ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞して、特に韓国語の翻訳者さんや版元が喜びの歓声をSNSで挙げているのを見て、私も幸せな気分になった。ハン・ガンの作品は既にたくさん日本語に翻訳されていたから。それに、私の好きな作家でもあるし。
ノーベル文学賞の候補になるには、そもそも英訳が必要で、英語圏外の作家が受賞するのはハードルが高い。そのことを快く思わない人もいるけれど、やはり英語圏で知名度が上がると、作品を読んでくれる人が増えるのは間違いない。権威の存在はいいところもあるから、むずかしいね。
その昔、ハン・ガンがブッカー国際賞を獲ったときに、英訳で一悶着があった。そのときに書いたブログ記事を貼っておこう。英語と韓国語の両方ができる韓国系の人々が英訳に物申したのだけど、その渦中に、英訳者がカナダのラジオ番組で堂々と釈明していたのをたまたま聞いて、えらいな!と尊敬したのだった。
『別れを告げない』の英訳はこれから出るところで、日本語を含めた他言語では既に訳され刊行されている。他言語の表紙はみな、済州島をイメージしてブルーが使われているのに、英語版はブルーを一切使ってなくて、黄色が差し色になっている。それを見たどこかの国の人がSNSで、「英語版も他に倣ってブルーを使え!」と文句を言っていた。
トロントでは毎年9月後半に作家祭が開かれる。今年は、『コーヒーが冷めないうちに』の川口俊一さんが来ていた。私もイベントに行ってみたけど、川口さんはトークがうまい! 北米の人にウケる話し方ができる。もちろん日本語で話して、通訳さんが英語に訳すのだけど。大型チェーン店では、『コーヒーが冷めないうちに』シリーズの棚もできていた。表紙がかわいいから、猫グッズやジクソーパズルと並べて売られてて、棚がそこだけ可愛かった。
話は変わり、今観ているドラマはこれ。実際に起きた実親殺人事件をモチーフにして、殺人を犯した息子2人の視点で描かれてる。「ハリウッドの金持ちのボンボンに対する思い込み」vs 毒親からのトラウマの構図。たぶん、当時の報道は「財産目当てのボンボンであること」に焦点が置かれていたけど、このドラマは子どもたちのトラウマに焦点が当てられているのがミソ。親に受けた虐待について話すシーンには息をのむ。
