She-Kaku:四角い冊子

このたび、グラフィックデザイナーの友人とユニットを組んで、CDサイズの冊子を作りました。すごく楽しかったので、今後も続けていくつもりです。

冊子は真四角なので、私たちのユニット名は「She-Kaku」。「She」は女二人でやっていて、ひとりが文章担当(書く)、もうひとりがイラスト担当(描く)だからです。

基本、著作権切れの作品を翻訳して、それに絵を付ける方向で行こうと思います。でも、コンセプトから離れることもありそうです。ツイッターでときどきつぶやいているので、のぞいてみてください。https://twitter.com/kaku_she

今回は『赤毛のアン』の作者ルーシー・モード・モンゴメリが『赤毛のアン』を発表する以前に書いた短編を訳しました。クリスマスの話です。『クリスマスの伝言』とタイトルを付けました。逐語訳ではないけれど、原文のスピリットは伝えてるっていう訳です。

この短編は本当に短いのに、登場人物がめちゃくちゃ多いんです! なのに、各登場人物の性格や雰囲気がぱっと想像できてしまう。モンゴメリ、すごい!と思いました。いろんな「すれ違い」が起きるのですが、最後にほっこりする話です。

She-Kakuのふたりは、この冊子を作っているあいだ、ネットフリックスで『アンという名の少女』を見て研究しました。アンの生活にはいろんなお菓子が登場します。この『クリスマスの伝言』もそうです。文章では伝えきれない、カナダの古いお菓子の数々をオリジナルのイラストで楽しんでもらえればうれしいです。もちろん、表紙や表紙裏もオリジナル。水彩画っぽい絵なので、紙は画用紙っぽい、やさしい感じのものを選びました。イラストやデザインのことは、私にはまったくわからないので、ユニットを組んでほんとによかったと思いました。

この冊子は小さいので、厚めのクリスマスカードにもなります。小説なんて普段読まない人でも読める長さだし、「人の心」を大切にするお話なので、贈り物にぴったり!

日本では、とてもすてきな手作り石けんとセット、あるいは単体で販売します。カナダにお住いの方もご連絡いただければ用意はできるかな。

この冊子を自分のお店に置きたい!なんて方がいらっしゃれば、ツイッターのDMからご連絡ください。お待ちしております。https://twitter.com/kaku_she

呪われている私

「やったぜ、久しぶりにニューヨークに遊びに行けるぜ!」とホテルを予約し、久々に旅行気分を味わえたと思ったら…… ワクチンを2回接種した上に、カナダを出るときと、アメリカを出るときとで、PCR検査を2回受けなければならないことを知り、愕然としました。いろいろなことが緩和されてきているので、PCR検査はもうなくなったと思い込んでいたのでした。

ニューヨークに着くやいなや検査しなければ、帰りの飛行機に間に合わないかもしれない。この時期に長期滞在はできないし…… と悶々とした結果、ニューヨーク行きは断念することにしました。

実は、ヒュー・ジャックマンのミュージカルを見に行く予定でした。サンフランシスコに住む友達とタイムズスクエアで合流し、マンハッタンで遊ぶつもりでした。それが……(泣)

思えば、私は最初から呪われていました。まず、ミュージカルのチケット代300ドルを友達に立て替えてもらっていたので、お金を返そうとしたら、事件が起きました。配車サービスLyftの車中に、現金300ドルが入ったバッグを置き忘れたのです。なんたってアメリカで起きたことですから、「300ドルも入ったバッグを真面目にホイホイと返しに来る人なんて、いるわけない!」と周囲に言われていたのです。ちゃんと、現金を送り届けてくれた正直な運転手さんに、お礼に50ドル渡しました。これが「呪い1」

それから、パンデミックが起きて、ミュージカルは延期に次ぐ延期(呪い2)。「春のニューヨークならいいよね」と言っていたら、真冬に延期されました。寒いカナダから寒いニューヨークに行くのは嫌だ!!(呪い3)。そして、今回のPCR検査です(呪い4)。

「Hamilton」のミュージカルを見に行くときも散々な目に遭ったのですが、いつか何の問題もなくブロードウェイに行きたいです。

カナダにゆかりのある翻訳者さん募集中

ツイッターに二度投稿した結果、「主旨」を説明する必要があることに気づいたので、ここに書きます。

カナダの書き手を日本語で紹介するグループを作ろうと思っています。原書は英語でも仏語でも構わないので、英訳者、仏訳者どちらでもいいですし、逆に和訳をしているカナダ人も参加できるようなものにしたいです。イメージとしては、北欧言語の翻訳者グループさんの活動です。

具体的にいうと目標はこんなかんじです。これに限らずですが。

1)SNS、ウェブサイトなどでカナダ発の書籍を紹介し合う(クラブハウスやポッドキャスト的なものも含め)。

2)カナダ作品を読んでくれる人を開拓する。

3)カナダの文化的背景も説明する。ついでにライフスタイルなんかも紹介する。

4)オンラインの読書会的なものもやってみる。

5)ゆくゆくは、カナダの本を出版社に持ち込めるようなイベントを開く。

カナダに住んでいる、昔住んだことがある、カナダが好きなどなど、何らかの形でカナダと関わりを持っている、持ちたいという翻訳者さんで、「面白い!」と思ってもらえる方に呼び掛けています。まずはオンラインで活動してみたいので、どこに住んでいてもかまいません。

私もいくつかアイデアはありますが、自分のアイデアがよいとは限らないし、そもそも限界があるので、何人かで一緒に活動したいです。「箱」を作って、そこで各々が好きなことを企画してやる、でもその宣伝はみんなで手伝う、みたいな感じがいいかなと思っています。

なんでカナダ? と思う人もいるかもしれません。カナダで執筆している人たちは売れるとアメリカやフランスの大手出版社から本を出すようになりますが、やっぱりアメリカとは違う視点を持っているんじゃないかと思います。アメリカに何事かが起きると、カナダにアメリカ人がどっと移住してきたり(ベトナム戦争時やトランプ政権発足後など)、アメリカに移住しようと思ったけれどそれがかなわずにカナダに移住したり。本当はカナダのフランス語文化圏に住んでいるのにあえて英語で執筆していたり。カナダの先住民や宗教的マイノリティの中にもすばらしい書き手はいるのに、国内だけで売れていたり。そういうものを紹介してみて、世の中がどう反応するのか見てみたい。あるいは、同じ北国のくくりで、テーマを決めて北欧言語の書き手と比べてみたい。あるいは、同じように北国だけれど帝国的な匂いを放つ大国ロシアと比べてみたい、などなど。ウルヴァリンもカナダ人設定ですしね。

書籍はフィクションでもノンフィクションでも、グラフィックノベルでもいいと思います。ジャンルも今は何でもありで。

もしかしたら、「翻訳者」でくくってしまわないほうがいいのかもしれないです。海外文学のスーパー読者さんも招いたほうが幅や深みが出るかもしれません。

今は何もかもが流動的です。好きなように作れるチャンスかも!?

興味のある方、質問のある方は、是非私まで連絡をください(ツイッターのDMが一番いいです)。それではお待ちしてます!

本人確認の質問

最近とあることで「私が私であることの証明」に相当な時間とお金がかかりました。国を挟むとわからない事情が発生するので、一方的に相手が悪いとは言いませんが、「もうちょっとなんとかならないのか」と心の底から思いました。同時に、ドライな北米文化とウェットな日本文化の差もまざまざと感じました。どういうことかというと、込み入った案件に対し、「じゃあその分料金が高くなりますよ」と言うのが北米で、「こっちも一生懸命やっているんですよ……」と長い話を聞かされるのが日本です。

多くの人は、自分の個人情報が漏えいするのを恐れて、デジタル化に反対しますよね。でも、今私は「自分が自分であることの証明」が、多額の料金と引き換えに、昨日まで私のことを全く知らなかった公証人によって証明される事実に、何とも言えない不思議な思いをしています。別に「公証人」を軽視してるとかではありませんよ!

それはさておき……

少し前、カナダの税務署に用事があって電話しました。還付金が入るはずだったのですが、受け取り用の銀行口座を私が閉じていたため、税務署はそこへ還付金を振り込んだのに、私は受け取っていない事態が発生…… だから、電話したのです。

ややこしい話だし、本人確認のために聞かれるであろう様々な情報を用意しつつ、電話で問い合わせました。ところが、いきなり難度の高い質問をされ、たじたじとなりました。探せば答えは見つかるけど、すぐに答えられない…… 相当待たせた挙句、恐る恐る聞いてみました。

「その質問、パスしていいですか? すぐに答えが見つからないので、次の質問お願いします」

「あ、いいですよ」と明るい返事。

セキュリティの質問をパスできるとは!(何回もパスするとアウトなのでしょうが)。還付金もすぐに振り込んでくれました。見晴らしのいい世界へ前進できた私は、気持ちが大きくなって、質問してみたくなりました。

「最初に振り込んでくれたお金って、どこへいったんでしょうね?」(結構大きい金額)

「さあ、わかりませんね」

デジタル化が進むということは、こういうことなのでしょう。カナダ国税庁は、「ちょっと待ってね、あなたのプロファイル画面を出すからね」と私のことを何もかも知りながら、しつこく「本人確認のための質問」をする。でも確認さえ取れれば、お金はあっさり振り込んでくれる…… たまたまなのかもしれませんが、ちょっとうれしかったです。

The Decameron

今『デカメロン』を読んでいます。イタリアの古典文学ですから、「ボッカッチョがデカメロンを書いた」という事実だけがよく知られています。ところがどっこい、なんでこんな面白い話今まで読まなかったんだろう! というくらいに面白い。

たとえば、うら若き尼僧が暮らす修道院がある。そこへ、口のきけないふりをした男が庭師としてやって来た。尼僧たちは、口がきけない男なのだから、「いいこと」をしたって誰にも口外しないだろうと男を誘惑する。男は畑より尼僧たちを耕すのに忙しくなる。ついに修道院長までもが男を誘う。修道院長の願いを叶えた男はこう訴えた。「いくらなんでも9人の女性を毎日耕すのは過酷な労働です。故郷に帰らせてください」

日本の古典文学や浮世草子のおもしろさと似ています。恋愛のことしか頭になかった平安時代の貴族が次から次へと変態じみたことをしでかして、それが文才のある人の手にかかると「文学」になる。

新型コロナウィルスのパンデミックをきっかけに、この『デカメロン』を読む人が増えているのだそうです。14世紀、黒死病で人がバタバタと死んでいくなか、「神様に祈っても効き目がない」と悟ったフィレンツェの富裕層の男女10人が、それぞれに面白い話をして時をやりすごします。信仰心や貞操を捨てたわけではないのですが、話の内容はものすごく人間的(欲望、嘘、裏切り、報復などなど)。現世的なもののほうが神様より面白いのです。そしてそこから、ルネッサンス(復興の時代)が生まれたので、ポストコロナに関心を持つ人たちのなかで読まれているようです。

日本語版はいろいろありますが、私が読んでいるのは平川祐弘訳。河出文庫から出ている電子版です。訳注もおもしろく、日本語訳の苦労がうかがわれます。日本では戦前、この小説は発禁だったのですが戦後になると解放されたのも、パンデミックレベルの大事件が起きると世の中がごろっと一転することの証かもしれません。