自己隔離生活(Breaking Bad)

El Camino

今更だけど、「ブレイキング・バッド」を全部見終わった。何年か前、シーズン2までは見ていたものの、見ているだけで力と魂が吸い取られるような内容なので、休憩しているうちに他のドラマに心を奪われていた。そして去年、「ブレイキング・バッドのその後」という設定の映画「エルカミーノ」がリリースされたので、それを見た。面白かったけど、やっぱりドラマを全部見てないから100%楽しむ、というわけにはいかなかった。もうこれは隔離生活中にドラマを全エピソード見るしかない!

で、魂を吸い取られつつ全部見た。ものすごく面白かった。どのキャラクターもよかったけど、スカイラーの非論理的(そう)な暴走ぶりが好きだった。

12年も前のドラマだからしょうがないけど、携帯電話がスマホでないことにいちいち気が取られてしまった。登場人物たちは、のっぴきならぬ電話を掛けたあと、二つ折りのガラケーをバキッと折って、跡がつかないようにする。あと、車の車種も気になった。PTクルーザーのような形をした車に時代を感じた。この12年間で劇的に私たちの暮らしが変わったってことだな。

あー、アリゾナに行きたい。 1994年にカリフォルニアからフロリダまで車で横断して以来、サウスウェストは大好きな場所になり、その後も何度も車で旅をした。でも最近行っていない。

それより、オンタリオ州とカナダ連邦政府の両方が、カナダにおけるコロナ終息までの今後の感染者数と死亡者数の予測を発表し、「夏にピークを迎え、秋には終息するだろう」などと恐ろしいことを言っていた。この北国では、春、夏、秋が駆け足で過ぎていき、長い冬が来る。今年は冬が明けても外出しづらいだけでなく、秋までなるべく家の中にいたほうがいいということなのだろうか? コロナも怖いが、コロナニュースでいきり立つ人々が苦手だ。

自己隔離生活(手芸三昧)

カナダに再入国して以来、14日間の自己隔離生活をしていたが、その間にオンタリオ州で緊急事態宣言が出たので、隔離生活は続いている。私は元々インドア派な上、在宅勤務なので、あまり苦痛は感じない。社交的な遊びに関しても、映画仲間からはメールで「おすすめの映画」が送られてくるし、ブッククラブからは「Zoomで読書会」のお知らせがあったし、句会もバーチャルにやることになった。

日本帰国中、いろんな布を買ってきたので、映画やドラマを見つつ、いろんなものを作っている。一番の大作は「ローブ」。しかも贅沢にネルのリバティプリントで作った。買った型紙の見本がリバティで作られていたというのもあるけど、理由はほかにもある。

去年入院したとき、以前リバティで作ったすっぽりかぶれるワンピースをパジャマ代わりに着ていたら、人に「カワイイね」と褒められた。サイズがうまく合わず、ワンピースとしては失敗だったけど、パジャマとしては優秀。パジャマ一つで気分が上がるものだ。今は寝るときに楽しい気分になりたいので、パジャマはなるべくかわいくしている。その延長で、このローブを作りたかったというわけ。ちなみに、5歳の姪っ子も、お気に入りのキャラクターのパジャマをどんなにぴちぴちになっても、寝るときはそれを着ている。ノリとしては同じ。

このキモノ風のローブを作るには、まず、裁断したり、待ち針つけたりするのに、長ーい布を広げるスペースがいる。なのでまずは床掃除から始まった。そして手でまつり縫いもしなければならなかったので、「くけ」も使った。「くけ、ご無沙汰!」と言いながらソーイングボックスから取り出したほど、久しぶりに使った(20年ぶりぐらい?)。

このローブはパターンに問題があって、わきの下がきつく仕上がってしまう。PurlSohoのウェブサイトにその解決方法が載っていたけど、あとの祭りだ。まあ、気が向いたら、直すことにしよう。








日本滞在(仕事模索編)

日本へ向かう機内で、村岡恵理の『アンのゆりかご』を読んでいたら、本の中で、村岡花子は自分が翻訳したいものを積極的に選んでいた。大御所だ。私は同じ職業に就いているが、真逆の環境にいる……

私は「何を翻訳したいか」は選べない。エージェントに「あの人にはこれをやってもらおう」と選んでもらっている。私の場合、本が「駒」なのではなく、私が「駒」なのだ。この業界には翻訳したいと思う本を持ち込める企画もあるが、持ち込んだことはない。私はまだ和訳されていない英語書籍を読んでレポートを書く仕事もしているが、「これはすごい!」と思ったものが必ずしも和訳されて日本の市場に出ているわけではないところを見ると、世間が求めるもの(ヒットするもの)を見極める才能が私にはないのかも。ま、私などにはわかりえない事情があるのだろう。

ま、できれば一回くらい文芸をやってみたいし、あと、なんかこう、翻訳がらみで少し違うこともやってみたい…… スマートで感性が高そうな若い世代の同業者に声をかけてみたり。いつもお世話になっているところへ、ぼんやりとした意欲をぶつけにいってみたり。こんなことを模索するのは、個人事業主ならではの醍醐味というか、いちばん楽しい部分だな。



日本滞在(飲み屋編)

A bar deep in Shinbashi

1)とある雑居ビルにあった、結果的には複雑な思いをしたバー
友だちに連れてってもらった。お通しがちょっと珍しかったので、感動の味でもないのに、「わあ、珍しい! お酒に合うわ!」などと社交辞令で褒めたのが悪かった。このバーテンは「物販もやりたいんですよね、物販も」(お通しに出したものを物販したい)と長々と話しはじめた。我々は客であるからして、「このお味どうでしょう?」とか「これ売れますかね?」など、やんわりとフィードバックを求めてほしかったのだが、夢語りを聞かされたうえ、さらに食事まで食べさせられ、ちょっと居心地の悪い思いをした。あの押しの強さは、世の中に数多く存在する「俺の」系のビジネスを目指しているのかもしれない。

2)食事がおいしいと評判の高飛車な居酒屋
これも友だちに連れてってもらった。人気があり、ルールをいろいろと科してくるので予約を入れるのが困難だったとのこと。久々の再会を喜んでいるのっけから、「終わりの時間は変わりませんからね」といきなり釘を刺された。人気店なので、2時間しか居られないという制約があるのだそうな。結局、コロナ騒ぎであとの客が来ず、長居はできた。食事はおいしかったけど高飛車だったので、飲み直したい気分に……

3)高飛車な居酒屋からの居心地のいいバー
先ほどの居酒屋とはうってかわって、ゆっくりできてざっくばらんな店へGO。マスターもざっくばらん。アレ? 私の目の前に、マトリョーシカのようなものがふたつ並んでいるではないか。「あ! こんなところにマトリョーシカがある!」と思わず叫んでしまった。「それはマトリョーシカではない」と周囲の人々に言われたが、どっから見てもそれにしか見えない。「じゃあ、マラカスかな?」と言うと、「マラカスかもな。振ってみな!」と言われたので、振ってみたがカラカラ鳴らなかった。「ソルト&ペッパーかな?」などなど、いつまでたってもその正体がわからない私を気の毒に思ったのか、マスターが「それはテンガと言って、男性用の大人のおもちゃですよ」と教えてくれた。あー、いやだいやだ。触ったり、振り回してしまった。

4)植毛手術や部分かつらで盛り上がる中年
今回、私は部分かつらをオーダーメイドした。姉と一緒にちょっとどんなものがあるのかを下調べするだけ……のはずだったのだが、いつのまにか注文してしまっていた。「もう少し予算を上げると、オーダーメイドできますよ」の口車に乗ってしまったのだ。「ビリー・アイリッシュみたいな部分かつらも作れるの?」と尋ねると、奥から、いろんな色の人工毛が出てくる出てくる! 地毛に合わせた色が無数にあるのはもちろん、ハイライトを入れるためのピンク、ブルー、グリーン、パープルとすごい色数がある上に、つやあり/つや消しというチョイスも加わって、選択肢が一気に二倍。その上、形状記憶する毛も混ぜられるだの、頭皮の色も選べるだの…… もうこれは、聞きたいことや見せてほしいものが山のように出てきてしまった。結局、昼食をはさんでフォンテーヌに3時間以上居座った。感覚としては帽子をオーダーメイドするようなもの。ちなみに、ピンクのハイライト入りを注文。ああ、早く完成品を被りたい。

この話をお酒の席で同年の人(男)に話すと、実は俺も…… と植毛技術について事細かに話してくれた。もうすぐ植毛手術を受けるらしい。年相応の話題ってもんがあるなと、ポジティブな気持ちになれた。

日本滞在(歌舞伎編)

Tamasaburo

そもそも2月末に突如日本に行くことにしたのは、坂東玉三郎を見るためだった。二月大歌舞伎の千穐楽に間に合うように飛行機に乗り、昼と夜、合わせて8時間、歌舞伎を見た。13時間のフライトの後の8時間はキツイ。休憩時間は血流をよくするため、歌舞伎座内を歩き回った。昼もなかなかの座席だったが、夜の部は中央前から3列目。間近で玉三郎の「羽衣」の舞を見た(相手は勘九郎)。年は取っても美しい。大変貴重なものを見ている気がした。「羽衣」のようなお話は、男役さえぴちぴちに若ければ、女役は少々お年を召していても成り立つ。それはそれで妖艶だ。

舞は言葉がわからなくても楽しめる。海外でも玉三郎の知名度が高いせいなのか、外国人観客多し。彼らの様子も気になり、ちらちらと見ていたが、やっぱり「舞」のない歌舞伎になると舟を漕いでいた。

本当なら満席に近いはずなのに、コロナ騒ぎで半分くらいしか観客席は埋まっていない。おひとり様で見ていたので、隣のおひとり様に声をかけてみた。結果的に、話に花が咲き、最近読んだ玉三郎についての本に、「玉三郎はあまりにも若い役はもう似合わないから封印しているって書いてありました」と言うと、「ええー!? この間、白雪姫の役を演じてましたよ!」と…… ま、あの本は2010年刊行だからな。

お隣さんは、「3月も日本にいるなら、明治座のXXXを是非見てほしい」とおすすめまでしてくれた。日本に住んでいるならこの人と観劇したい!とすら思った。おすすめ情報のお礼にと、三越デパートでもらったマスクを2枚差し出すと、「いいんですかっ!? マスクは今の日本では、貴重かつ希少なアイテムなんですよ!」と劇場に響き渡るような声で返事が返ってきたが、受け取ってもらえた。

3月は明治座、あるいは京都の南座へと私の野心は膨らんだが、それはつかの間のこと。ありとあらゆる劇場が閉鎖になってしまった。しかし、二月歌舞伎の千穐楽に間に合っただけでもラッキーだった。

観劇の後、ひとりで遅い夕飯を食べることになり、前から一度やってみたかった、「誰にも口を挟まれることなく、好きなだけ好きなようにお寿司を食べる」のをすしざんまいで決行。ま、あの価格帯ならできることだといえよう。少しお酒も飲んだし、おさしみも食べたが、一人で8000円分食べた。最後にすし職人に向かって「今日食べた中でベスト5を食べてからお勘定をする」と宣言すると、少し驚いたようだった(もちろん何も言わない)。あとで、友人たちにこの話をしたら、「すしざんまいでその金額とは、相当食ったんだろう」と驚かれたが、なかには、「いい話だ」と言ってくれる人もいた。