8月のブッククラブのお題は『The Book Thief』でした。邦題は『本泥棒』。映画化もされています。映画の邦題が『やさしい本泥棒』…… この本泥棒が「やさしい」かどうかは、見る人読む人に決めさせてほしいと思います。
内容は、第二次世界大戦下のドイツで迫害された人々の話ですが、ユダヤ人だけでなく、共産主義を信じたドイツ人、ナチスドイツに不満をもちながらも声を上げられなかった一般市民の話です。著者マーカス・ズーサックはオーストラリア人ですが、祖父母がドイツのミュンヘンで戦争を体験し、その体験を聞いて育ったので、これを書いたそうです。なんと、この小説のナレーターは「死神」――「死神」が「人間はいつかは死ぬが」と前置きしながら、死ぬまでの人間たちの人生を語るのです。600ページ以上ある分厚い本ですが、中高生向けです。歴史的背景の説明などはなく、文章は、頭の柔らかな中高生が飛びつくような軽いタッチで、クリエイティブで短めです。中高生向け、と言っても大人でも十分に手ごたえを感じる本です。
ブッククラブの参加者たちは「高校生ぐらいのときに読んだ」と言っている人が多かったです。
- タイトルは「本泥棒」。主人公のリーゼルはなぜ本を盗むのか?
実の両親を失い、貧しくて、文字が読めない子だったのに、あることをきっかけに本を読み始める。本を盗まざるを得なかったのは、貧乏だったから。リーゼルは言葉を知ることによって、成長し、自立していった。言葉を自在に操るようになることは、パワーをもつことでもある。ヒトラーも言葉を自在に操ることのできる独裁者だったことを考えると、感慨深い。
- ナレーターの「死神」をどう思う?
ナチスドイツ下で何が起きたのか、どれほどの犠牲者が出たのかは、みんな知っている。「死神」が「生きている人」の「死」をちらつかせながら話を進めていくので、悲惨なことが起きるとわかっていても、それを受け入れる心の準備ができるので助かった。それに死神はちょっと皮肉な冗談も言うので、気持ちを和らげてくれる。
- リーゼルは誰と結婚したのか?
誰なのかはっきりしないけど、「マックスだと思う。マックスであってほしい」のマックス派と、「マックスだと陳腐すぎる」の反マックス派にきっぱり分かれた。ブッククラブだけでなく、オンラインの読書コミュニティでも意見が真っ二つに分かれて、プチ論争が起きている。ちなみに、映画でも真相はぼやかしてある。
- 同じようなナチスドイツ下のドイツについて小説でお勧めは?
『The Boy in the Striped Pajamas』(邦訳:縞模様のパジャマの少年)
実は、私はブッククラブの日までに読みきれず、映画を見てしまいました。映画だとリーゼルがやたらと可愛らしくて身ぎれいで、里親のジェフリー・ラッシュとエミリー・ワトソンが薄汚い。その不自然さが最後まで気になって仕方がなかった。もともとが可愛らしい子役や美しい女優をきれいなまま、貧乏な設定に出すのはやめてほしいです。
勢いで『The Boy in the Striped Pajamas』も映画を見ましたが、こちらのほうが悲劇的。