かぎ針編みのひみつ

去年、The Knotty Boss の『かぎ針編みのひみつ Crochet Secrets』を訳しました。かぎ針編みをきれいに仕上げる技が満載で、編み欲が俄然湧いてくる一冊です。

かぎ針編みって、単色で平らに編んでいるだけでは気づかない限界がありますよね。ピクセル画像で起きるアウトライン「ガタガタ」問題と同じです。ピクセル画像の場合はAIでなめらかに仕上げますが、編み物はあくまでも人力。

その人力で、アウトラインをなめらかにし、隙間をなくし、あるいは、あえて凹凸を作り、糸を捩れさせ、テクスチャーを作り出す。あみぐるみなど、立体的なものを編むときに参考になる本だと思います。

東日本大震災が起きたときに、一緒にニットで社会活動をした、ニット作家、笹谷史子さんにこの本を紹介してもらったところ、あれほど編み物を深く研究されている人でも見直しができるテクニックがいくつかあったそうです。笹谷さん、ご紹介ありがとうございました。

著者は本職デザイナーで、インスタグラムから飛び出してきた人です。本書に書かれていることも一部、インスタの動画で確認できますが、動画って時間取るし、アカウントが消失すると元も子もなくなるので、この本を手元に置いておくと便利かと。

というわけで、この編み物好きさんの必読書、ぜひ手に取ってみてください。

余談:手芸や服飾史の本を訳しているうちに、名前が浸透したのか、「あぁ、新田さんね」と言われるようになりました。訳書を読んでから声をかけていただくこともあって、うれしいです。特に服飾の歴史はもっと訳したいなぁ。軍服史の本見つけたけど、ビジュアル少なかった。写真以前の時代の軍服は文章で表現するしかないもんね……

Y日記55—こと退治

日本語で最初から自分の文章を書くとき、「こと」は多用しないのに、訳文となると、一次訳に「こと」が頻出する。あれはなぜなのか。全体を訳し終え、見直すときになって全文検索すると、「こと」の多さに驚愕する。「言いたいこと」「知っていること」「そのこと」「驚いたことに」「〜ことを認識する」などなど、うぎゃ〜っとなる。

一つには、英文を解釈したものの、ぱっといい訳文を書けずに、プレースホルダー的に「こと」でひとまず訳す場合。

もう一つは、理解があやふやなまま、「ちょっとおかしいけど、先に進みたい」ときに無理矢理文章化し、とりあえず「こと」でごまかすような場合。あちこち書き直しているうちに、「ああ、ここの解釈が間違っていたんだわ」と気づく。

最初からバーンといい訳文が書ける女になりたい。

仕事が一段落ついたので、『Stranger Things』のファイナルシーズンを一気に観た。子役たちが大きくなっていたし、これ以上話は引きずれないところまできていたから、終わってくれてほっとした。最終回を見て、ああ、この話って世代に分かれて進行してたんだとあらためて思った。イレブンやマイクの「中心的世代」、ウィルの兄やナンシーの「お兄ちゃんお姉ちゃん世代」、ウィルの親世代、最終シーズンはマイクの妹世代まで加わった。すごく好きなドラマだったけど、異世界がめっちゃくちゃ怖くて、今現実世界もすごいことになってるから、もうちょっと安心して見ていられる異世界の話がいいな。

次に見はじめたのは韓国ドラマ『You and Everything Else』(『ウンジュンとサンヨン』)。女の子2人が互いに抱く妬みぶりが見どころ。自分にも覚えのあるちくちくした思い出が蘇ってくるけども。私はどっちかといえばサンヨンで、自虐的に冗談を言ったつもりが、ウンジュン的なクラスメートに「あんたに自虐を言う資格はない」と呼び出されて怒られたことがある。そのとき、自分には封印しなければならないものがあるのだと初めて知った。

Y日記54—Florida

年明け、フロリダに5日間行ってきた。ピックルボールをしに。そしてマナティを見に。トロントの仲間の1人が引っ越したので、彼を訪ねるという口実をつけて。最初から最後まで、どこを切り取っても楽しかった。

旅仲間は30代半ばの男子2名に私。この2人が心優しく、年寄りをいたわるかのように至れり尽くせりだった。たとえば、ピックルボールのしすぎで脱水症状だったのか、足が攣って自分の靴紐を結べなくなった私のために、靴紐を結んでくれた。エアビーでは私に一番大きな部屋を使わせてくれた。

オーランドに着いたら、現地の友人(こちらも30代半ばの男子)が迎えに来てくれて、エアビーにチェックイン。若い人たちはスマホでなんでもサクサクできるからありがたい。いや、私もスマホでやるけど、速さが違う!! スピードと言えば、この友人は出会ってすぐに結婚が決まり、結婚式に招待してもらったけど、場所がインド。4日間くらい続く結婚式なので見たいが、さすがにインドは遠い。

久しぶりの再会に話は尽きない。黙っていたのは空腹すぎてご飯にかぶりついていたときか、お腹がいっぱいになったときくらいだった。30代半ばの男子3人は、それぞれの彼女についても話していて、「ほう、ラブリーだな」と聞いていた。しかも、3人で彼女へのお土産を買いにアウトレットモールに行っていた。私も行ったが、モール内で別行動し、自分用の物を買っていた。彼女に何を買えばいいのか、アドバイスさえ求められなかった。

フロリダには無料なのに質のいいパブリックコートがいっぱいある!! 幸せだ。なぜカナダにはないのか?! 着いた日の夜、さっそくナイトゲームに参加し、アメリカ人と対戦。フロリダなだけにスペイン語があちこちから聞こえる。ここは東アジア人少なめ。代わりに南米系or白人多め。このコートは年齢層低めでティーンエージャーも多かった。10代はピックルボールしててもバカ丸出しで(互いをけなし合う)、一緒にプレイするととても楽しい。

4人のうち、1人は昔テニスのコーチをしていたので、ピックルボールも格段にうまく、あれこれ教えてもらう。もっとましなサーブが打てて、トップスピンが偶然にではなく狙ってできるようになった、気がする。

ディズニーワールドで遊ぶ案も出たけど、チケットが高いのでやめて、Silver Spring という公園へマナティを見に行った。マナティはたくさん泳いでいたが、季節はずれだからなのか(?)これでも少なめらしい。青空のおかげで水も青々透きとおり、椰子の木が南国情緒を放っていた。あちこちに小さなトカゲもいた。トカゲはスパイで私たちの会話に聞き耳を立てている。

夜は毎晩みんなで映画を見た。『People We Meet on Vacation』というバカバカしいことこの上ないラブコメを見て、「ホワイトピープルのやることは意味がわからん!」とみんなで画面に向かって騒いだ。この映画、そういうふうに見るとすごく面白い。あとは『Andhadhun』というインド映画と、『Predator』。

我ら全員移民なので、ICEに車を止められたらどうしよう、なんて少しは心配していたけど、全然見かけなかった。たぶんミネソタに集結していたからかも。

このメンバーでもう1回どこかへ行きたいなぁ。

Y日記53—2026年のはじまり

初夢を見なかった。子どもの頃はちゃんと初夢を覚えていて、人に話していた。日本を出て暮らしていると、そういう習慣がまったくなくなった。

今日、6日に明確に夢を見た。洗濯機に溢れかえるように衣服が積み上げられ(しかも私の服ではない)、それをなんとかしようと、洗濯物をひっぺがしていくと、洗濯機が壊れていた、という夢。あまり縁起がいい感じがしない。

SNSで誰かが「人の目に触れることが前提になっている日記が苦手」と言っていた。私は人目に触れない自分だけの日記も書いたことはあるけど、交換日記やブログ日記のほうが断然好き。こういうのを「日記」と呼ぶから誤解を生むのだと思うけど、人目にさらしておくと、リアルにあったときに、つまらない近況報告や噂話をしなくてすむ。

日記じゃなかったら何と呼べばいい? 自分がやっているポッドキャストもそう。すごく狭い範囲の人だけが読んだり聴いたりするだけ。実際に一度だけ会ったことがある人、これから会う予定がある人も、私の日記やポッドキャストをまずチェックするので、会った瞬間から、前から知っている人みたいな気がする。去年ソウルで出会った人と互いのポッドキャストを聴いているけど、それだけで楽しい。黎明期のポッドキャスターはそういう感じだった。今みたいに自己宣伝と金稼ぎの匂いが充満した世界ではなかった。ま、私は黎明期にポッドキャスターではなくて、聴いているだけの人だったけどね。

今年も翻訳の企画を頑張ろうと思って1つ作って送ったけど、アメリカがベネズエラを急襲したことで、その企画の魅力が変わった。私は魅力が増したと思うんだけど、それは企画が通ってほしいというバイアスのせいかもね。

今年もいろいろ訳したい、書きたい。1つだけ大手メディアで書く仕事がある(はず)。でも単発で終わったらどうしよう。もうちょっと種まきしよう。

新年早々、書評を書きながら、複雑なことを言語化するのって本当に難しいとウンウン苦しんだ。短い書評だから多くを書けない。字数がたくさん与えられていたとしても、自分の感じていることをうまくは書けない。いい作品なのに、「いいよ、とりあえず読んでみて」とは書けない苦しみ。

あと、今年はピックルボールでZINEを出したい。人にこの話をしたら、伝言ゲームで巡りめぐって、いつの間にか、「ピックルボールの日本選手権に出場するらしいね」になっていた。そんなわけない。正しくは、「ピックルボールネタで日本の文フリに出る」だ。

のんびり楽しくやっていたピックルボール界隈でも、競争心の激しい人たちはいて、「下手なのに、どうしてここに来るの!」と怒る人がいて怖い。私から見るとどんぐりの背くらべにしか見えない。排他的になるのなら、自分でもっと高いお金を払って、しっかりランキング分けされているクラブへ行けばいいのに。でもこうした他人の攻撃性すらも、ZINEに書いちゃおう!と思っているので、ひたすらスマホに書き溜めている私であった。

ティモシー・シャラメの新しい映画『Marty Supreme』がすごくよかった。卓球の話ではあるが、最高のプレイをするためならあの手この手を尽くすところに共感を覚えた。歌が歌えて、卓球も出来て、ティモシー・シャラメってすごいね。

Y日記52 — 2025年振り返り

10月初めで日記が止まっていた。今年の初めにSNSにいろいろ書かないでここに書こうと思っていたのに。

2025年は(も?)慌ただしかったけど、楽しかった。

1月に日本帰国。京丹後へ家族旅行。カニづくし。

4月に書評講座

6月にソウル国際ブックフェア&日本帰国。既に私には暑かった。

7月に『国家戦略のリアリズム』刊行。日本政府中枢にいる人に翻訳を褒められた。

8月にピックルボールのサマーキャンプ。なぜかチーププレイヤー賞をもらう。景品はKitchen Blocker。

10月にフランクフルト国際ブックフェア。初対面の出版社の人にいきなりお金を借りて食事するという失態。のち海外送金にて借金返済。

10月に『THE Knotty BOSSが教える かぎ針編みのひみつ: もっと早く知りたかった! かぎ針編みのテクニック&裏技100点掲載』刊行。編み物で社会活動を共にした atricot さんに献本して、好評価をいただく。

あとメンズファッションの本1冊、メディア関係の本1冊訳して、たぶんどちらも来年刊行。メンズ服は作ったことがないけど、ご指名もらっての仕事だったから頑張った。もう1冊は自分の持ち込み。どっちもすご〜く頑張った。

行き先を失った翻訳を引き受けてくれるところを探して一安心した(安心していいんだろうか?という一抹の不安はある)。

ポッドキャストはシーズン5を迎え、10話配信した。Spotifyだけでなく、YouTubeへの配信も(姉御が)した。来年も続けるけど、もう少し社会貢献的なこともしたいと思ってる。何をするかは未定。

夏は5歳、7歳、11歳の親戚の子と交換日記をして、いつもとは違う話ができてよかった。3人さえ良ければ来年もやりたい。

今年も一年ずっとピックルボールをやり続けた。まだ飽きない。たくさん友達もできたし、ミニリーグで最終日まで首位を走った(最終日に3位転落)。1月はフロリダへピックルボールしに行く。そして、ピックルボールのこぼれ話をいっぱい集めたから、それでZINEを作ろうと思ってる。一番やりたいことなのに、一番後回しにしてしまいそうな気がする。

クリスマスには互いに何もプレゼントせず、美味しいところへ食事に行くだけにしようと決めて実行。クリスマスのプレゼント交換にちょっとうんざり。欲しいものは自分で買うし。

まったく何がどうなってるんだかわからないくらい忙しくなって、ガリガリした食感のものばっかり食べてた時期もあったけど、とりあえず無事一年が終わりそうです。