ChatGPT

今、ChatGPTで遊んでいる人は多いよね、きっと。

うちの猫は、以前マッサージチェアを恐れ、そこで寝ることがなかった。ところが、最近いつも陣取っている。一体どういうことなのか。ChatGPTに英語で質問してみると、「マッサージチェアを心地よく思っているのでしょう」「マッサージチェアに大好きなもの(私?)の匂いが染みついているのでしょう」などと、もっともらしい答えを返してきた。ついでに、猫について一句詠んでよと無理を言ってみたら、ちゃんと英語で俳句を詠んだ。決してうまくはないが。

ChatGPTは、今のところ、「いや、実はマッサージチェアの中に現金が隠されていて、あなたの猫は、それを守っているのです」とは言わない。でも、質問の仕方を変えれば、そういう返事もしそうな気がする。

ひと昔前、蘊蓄を垂れるのが大好きなタイプの人たちがいた。ところが、スマホとウィキペディアの組み合わせで、あのような人々はほぼ駆逐された。今はクイズ番組とトリビアナイトくらいしか出番がないのでは?と思う。なんだろうか。記憶力のすごさは、人間が持っていると「蘊蓄野郎!」と疎んじられがちなのに、AIだともてはやされる。

最近、ネットで検索しても何を信じていいのかよくわからない。特に健康関連。ゆうべ、ゆで卵を食べて苦しくなり、ネットで調べたら「ゆで卵アレルギー疑惑」が浮上した。「そうかもしれない……」と大事をとって寝たが、朝起きてから、仕事をするのが嫌なだけだったかもしれないと思った。

今日のハイライト

私はDavid Sedaris が大好きで、よくオーディオブックを聞いている。彼は自分の書いた文章に取り立てて自信があるわけではなく、編集者やエージェントに「これいいですね」と言ってもらうことで、自信を持つ/喜ぶと言っていた。だから、わざと「本当に?本当に?」としつこく聞き返し、何度も同じことを相手に言わせると言っていた。私もその手でいこう。

David Sedaris Book Tour

3月末、デイヴィッド・セダリスの朗読会に行きました。日記の朗読会で、数千人を集め、90分間笑わせるのはすごい。「朗読会」っていってますけど、デイヴィッド・セダリスの場合は漫談に近いです。

彼も65歳。彼と一緒に年を重ねたファンでいっぱいでした。チケットが80ドルするので、なんとなく興味がある人や学生にはハードルが高い。前回トロントに来たときは、本屋さんの無料イベントだったというのに。

聴衆の誰かが「カナダ人とアメリカ人の違いは何だと思うか?」と質問を投げました。その質問をすること自体が、カナダ人的だと思います。だって、アメリカ人はカナダ人との違いなんてどうでもいいと思っているはずだから。

「たぶん、カナダ人なら自動小銃を見つけたら、警察に届け出ると思う」

と、デイヴィッド・セダリスは答えていました。当たってると思って、笑いました。

私の座席のすぐ近くに、カナダではとても有名な女性弁護士がいました。いつも目立つファッションで身をかためているので、普段でもそうなのかと驚きました。最近自叙伝を出したと聞いたので、読んでみたら、これがなかなかよかったんですが、調べたら、ある種の人々に「キャンセル」されまくっていました。キャンセルされやすいタイプの人だからしょうがないのかもしれませんが、ちょっと残念です。

Calypso

積読状態だったのをやっと読みました。相変わらず面白かったですが、 デイヴィッド・セダリスも年を重ねているのだなと思うような話が多かったです。家族のことがいろいろと書いてあり、日本のこともわりと登場します。特に「The Perfect Fit」は、デイヴィッド・セダリスがきょうだいと東京へ遊びに行き、恵比寿、銀座、青山、渋谷で変わった洋服を買いまくる話です。このエッセイはニューヨーカーにも掲載されたので、読んだ人も多いのでは。彼は日本で買った変わった洋服を着て、様々なイベントに登壇します。私が参加したトロントのイベントでも、東京で買った男性用キュロットをはいていました。実は私も日本に行くと不思議な洋服を買ってしまうので、Dover Street Market で買ったギャルソンの服を着てイベントに出かけました。「私もですよ!」と本人に話しかけるためにです。『Calypso』は、このときに買いました。

残念ながら、デイヴィッド・セダリスは見知らぬ読者とでも長々と話をしながらサインをするので、私は時間切れでサインをもらうことも、話しかけることもできませんでした。彼がこういうイベントでどれくらい読者としゃべるのかは、この本を読めばわかります。

たとえば、この本のタイトルにもなっている「Calypso」というエッセイ。あるとき、デイヴィッド・セダリスの顔に脂肪腫ができ、それを切除することになったのですが、彼は切除した脂肪腫をノースカロライナ州に棲む、ある「スッポン」に食べさせようと考えます。しかしアメリカでは、医者が手術で患者の体から切除したものを患者に渡すことは法律で禁じられています。「どうしてもスッポンに食べさせたい」と諦められないデイヴィッドは、あるブックイベントでその話を披露したところ、そこにいた読者の一人に脂肪腫を切除してもらい、とった脂肪腫を冷凍便で送ってもらう話を付けます。その結末は、この本を是非読んでもらいたいです。抱腹絶倒です。

デイヴィッド・セダリスはダークなユーモアあふれる書き手なのと、本読みも上手なので、オーディオブックをお勧めしたいです。『Calypso』のオーディオブックは、ライブの読書会を収録したものがいくつか入っていて、観衆の笑いにひきずられてライブ感を楽しめます。

デイヴィッド・セダリスの本は一部日本語訳が出ているのですね。訳すのがとても大変だったのじゃないかと……