Y日記39

『セヴェランス』のシーズン1を見終わった(シーズン2も配信分は全部見た)。淡々と話が進んでいると思いきや、第7話で大きな動きがあった。そのあたりから、ピックルボール仲間の一人とピックルボールをしながら『セヴェランス』の話ばかりする『セヴェランス』信者になってしまった。

『セヴェランス』って、ちょっと、ビジネス系自己啓発書を読みすぎてどうにかなっちゃった人たちみたいにも見ることができるよね。ミルチックとか特に。私のいちばんお気に入りのキャラクターだけども。

かつてサラリーマン時代に、ビジネス系自己啓発書をたくさん読まされるポジションに就いていた。確かに、考え方の違う人たちと一緒に働くと面倒が起きるので、民主的に仕事を進めるのであれば、自己啓発書を通していろいろ知っておいたほうがいい。効率よくコミュニケーションをとるとか、無駄のない会議を進めるとか。が、それも束の間。「なんで自分という存在をこうも会社に寄せていかねばならないのだろう……」と疑問が湧いてくる。『セヴェランス』を見ていると、そういう昔のことをよく思い出す。

その会社にいたとき、副社長から一ついいことを教えてもらった。それは自分の「思い込み」に気づく方法だった。シリコンバレーの会社だったから、「社員が『今日は101が激混みだった』と言うとき、君は、その社員がどこに住んでいると思う?」と聞かれた。速攻で「サンフランシスコベイエリア」と答えたら、「そういうのを思い込みって言うんだよ」と教えてくれた。

今週は他に、私が卒業した大学グループが創立150周年とかで、思い出などを一筆書いてみませんか? とメールが来ていたので、書いてみた。別に誰にも頼まれていないけど。意外にも暗いエピソードになったので、それを人目にさらすかどうか悩んでいるところ。

今翻訳の真っ最中だけど、ちょっと面白い本を見つけた。種まきしよっと。

もっと次から次へと仕事が舞い込んできてくれてもいいのにな。ツイッターをめちゃくちゃにしたあいつに対抗する本を持ち込んだんだけど、あれが決まればいいのに!

Y日記38

エレベーターの扉が開くと、そこにチワワを抱いた小さなおばあさんがいた。153cmの私がびっくりして見下ろすくらいだから、背の高さは110cmくらいだろうか。なんだかぎこちない。何か話しかけないと……

「犬がぶるぶる震えてますね。寒いのかな?」

小さなおばあさんはどこかの外国から来た、英語が不得意な人だった。気まずい……。おそらく向こうも気まずい。私にも経験がある。かつて英語圏に引っ越してきたばかりの頃にスモールトークに返事できなくて、キョどってしまう時期をやり過ごしたことが。

私はチワワを指差し、自分を両腕で抱えて、ブルブルっと体を震わせてみた。

「イエス、イエス」

そこでエレベーターの扉がやっと開いてくれた。おばあさん、チワワ、サヨウナラ!!

それはさておき。

是枝版『阿修羅のごとく』を見終わった。独善のかたまり、次女まきこに始終いらいらさせられたが、彼女が正義を振り回すから、あのドラマは面白いのだ。私は三姉妹の真ん中なので、四姉妹とはあのように「下2と上2」に分かれるものなの?と気になった。『細雪』の四姉妹はどうだったっけ? 

そして、いつも思うのだけど、この間見終わった『パチンコ』といい、アジアの昔の女性は寄り集まって食事を作ることが多い。

今は『セヴェランス』を見てる。Apple TV+を無料購読中だしね。

ヴァージニア・ウルフの『フラッシュ 或る伝記』を読んだけど、読みたいと思った版じゃないのを読んでしまった。

アン・カーソンの『赤の自伝』をちびちびポート酒を舐めるように読んでる。もうすぐ終わり。

101歳のお友達のお見舞いに行った。「この年になると、とんでもないところにガタがくるのよ!」とベッドに横たわりながらお話になる姿に生命力の強さを感じた。

オンタリオ州からばらまかれた200ドルを全部ピックルボールに注ぎ込んだった。

Y日記37

親戚の小一男子は今、ランボルギーニの中でも1億円近い車種を手に入れたい。そして、その車種に関していろいろ知りたいがために、音声検索で情報を集め、他車種との比較表も作っている。聞いても的外れな答えしか返ってこないときは、深い溜息をつき、いらつきを隠さない。音声入力というのは、まだ文字入力検索が難しい年齢に役立っているのだと知った。

叔母であるわたしは小一男子の夢を叶えるお手伝いをしたい。そのつもりで千円のお小遣いをあげたら、うれしそうな顔をしなかった。桁が足りない、ということらしい。どうやら、小一ながら100000000分の1000という絶望感に圧倒されるくらいに分数が理解できている。毎年1000円のお年玉を貯めると100000年かかる。10000円もらっても10000年かかる。

しかし、当然のことながら、礼を言うより先に不満を口にしたことを親に咎められていた。

この気の遠くなるような道のりを、大人になっても突っ走ってほしい。叔母さんはたぶん、東京にあるランボルギーニのショールームに連れていくくらいなら協力できる。がんばれば、イタリアにあるランボルギーニの工場見学に連れっていってあげられるかもしれない(私も行きたいから)。

この途方もない感じのこと(しかも他人にとってはどうでもいいようなこと)を目指して闘志を燃やすアニマルスピリッツは血なのだろうか。

わたしも今、スイカゲームに燃えている。

Y日記36

日本から戻り、ピックルボールのミニリーグ戦に参加。主催者が「リーグ戦」のコンセプトを理解できず、ブチ切れる人数名。ブチ切れたのが全員知り合いだったので驚いたが、「リーグ戦」であることに余分のお金を払っているのだから、抗議は当然だ。

競争心むき出しで相手の弱点をグイグイ狙うタイプの人(60代後半とおもわしき女性)と何度か対戦し、洗礼を受けた。心の中で<卑怯者!>と叫んでいたが、「エースを狙え」の岡ひろみになったつもりで耐えた。が、次第に私の中の悪が引き出され、遠慮なく攻撃に出た。競争心といえば、ゼンデイヤの『チャレンジャーズ』。あの映画は私の中では2024年のトップ3に入る。

映画といえば、ニコール・キッドマンとハリス・ディキンソンの『BabyGirl』を観てきた。クソ寒い平日の夜だったので、映画館には10人くらいしかいなかったけど、それもよし。完璧主義の傾向がある頑張り屋の性癖・性欲を深掘りしてるところがよかった。ハリス・ディキンソンは『逆転のトライアングル』以来好き。

『パチンコ』のシーズン2を見終わった。いよいよ日本のバブルが崩壊するってところで終わったけど、あれもこれも紐はほどけたままなので、シーズン3に期待したい。ベク・ソロモン役のジン・ハの日本語がシーズン1と比べると格段にうまくなっていた。圧倒的な演技力といい脚本があれば、話す言語がネイティブレベルでなくとも私は気にならないのだと、このドラマを見て思った。ちなみに、『地面師たち』では、ピエール瀧のエセ関西弁になじめず話になかなか入っていけなかった。関西弁が話せる役者を選べばいいのに。ドラマは面白かったけど。

昨日久しぶりにNetflixでドラマを見ようとしたら、「サブスク料金が値上がりしますが、続けますか?」というような告知がいきなり画面に表示された。値上げとともにすばらしいサービスを提供してくれるかのような文言だったので、ムカついた。最近、アメリカのサービスが値上げになると、「貿易戦争のせい?」と勘繰ってしまうが、どうやらアメリカでも値上げらしい。

Netflixで『阿修羅のごとく』のリメイクを見ようとしたけど、1話の途中で何だかなと思って脱落。小説は大好きだけど、なんだろうか、あの四姉妹のあてこすり的な言葉の応酬に疲れてしまった。

仕事で、ある作品のリーディングをした。興味深い話だったけど、私向きではなかった。リーディングをしながら関連書籍を検索していたら、面白そうな本がごろごろ出てきた。とりあえず図書館でお取り置き。図書館カードがオンラインで更新できるようになっていた。

Y日記35 – 2025年1月日本一時帰国

今年もY日記は続ける所存だけど、もっと日記らしく書こうと思う。

今回の一時帰国はリベンジだった。去年夏は東海道新幹線が数日間不通となったせいで東京どまりだったから。実家に無事行けたが、庭にある灯籠がピサの斜塔のように傾いていることに気づいた。地震でそうなったらしい。母親にこのことを伝えると、「あの灯籠の下に生える草を毎回決死の覚悟でむしっている」とのん気だった。自分では手入れができない木を短く切ってもらったせいなのか、木の数が減ったからなのか、灯籠だけでなく庭石もやたらと目立つ。友人が何億年もすれば全部土に還ると言うので、安心して放置することにした。

家族で京丹後をはじめて旅した。京都市内に10年近く暮らしたというのに丹後鉄道を利用したことがなかったから、すべてが物珍しかった。「丹後の海」というレトロ列車に揺られ、天橋立を横目に日本海側へ行き、カニづくし料理を堪能した。カニをがつがつ食べる姿は人に見られたくない。温泉宿であるからして温泉に入ったけれども、メガネを外すと何も見えない。温泉はそれほど好きではないのだ。

関西を後にして、東京へ戻った。定宿が遂にチェックイン用の機械を3台導入し、そこで日本のサラリーマンのおじさんが3人、揃いも揃って機械と悪戦苦闘し、ホテルの人が3人がかりで対応に追われていた。この光景を目の前にして恐怖と笑いがこみ上げてきた。隠居生活を楽しまれている人なら、私だって笑わない。企業で意思決定者の地位に就いていそうな方々だったからだ。

大阪と東京でBookpottersの仲間と集まった。今、本や翻訳の話をするのが楽しくて仕方ないのだ。同業以外の人と本の話をしようものなら、「最近、本を読んでいないから」と牽制されて終わりになるが、Bookpottersとなら、延々と本にまつわる話ができる。東京での集まりには豊﨑さんも来てくれて、面白く、ためになる話をいっぱい聞いた。そして、豊﨑さんのエッセイ『どうかしてました』にサインしてもらった。実はこの本を買うのは2冊目。実家でこれを読んでいたら、小4女子に奪われてしまった。小4女子はものすごい勢いでそれを読みだすと、「この人、すっごく変よね。これ、ちょうだい」と言った。犬ん子さんのファンなので表紙も気に入ったに違いないが、一体何がフックになったのだろう。最近の小学生は辛辣なので、豊﨑さんとの親和性が高いのかもしれない。

東京ではひたすら自分のしたいことをした。その1つが、ポッドキャストのシーズン4のフィナーレにゲスト出演してくれたジョルジョ・カンチェーミさんの実家がやっている青山のイタリアンレストランへ行くことだった。姉御にあらかじめ予約をしてもらい、引き合わせたいと思っていた人たちを引き合わせて食事をしていたら、ジョルジョも、そのお兄さんもお父さんも来てくれた。ポッドキャストでも話したけど、お兄さんはイタリアでプロ野球選手だったので、そっちのほうの楽しい話も聞かせてもらった。一緒に行った友だちとカンチェーミ家が実は割とつながっていることが発覚し、「世界は狭い」との思いを新たにした。

姪を出版デビューさせるべく、ふたりで営業活動をしてきた。姪は作りたいもののイメージを伝えるスクラップブックをちゃんと作ってきていたし、受け答えも上手で立派だった。私が思う「上手」は不必要に自分を盛らないでも、聞かれたことに対して端的に答えられる話術のことなんだけど、姪には、まわりくどいことを言って時間を無駄にしたりしない潔さと賢さがあると思った。完全なる「おばバカ」だな。さてどうなることか今後が楽しみ。

単独の営業活動もした。よく人に「行動力がある」と言われるけど、私の場合、佇んでいても、いつか誰かが気づいてくれる才能があるわけではないので、自分から動くしかない。

以前から一度会ってみたいと思っていた同業の方とも会うことができた。私なんかよりずっと経験があって売れているので私が言うのもなんだけど、会って話してみると、いろいろと考えや感性が似ていた。物静かで控えめだけど、殻を破りたいという意志があって気が合うと思った。将来的に一緒に何かをしたい。さすがに、初対面でそこまでは言えなかったけど。

歌舞伎町では、とても美味しい台湾料理を食べた。台湾に詳しい友人によれば、昔、歌舞伎町には台湾人コミュニティがあって、昔ながらの店をやっているところは今は減っているとのこと。そんな貴重なお店に連れて行ってもらえて感謝!

ようやく村上春樹ライブラリーに行けた! 思ったよりこじんまりしていたけど、山本容子版画展をやっていて、それがすごくよかった。文化服装学院の博物館での「動物柄の服」の展示もよかった。あと初詣してなかったから、小網神社と蛇窪神社にお参りしてきたけど、どっちもものすごい行列だった。おみくじは小吉で、後半にかけて運勢良さげ。

帰りの機内で、日本滞在中に思いついたことを書き留めて、あれこれ策を練ろうと思ったのに、となりに座っていたおじさんがパーソナルスペースという概念をあまり持ち合わせていない人だった。私のスマホやタブレットを覗き込み、挙げ句の果てには私の顔まで遠慮なく覗き込むので、ほとんど何もできなかった。客室乗務員さんに席を変えてほしいと何度言おうと思ったことか。別にセクハラをするわけでもないから微妙だなと11時間も悩み続けてしまった。ばかみたい。