最近、ゴーン・ショックのニュースが駆け巡っていますね。日産といえばリーフ。リーフは電気自動車ですが、自動車産業だけにとどまらず経済全体の起爆剤になりそうなものの代表、自動走行車につながるテクノロジーです。
そこで、自律走行車開発の10年の軌跡を追ったノンフィクションをご紹介しましょう。日本では日本の自動車会社を中心にした同じような(?)本がいくつも出ているようですが、今から紹介するのはアメリカ。それもGMが中心です。GMも今、トランプ政権と真っ向から対決していてニュースを賑わせていますが。それでは、紹介のはじまり、はじまり。
『Autonomy: The Quest to Build the Driverless Car—And How It Will Reshape Our World』
デトロイト対シリコンバレー、新旧テクノロジーの攻防が、GM副社長として長年、次世代のクルマの開発を牽引してきたローレンス・バーンズによって描かれています(今はもうGMにはいませんが)。
話の発端は、2004年、アメリカ軍が主催したDARPAグランド・チャレンジ。自動走行車を開発してレースを行うというもの。ここで、スタンフォード大学とカーネギーメロン大学が火花を散らして戦います。まもなく、この2大学の戦いは、それぞれを支援するグーグルとGMの戦いに発展。シリコンバレーの若い起業家たちを見下すデトロイト、逆にデトロイトを古いと鼻で笑うシリコンバレーの構図が出来上がります。しかし、どちらかに軍配が上がったわけではありません。今私たちが見ているように、クルマを動かす新技術を開発するシリコンバレー、車体を大量生産するノウハウを持つデトロイトが協力し合う体制が生まれました。
大学や企業間の戦いだけでなく、時代の潮流が変わっていくのもよくわかります。成熟した車社会のアメリカでも、経済の基軸がシェアエコノミーに移り、ライドシェアが普及していきます。アメリカではビッグ3以来の新自動車メーカー「テスラ」も登場し成功していきます。そして、その中で関連スタートアップ企業の争奪戦が繰り広げられ、巨額の金が動きます!
2004年から2016年までの自動走行車の開発の道のりを追った話ですが、わずか12年の間で、既に私たちの生活を大きく変える技術とサービスが生まれ、新企業も続々と登場、雇用も生まれ、世間を賑わせています。新技術の開発に人生をかける技術者の苦労にも感動しますが、アメリカの機動力のすごさに羨望を感じずにはいられません。退屈せずに一気に読めます。今は問題があっても、自動走行車なしの未来は考えられない、そんな著者の意見に頷いてしまいます。