Y日記40

先週、ピックルボール仲間と飲み歩いた。10人くらいで。そんな大人数だから、行けるところは限られてくるけど、スパゲッティを食べながらディスコというコンセプトの、オシャレ感ゼロの、だけど、仲間で騒ぐ気満々の人にはうってつけの店に行った。天井に、古めかしいかんじのディスコボールがきらきら光って、ピンクがかった照明で、全然気取らないかんじがよかった。そこから3軒はしごした。

帰りは同じ方向に行く男の子とライドシェアして、「あれがおれの住んでいるマンションだ。今から家の照明をチカチカさせるからな!」と言われ、スマホで遠隔操作する姿と遠くに見えるマンションを交互に見た。確かにおもしろい。「見えた!見えた!」と喜んでしまった。

たぶん、私の今の社会生活のほとんどを占めているのは、このピックルボール仲間と、書評講座の仲間といってもいい。で、あとは仕事ね。今週は、前々からの懸念事項が前進したようで、ややうれしい。本当はかなりうれしいのだけど、他人の不幸が土台にあるので、ガッツポーズは控えたい。

それと……

101歳のお友達が亡くなりました。お別れは近いと思っていたし、最後にお別れの挨拶にも行けたけど、さみしいです。同志社女子大学英文科がまだ専門学校と呼ばれていた時代の大先輩です。お父様が英文学者だったから、その時代の女性としては先進的な考えを持っていて、聡明で、おだやかで、おもしろく、いつも美しい言葉で話し文章をお書きになる人でした。誰かが「顔を合わせると嫌な気分になる人がいる」と相談すれば、「大丈夫。みんな結構先にお亡くなりになりますよ」的な、100歳超えならではのジョークを飛ばす人でした。

最後に病室を見舞ったときも、寝姿を見て「お別れが近い……」と思ったのですが、名前を呼ぶと、ぱちっと目を開き、「100歳超えると、まさかって思うようなところにガタがくるのよ」とおっしゃった。ベッドには、大好きな猫のぬいぐるみがいっぱいで、「私もできるだけふわふわで手触りのいい猫のぬいぐるみに囲まれて最後を迎えたい」と思ったものでした。そう、最後の最後まで、人生の先輩でいらっしゃったのでした。

船坂まりさんの書かれた戦争体験手記「清水さんをおもう」は、暮しの手帖『戦中・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ』の中に入っています。本当は、「軍事郵便」という題を付けたのに、別の題に変えられてしまったと残念そうでした。

「しみじみと別れ行く日の豊菊かな」

まりさんの初恋の人、清水さんが、まりさんと京都でお別れしてのち戦地から送ってこられた句です。これが「軍事郵便」で送られてきたのです。

まりさんには私たちのポッドキャストにゲスト出演していただき、その人生をおうかがいし、3回に分けて配信しました。音質が悪いですが、よかったらどうぞ。

Y日記39

『セヴェランス』のシーズン1を見終わった(シーズン2も配信分は全部見た)。淡々と話が進んでいると思いきや、第7話で大きな動きがあった。そのあたりから、ピックルボール仲間の一人とピックルボールをしながら『セヴェランス』の話ばかりする『セヴェランス』信者になってしまった。

『セヴェランス』って、ちょっと、ビジネス系自己啓発書を読みすぎてどうにかなっちゃった人たちみたいにも見ることができるよね。ミルチックとか特に。私のいちばんお気に入りのキャラクターだけども。

かつてサラリーマン時代に、ビジネス系自己啓発書をたくさん読まされるポジションに就いていた。確かに、考え方の違う人たちと一緒に働くと面倒が起きるので、民主的に仕事を進めるのであれば、自己啓発書を通していろいろ知っておいたほうがいい。効率よくコミュニケーションをとるとか、無駄のない会議を進めるとか。が、それも束の間。「なんで自分という存在をこうも会社に寄せていかねばならないのだろう……」と疑問が湧いてくる。『セヴェランス』を見ていると、そういう昔のことをよく思い出す。

その会社にいたとき、副社長から一ついいことを教えてもらった。それは自分の「思い込み」に気づく方法だった。シリコンバレーの会社だったから、「社員が『今日は101が激混みだった』と言うとき、君は、その社員がどこに住んでいると思う?」と聞かれた。速攻で「サンフランシスコベイエリア」と答えたら、「そういうのを思い込みって言うんだよ」と教えてくれた。

今週は他に、私が卒業した大学グループが創立150周年とかで、思い出などを一筆書いてみませんか? とメールが来ていたので、書いてみた。別に誰にも頼まれていないけど。意外にも暗いエピソードになったので、それを人目にさらすかどうか悩んでいるところ。

今翻訳の真っ最中だけど、ちょっと面白い本を見つけた。種まきしよっと。

もっと次から次へと仕事が舞い込んできてくれてもいいのにな。ツイッターをめちゃくちゃにしたあいつに対抗する本を持ち込んだんだけど、あれが決まればいいのに!

Y日記38

エレベーターの扉が開くと、そこにチワワを抱いた小さなおばあさんがいた。153cmの私がびっくりして見下ろすくらいだから、背の高さは110cmくらいだろうか。なんだかぎこちない。何か話しかけないと……

「犬がぶるぶる震えてますね。寒いのかな?」

小さなおばあさんはどこかの外国から来た、英語が不得意な人だった。気まずい……。おそらく向こうも気まずい。私にも経験がある。かつて英語圏に引っ越してきたばかりの頃にスモールトークに返事できなくて、キョどってしまう時期をやり過ごしたことが。

私はチワワを指差し、自分を両腕で抱えて、ブルブルっと体を震わせてみた。

「イエス、イエス」

そこでエレベーターの扉がやっと開いてくれた。おばあさん、チワワ、サヨウナラ!!

それはさておき。

是枝版『阿修羅のごとく』を見終わった。独善のかたまり、次女まきこに始終いらいらさせられたが、彼女が正義を振り回すから、あのドラマは面白いのだ。私は三姉妹の真ん中なので、四姉妹とはあのように「下2と上2」に分かれるものなの?と気になった。『細雪』の四姉妹はどうだったっけ? 

そして、いつも思うのだけど、この間見終わった『パチンコ』といい、アジアの昔の女性は寄り集まって食事を作ることが多い。

今は『セヴェランス』を見てる。Apple TV+を無料購読中だしね。

ヴァージニア・ウルフの『フラッシュ 或る伝記』を読んだけど、読みたいと思った版じゃないのを読んでしまった。

アン・カーソンの『赤の自伝』をちびちびポート酒を舐めるように読んでる。もうすぐ終わり。

101歳のお友達のお見舞いに行った。「この年になると、とんでもないところにガタがくるのよ!」とベッドに横たわりながらお話になる姿に生命力の強さを感じた。

オンタリオ州からばらまかれた200ドルを全部ピックルボールに注ぎ込んだった。

Y日記37

親戚の小一男子は今、ランボルギーニの中でも1億円近い車種を手に入れたい。そして、その車種に関していろいろ知りたいがために、音声検索で情報を集め、他車種との比較表も作っている。聞いても的外れな答えしか返ってこないときは、深い溜息をつき、いらつきを隠さない。音声入力というのは、まだ文字入力検索が難しい年齢に役立っているのだと知った。

叔母であるわたしは小一男子の夢を叶えるお手伝いをしたい。そのつもりで千円のお小遣いをあげたら、うれしそうな顔をしなかった。桁が足りない、ということらしい。どうやら、小一ながら100000000分の1000という絶望感に圧倒されるくらいに分数が理解できている。毎年1000円のお年玉を貯めると100000年かかる。10000円もらっても10000年かかる。

しかし、当然のことながら、礼を言うより先に不満を口にしたことを親に咎められていた。

この気の遠くなるような道のりを、大人になっても突っ走ってほしい。叔母さんはたぶん、東京にあるランボルギーニのショールームに連れていくくらいなら協力できる。がんばれば、イタリアにあるランボルギーニの工場見学に連れっていってあげられるかもしれない(私も行きたいから)。

この途方もない感じのこと(しかも他人にとってはどうでもいいようなこと)を目指して闘志を燃やすアニマルスピリッツは血なのだろうか。

わたしも今、スイカゲームに燃えている。

Y日記36

日本から戻り、ピックルボールのミニリーグ戦に参加。主催者が「リーグ戦」のコンセプトを理解できず、ブチ切れる人数名。ブチ切れたのが全員知り合いだったので驚いたが、「リーグ戦」であることに余分のお金を払っているのだから、抗議は当然だ。

競争心むき出しで相手の弱点をグイグイ狙うタイプの人(60代後半とおもわしき女性)と何度か対戦し、洗礼を受けた。心の中で<卑怯者!>と叫んでいたが、「エースを狙え」の岡ひろみになったつもりで耐えた。が、次第に私の中の悪が引き出され、遠慮なく攻撃に出た。競争心といえば、ゼンデイヤの『チャレンジャーズ』。あの映画は私の中では2024年のトップ3に入る。

映画といえば、ニコール・キッドマンとハリス・ディキンソンの『BabyGirl』を観てきた。クソ寒い平日の夜だったので、映画館には10人くらいしかいなかったけど、それもよし。完璧主義の傾向がある頑張り屋の性癖・性欲を深掘りしてるところがよかった。ハリス・ディキンソンは『逆転のトライアングル』以来好き。

『パチンコ』のシーズン2を見終わった。いよいよ日本のバブルが崩壊するってところで終わったけど、あれもこれも紐はほどけたままなので、シーズン3に期待したい。ベク・ソロモン役のジン・ハの日本語がシーズン1と比べると格段にうまくなっていた。圧倒的な演技力といい脚本があれば、話す言語がネイティブレベルでなくとも私は気にならないのだと、このドラマを見て思った。ちなみに、『地面師たち』では、ピエール瀧のエセ関西弁になじめず話になかなか入っていけなかった。関西弁が話せる役者を選べばいいのに。ドラマは面白かったけど。

昨日久しぶりにNetflixでドラマを見ようとしたら、「サブスク料金が値上がりしますが、続けますか?」というような告知がいきなり画面に表示された。値上げとともにすばらしいサービスを提供してくれるかのような文言だったので、ムカついた。最近、アメリカのサービスが値上げになると、「貿易戦争のせい?」と勘繰ってしまうが、どうやらアメリカでも値上げらしい。

Netflixで『阿修羅のごとく』のリメイクを見ようとしたけど、1話の途中で何だかなと思って脱落。小説は大好きだけど、なんだろうか、あの四姉妹のあてこすり的な言葉の応酬に疲れてしまった。

仕事で、ある作品のリーディングをした。興味深い話だったけど、私向きではなかった。リーディングをしながら関連書籍を検索していたら、面白そうな本がごろごろ出てきた。とりあえず図書館でお取り置き。図書館カードがオンラインで更新できるようになっていた。