然ながら、西側の見解だけが報道されていました。私が住んでいるカナダはNATO加盟国だし、ウクライナ系移民もロシア系移民も多く抱えて抗議デモも盛んだったし、NHLのオベチキンなどは堂々とロシアを擁護して話題になった時期もありました。何より、カナダは早々に大勢のウクライナ人の受け入れを決めていました。

私は、「どうなるんだろう?」と不安を感じているうちに、戦地から遠く離れている私たちはプロパガンダ戦争に巻き込まれている気もしてきて、大手メディアよりもポッドキャストを聴くようになりました。政治ポッドキャストの世界では、ミアシャイマーの名前をよく耳にし、実際に出演もしていました。ざっくり要約すると、「何十年と続いてきたNATOの東方拡大が引き金になってロシアは軍事行動に出たのだから、西側に責任がある」とミアシャイマーは言いつづけていました。

そもそも私は、ブッシュ息子が「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」と主張して、イラク戦争やアフガニスタン戦争を始めた頃にアメリカに住んでいたこともあって、「民主主義を広めるために他国に侵略するアメリカ」に心底驚き、そのあとに続いたムスリム叩きに辟易していました。だから、ミアシャイマーの言っていることに共感を覚えたのです。

そんなわけで、私は「やるやる〜!」と引き受けました。家人に「ミアシャイマーの本を訳すことになったよ」と伝えたら、「ノー・ファッキング・ウェイ!」と喜んでくれたので、二人で乾杯しました。

余談ですが、大学時代の友人で政治学者になった人がいたので、その人に献本することにしました。でも、所属大学名しか知らなかったから、所属と住所を突き止めて送りました。ちゃんと届いたかな?


最近、姉御が見ろ!と言ってきたマーサ・スチュワートのドキュメンタリー映画『Martha』と、イギリスのストーカードラマ『Baby Reindeer』を見ました。『Baby Reindeer』は、単なるストーカーの話かと思ったら、全然違った。『Martha』はマーサ・スチュワートが出所したときに来ていたポンチョと、そのあとに続いた「ポンチョブーム」もちゃんと描かれていて、「私もあのポンチョ作ったな〜」と懐かしく感じたのがよかったです。当時から、マーサが男だったら、そもそも実刑判決を受けることなどなかったと言われていましたよね。

どっちもおすすめ。

あとは、アーサー王について勉強しようと思って、『First Knight』も見ました。ショーン・コネリーがアーサー王で、リチャード・ギアがランスロット。う〜ん…… 面白くはなかった。1995年の映画だからかな、それとも、リチャード・ギアがあんまり好きじゃないからかな。