Half a Yellow Sun

7月のトロントのブッククラブのお題は『Half a Yellow Sun』。邦題は『半分のぼった黄色い太陽』

チチマンダ・ンゴスィ・アディーチェのこの作品は、ビアフラ共和国がナイジェリアから独立する直前から、ナイジェリア内戦に決着がつくまでの話(1967年から1970年まで)。

チチマンダ自身は40代に入ったばかりの女性。1960年代のナイジェリアのいろんな階級の女性の生き方、家族や夫婦に対する考え方を、誰にでも食いつける恋愛、浮気、不倫を軸に描いているから、「わかりやすい!」とブッククラブでは好評だった。チチマンダは「フェミニストであること」についてTEDトークもしているし著書もあるので、彼女のフェミニスト観については、そちらを参考にしていただきたい。

女性オンリーのブッククラブではかなり人気の作家で、作家も黒人なら小説の登場人物もほとんど黒人、参加者にもカナダ生まれの黒人女性が来ていた(参加者のバックグランドは毎月多種多様なのだが、彼女はアフリカが舞台の有名な小説だからという理由で初参加)。

参加者全員、ナイジェリア人の名前の発音に自信がないので、もたつきながらの話し合いだったけれど、再読した人もいるほどなので、かしましく話が進んだ。

  • 語り手について

物語の語り手は3人。そのメインが召使いの10代の男の子。物語は、アフリカ版『ダウントン・アビー』のようである。召使いは自分が仕えている主人のことなら何でも知っているし、ナイジェリアの上流階級と田舎の貧しい農民の生活の両方を知っているから、語り手として最高。周囲の女性に恋心を寄せたり、同じ身分の女の子と初の性体験をしたり、主人に憧れて勉強に燃えてみたりと、ティーンエージャーらしい行動をするので、瑞々しい感じがしてよかった、という意見だった。

  • 主人公が顔が似ていない双子の姉妹(上流階級にいる)という設定について

この双子がそれぞれパートナーにまったく違うタイプの男を選ぶ。片方は、自分に自信が持てない白人で、ナイジェリアの古代民芸に興味を持っている作家志望のイギリス人。もう片方は、黒人(ナイジェリア人)の大学教授で植民地支配からの脱却を叫ぶ自信満々の理想家。この2人の男がそれぞれ女性関係で失敗し、昼メロっぽい泥沼を展開させるのも、現代の読者を飽きさせない。内戦中、ビアフラ共和国の国民全員が飢餓に苦しんで死んでいくなかで、欲に抗えず「人間らしい生き方」をしているのが、ほっとする。ゆえに性描写が多い。「ナイジェリアの民芸を愛するあまり、ナイジェリアの女性に恋に落ちる白人の男」は、「日本文化を愛するあまり、日本女性に恋に落ちた西欧人」に置き換えると、わかりやすい。そういう男を冷ややかな目で見ている読者が多かったのは、興味深かった。

  • タイトルがビアフラ共和国の国旗を表していることについて

黄色い太陽は、これから登ってくる朝日に見立ててデザインされたはずの国旗だけれど、ビアフラ共和国の運命を考えると、沈む夕日にも見えるので、「クレバーなタイトルだ」と好評だった。

  • 内戦が起きたときの国際社会の反応について

事実として、ナイジェリア側についた国々、ビアフラ共和国側についた国々を私達は知っている。でも「ビアフラ共和国を世界は見殺しにした」という見方は、どうなんだろうか、やっぱりそれは当事者の立場によってずいぶん違うんじゃないか、と誰かが言っていた。この小説では、その点に関して、キャラクターのほとんどが「そう思っている」のではあるが、描写がうまいので複雑な気持ちにさせられる。

余談:この本を9割読んでブッククラブに出掛けていったら、「え? あれからそんな展開になったの?」とネタバレの嵐だった。最後の最後まで読者を釘付けにする展開のストーリーなので要注意。

 

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